11 πRの事情
11 πRの事情
ーノブオ森林地帯ー
森林地帯へと入った一行。
馬車一台分ギリギリくらいの
道が整備されていた。
外から見ると麓から山頂まで木がびっしりの、
木に囲まれた巨大な山であった。
岩肌みたいなのは全く見えなかった。
魔物が徘徊する森の中に、
かつての大魔法使いエルフの夫婦が営む薬屋
【エルおじ堂薬局】というお店があるようだ。
ヌルは昨日の蜘蛛との戦闘で負った傷以外にも
傷が増えていた。
ナーガとオニオも負傷している。
ヌル「お前らのせいで、
朝から酷い目に遭ったぜ」
ナーガ「おめぇが口を滑らすからだべ!」
オニオ「ンゴ!」
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ー出発前・草原ー
ヌルはナーガとオニオが騒ぐ声で目覚めた。
声のする方を見ると、
オニオが野生のスライムを捕まえたようだ。
ヌル(朝から元気なヤツラだな。)
ナーガとオニオがヌルの元へ駆け寄る。
ナーガ「なぁヌル! ナナちゃんて巨乳だよなぁ?
揉んだことあんのけ?」
ヌル「バッ、バカ言うなよ!
あるわけねえだろ!」
オニオ「これ、なかなかだと思うンゴ」
オニオが差し出したスライムを、
ヌルは触ってみた。
ヌル(た、たしかに、これは良い揉み心地だ。
柔らかさ、張り。
共に良い。
しかし、それはどこまで行っても所詮
スライムだ。
本物とは比べるまでもない。)
ナーガ「ナナちゃんのサイズさわがればなぁ」
オニオ「スライムを同じ大きさにカットして
標本が作れるンゴ。」
ヌル(こいつら、なかなかのクズだな。
しかし、ナナのサイズは気になるな。
そしてナナサイズのスライムを
揉んでみてえ。)
クズC「よし、俺が一肌脱ごうではないか同志よ!
俺がナナと並んで剣の稽古をするから、
その間にお前達は、
俺とナナの影の寸法を測るんだ。
その比率を使えば、近い数値を出せる!」
クズAB「サー! イエッサー!!」
ヌル「作戦開始だっ!!」
ヌルは魔法の勉強をしていた、
ナナに話しかけた。
ヌル「ナナ、すまないんだけど、
盾で受ける訓練したいんだ。
少し付き合ってくれないかな?」
ナナ「わたし!? なんでわたしなの?」
ヌル「実は、ナーガとオニオが勉強中でさ。
忙しいんだって。」
ナナ「勉強?? なんの勉強?」
ヌル「あ、うん?
な、なんか数学の勉強してるみたい。」
ナナ「なんで今、数学なの?」
ヌル「わからないよ。5分だけ! お願い!」
ナナ「5分だけ?
わかった。いいよ。
何すればいいの?」
ヌル「この棒を真上から振り下ろして欲しいんだ。
全力でお願い!」
ナナは棒を持ち振りかぶる。
ナナとヌルの影の寸法を、
素早く測量するナーガとオニオ。
ガコッ!
ナナは思い切りヌルに棒を振り下ろし、
それをヌルは盾で受け止めた。
ヌルはナーガとオニオの方を見た。
ナーガが親指を立ててドヤ顔している。
ヌル「ありがとう! もういいよ! 助かった!
俺やっぱ、ナーガとオニオの勉強手伝うわ!
じゃあ、ナナも魔法の勉強がんばってね!」
ナナ「5分間やるんじゃなかったの?」
ヌルはイソイソと立ち去った。
ヌルの様子を見たナナは怪しんでいる。
ヌルとナーガとオニオが3人で固まり、
地面になにか書いている。
ナナは練習中の隠蔽魔法を使い、
3人のところへ近付いた。
ヌル「幅20cm、高さ15cmくらいか。
半径10cmの円として、高さ15cmの
円錐の体積でいいのかな……ぶつぶつ。」
ナーガ「オニオ、
お前もなかなかいい乳してんなぁ。」
ナーガは左手でスライムを、
右手でオニオの乳を揉んでいた。
オニオ「やめろよ! お前に揉まれたくねえンゴ!」
ヌル「イコール、1500……スライムの比重が、
水と同じだとすると、1500グラム
くらいのスライムが、ナナの片パイ
くらいになるはずだ。
片7π=約1500グラム!!
おまえら……何やってんだよ……」
ナナ「ヌルは何やってるのかな?」
ヌル「何って、みんなが気になるナナの
乳のサイズをだな、3人で計算……。
あっ……」
ナーガ(バカヤロオオオオオ俺たちの名前まで!)
