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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
最終章 最終決戦
110/138

110 最強の矛、最強の楯

110 最強の矛、最強の楯



 ーー森での戦いーー

 

 ポネラの口から巨大なキノコが生える。

 腹部や胸部の気門からもキノコが溢れ出す。

 キノコがどんどん成長し、大きくなる。

 対象的にポネラの肉体はどんどん痩せて、

外骨格はヒビ割れ、スカスカな中身が露わになる。


 レイカは緻密に風を操作し、ポネラの口内や

気門に、昆虫に寄生するキノコの胞子を

植え付けていた。

 こまちゅの魔力により、

キノコは急成長していた。


レイカ「冬虫夏草は良い薬の材料になるって

   いうけど、これは無理。

   キモっ⭐︎ うええええええ。」


こまちゅ「迷える子羊に

    醒めることの無い

    深く安らかな眠りを与えん


    空間魔法

    【死の森〈スリーピングフォレスト〉】」


 ポネラの死により空間隔離が解除される。

 2人とポネラの体が魔法陣の光に包まれる。    


レイカ「サラッと解説してくれてるけど、

   全然違うじゃん。

   本来は眠りキノコの胞子で眠らせて、

   ゆっくりキノコの胞子を吸わせる

   ヤツなのに。

   口から急激にキノコが生えて

   枯れて死ぬとか、そんなエグい

   魔法じゃないんですケド。」


こまちゅ「時間が惜しいのだ。仕方ないであろう。」



 後日、


「最初から森で戦えばラクだったのではないか?」


と問われた、こまちゅの回答は


「なぜ妾の森に、あのような汚物を

持ち込まなければならぬのだ。はぁ……。」


であった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ーー黒エルフ国近くの草原に似た空間ーー


 アローヒにより、ここに飛ばされたのは、

ヘンゼルと巨大な大顎を持つ蟻の将であった。

 クワガタかと見紛う程の大顎を持つ蟻の将が

名乗りをあげる。


蟻「マハルポージャ様配下

 陸の8将【アギト】参る。」


ヘンゼル「エルフ軍・ヘンゼルだ。」


 アギトが大きな顎を広げ、

ヘンゼルに向け突進する。

 ヘンゼルは大楯でアギトの咬撃を受け止める。

 ヘンゼルは右手に持った槍で

アギトの胸を目がけ突きを放つ。

 ヘンゼルの突きは

アギトの堅固な甲殻に阻まれる。


 互いに繰り出す攻撃は、互いにそれを上回る

防御力のため均衡は崩れない。

 互いに決定的な攻撃を決められず、

時間だけが過ぎていく。


ヘンゼル「なんて硬さだ。

    他の将もこれだけ硬いなら、

    我々の勝ち目は薄い。」


アギト「なかなかやるではないか。

   俺の大顎は、蟻兵の中で最強なんだがな。」


 ヘンゼルは覚悟を決め、大楯を投げ捨てた。

 アギトに向けて両手で握った槍を構える。


 ヘンゼルの脳裏に

懐かしい記憶が走馬灯のように流れる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ヘンゼルは護衛騎士になる以前、

冒険者として身を立てていた。

 伝説の槍を求め、呪われた迷宮を単独で踏破し、槍を入手したヘンゼルであったが、

その槍は呪われていた。

 呪われた槍の攻撃力を駆使し、

活躍するヘンゼル。

 そんなヘンゼルに、

高難度クエストの依頼が舞い込む。

 白と黒のエルフが国を挙げて合同で行う、

山のように巨大な、サイのような魔獣・ビヒーモス討伐作戦であった。


 作戦決行の日、ビヒーモスの暴威で

壊滅しかけた討伐隊の窮地を救ったのは、

ヘンゼルの勇気であった。

 命を賭けたヘンゼルの一撃により、

ビヒーモスは屠られた。

 森を喰らった強大なビヒーモスの広大な巣は、

肥沃な大地であった。

 その場所は今の

黒エルフ国の穀倉地帯となっている。


 ビヒーモスを討伐したヘンゼルは

致命傷を負ってしまう。

 また呪いにより体が蝕まれていた。

 エルフ国高位神官たちの懸命な治療により、

一命を取り留めたヘンゼルは

英雄として表彰されることとなる。

 また幼馴染でもある、白エルフの女王こまちゅの解呪により

ヘンゼルは元の体を取り戻すことができた。

 呪われた槍は、こまちゅの術により

呪いと攻撃力を抑えられることとなった。


 英雄ヘンゼルには、過去の勇者パーティの

盾役であった、鬼人グレンが使っていた

イージスの盾が授与された。

 ヘンゼルの勇気は、仲間を守るために

使われるべきだという、レイカの願いでもあった。

 レイカの期待に応えるため、ヘンゼルは

防御に関するスキルを磨き、

やがてエルフ国最強の盾となった。


 しかしヘンゼルは

密かに胸に秘めた覚悟があった。

 いずれ大きな困難が訪れたとき、

再び呪われた槍を解き放ち、

命に代えても使命を全うすると。

エルフ国最強の矛として。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



アギト「気が触れたか?

   お前が鎧のみで俺の攻撃を凌げるなら

   今まで盾は必要なかったであろう。

   まさか両手で槍を使えば

   俺を貫けるとでも?」


ヘンゼル「命に代えても貴様を倒す。来い。」


アギト「望み通り死ね。」


 アギトがヘンゼルに咬みつく。

 ヘンゼルの重鎧が

踏まれたアルミ缶のように、ひしゃげる。

 ヘンゼルが口から吐血する。


ヘンゼル「すみません。レイカ様、こまちゅ様。

    私は“死ぬな”という命令に背きます。

    目覚めよ。【ロンギヌスの槍】」


 ヘンゼルが握る槍から、

おびただしい闇のオーラが溢れ出す。

 危険を本能で察知したアギトが

バックステップで退く。

 ヘンゼルは踏み込み狙いを澄まし、

アギトの胸をまっすぐに突いた。

 ヘンゼルの槍はアギトの胸の甲殻を貫き、

爆発した。

 アギトの体は胸を境に上下に分断された。


 ヘンゼルは前のめりに倒れ、

アギトは仰向けに倒れる。


 アギトは昆虫がベースのため、

体が千切れてもすぐには死なない。


アギト「何故だ! 

   何故、急に攻撃力が強くなった!!」


ヘンゼル「ロンギヌスの槍は

    背徳と引き換えに攻撃力が上がる。

    それに加えて、受けたダメージを攻撃力に

    変換する特攻魔法が付与されている。

    そして、今まで守備に費やしていた

    魔力の全てを攻撃に回した。

    仲間のために命を捧げるのは

    蟻だけではないということだ。」


 ヘンゼルも胸を潰されて大量の血を流す。

 静かにヘンゼルの瞳が閉じる。

 ヘンゼルを中心に

草原に広がり続けた赤黒い染みが、

その広がりを止める。

 ヘンゼルの表情は眠るように安らかだ。

 自らの使命を全うした男の

誇らしげな表情であった。


 ヘンゼルの死により、空間隔離が解除された。


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