オニオ(死んだンゴ)
ナナ「攻撃魔法の練習したかったの♪
スライムさんは危ないから離れようね。
スライムさんばいばい(^-^)」
ナナはスライムを放流した。
ドゴオオオオオオオン!
3バカ「しぎゃあああああああああ」
その様子を遠くでマーボーが見ていた。
マーボー「元気だなぁアイツラ。
ガハハ! ピュイ♪」
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ー森林内部ー
一行は進む。
森の中の薬屋を目指した旅は順調であった。
進むにつれ、陽の光が樹に遮られる。
昼間なのに少し、うす暗い。
まるで洞窟を探索しているようであった。
ヌル(こんな森の中に本当に薬屋があるのかよ)
しばらく歩くと、
ヌルは何か嫌な感触のものを踏んだ。
そして、ヌルにだけ【断末魔の叫び】
のような声が聞こえていた。
ヌルが靴を見ると、
なんか茶色の汚物がネッチョリ付いている。
そして臭い。
ヌル(なんだよコレ!?
なんかのウン●踏んだのか?)
ナーガとオニオが大爆笑している。
ヌル(小学生だったら、今日からあだ名が、
【ウン●マン】とかになりそうだな。)
ナナは、残念そうな顔で鼻をつまみ、
こっちを見ている。
マーボー「ガハハハハ!
これはスライムの仲間、
ビチグスライムだ。 ピュイ♪
すごい弱いから、
他のモンスターから
捕食されないように、毒と匂いで
身を守っているらしいぞ。
毒あるから食うなよ!
トイレに3日籠るくらい、
腹壊すらしいぞ!
ガハハハハ! ピュイ♪」
ヌル(どれだけ腹減ってても、
食わねえよこんなもん……)
ヌルはスキル【ビチグ毒】を手に入れていた。
食べた者は強烈な腹痛に苛まれる毒。
しかし、食欲を無くす強烈な悪臭を放つ。
おいうスキルであった。
ヌル(どこで使うんだこんなスキル……)
またしばらく歩いた。
疲労と空腹に苛まれる一行。
ヌル(なんかめちゃ美味そうな匂いがする)
木の枝からリンゴのようなものが、
ぶら下がっているのが見える。
その果実から、めちゃくちゃ甘い匂いが漂う。
オニオがフラフラとリンゴに
吸い寄せられていく。
果実を取ろうとした、その時。
マーボー「オイッ!」
マーボーが強力な踏み込みからの、
するどい突きを繰り出した。
その先には巨大なワニの口のような植物が
串刺しになっていた。
巨大な食虫植物のような、モンスターだ。
ギリー「これはミミックプラント。
近寄る獲物の種族を見極め、
その好物に擬態し、
さらにその好物の臭いを合成して
獲物を誘引します。
以後、気をつけるように。」
ヌルはスキル【甘い誘惑】を手に入れた。
罠に仕掛けた餌などに、
獲物が好む臭いを放つスキルのようだ。
ヌル(捕獲用罠とかに使えそうだな!)
途中、川があったので休憩を取ることにした。
オニオが魚釣りをしている。
オニオ「キターーーーー!!
晩飯ゲットンゴオオオ!!」
黒くて長くて太い魚が釣れたようだ。
ヌル(デケエな!?
ウナギか!?
あれ……これは……。
まさか!?)
オニオが、釣り上げた巨大ウナギを素手で掴む。
ヌル「オニオ待て!!
ソイツはもしか……」
オニオ「アアアアアアババババババンゴ!!!」
そのウナギからは音も光も出ていないが、
掴んだオニオは痙攣している。
ヌル「コイツは電気ウナギ。
馬とか死ぬレベルの危険な魚なんだ。
水の中じゃなくて助かったな!」
電気ウナギは放電してしばらくして、
チカラ尽きた。
ヌルはスキル【放電】を手に入れた。
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ーノブオ森林地帯・深部ー
しばらく歩くと、小屋が見えてきた。
小さな看板がある。
森の薬屋【エルおじ堂薬局】に着いた一行。
扉を叩くと迎えてくれたのは、
エルフには見えない無愛想な若い娘だった。
赤い髪の若くて美しい娘だった。
身長が高い。
手足はスラっと長く、
顔は無表情で怖そうな感じだが、それでも美しい。
首元に石を削った女神像のような
ネックレスがある。
特徴的なのは頭に竜のような角が生えていた。
ナナは娘の首飾りをジッとみている。
ナナが大切にしている銀の首飾りに似ている。
ヌル(ゲームで見かけるリザードマン
みたいな感じ。
どう見てもエルフじゃねえな。)
娘「人間国からの遣いのものですね。
ようこそ、いらっしゃいました。
話は伺っております。どうぞ、中へ。」