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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
最終章 最終決戦
108/138

108 火の始末

108 火の始末



  ーー魔王領海沖合ーー


 白い腹を見せ仰向けになり

絶命したリヴァイアサン。

 ヨーリーも仰向けにプカプカと

波任せに浮いている。

 笑顔ではあるものの、

実際には動けないほど疲労していた。

 それでも笑顔を絶やさないのは、

美に対する意識の高さと

女王としてのプライドである。


 海獣たちが騒ぎ出す。


「リヴァイアサンが殺られたぞ!」

「人魚に従うのか? 冗談じゃねぇ」

「人魚の女王弱ってるぜ。」

「やっちまうぞ!」

「リヴァイアサンが勝手にした約束なんて

 知るかよ!!」

「人魚族を皆殺しにしちまえば関係ねェ!!!」


 海獣たちがイキリたち、

一斉にヨーリー目がけて泳ぎ出す。


アッチ「ヨーリー様を守れ!!」


ともっちょ「やっぱり約束なんて守らないか。

     やるしかないわね。」


 魔王海軍と人魚族の全面衝突が始まる。


 アッチは海の四天王の一角である

巨大海蛇・シーサーペントの牙を

トライデントで受け止める。


 ヨーリーを介抱する、ともっちょに

四天王巨大タコ・クラーケンの触手が襲いかかる。

 ともっちょは海水に魔力を込め、

海流を巧みに操作し、触手をなんとか受け流す。


 そのとき、クラーケンを強烈な雷が襲った。

 驚き、空を見上げる人魚と魔王海軍。

 空にはセイレーン軍が展開していた。


キムスケ「遅くなってすまない。

    明日開戦と聞いていたものでな。」


挿絵(By みてみん)


ヨーリー「良いタイミングで来るじゃないの。

    狙ってたのかナ?」


 首が長いシャチのような海獣、

四天王・レヴィアタンが魔王海軍を鼓舞する。


レヴィ「鳥どもめ小癪な!

   頭上に気をつけろ! 水で撃ち落とせ!」


キムスケ「アルベルト!

    準備はいいな? 行くぞ!」


 キムスケが槍にチカラを込め雷雲を呼び寄せる。

 アルベルトが竪琴の弓を奏でる。


アルベルト「葬奏・流星のポリボロス」


 アルベルトが奏でる音色と共に

輝く千の光の矢が流星群のように

魔王海軍に降り注ぐ。

 射抜かれた者は感電している。


ヨーリー「キレイネ。

    アタシ、嫌われてるかと思ってたワ。

    助けてくれてアリガトネ♪」


 ヨーリーはキムスケに微笑む。


キムスケ「旅に出たセイレーンの王子は

    人魚族の魔女に誑かされ、

    セイレーン族は衰退した。

    我々は憎き人魚族と愚かな王を恨んだ。


    しかし今ならわかる気がする。

    私が王子で、もしも貴方と

    出会ってしまったとしたら……。

    全てを捨てても……。

    いや、今は目の前の敵を片付けよう。」


ヨーリー「アラ? 

    もしかしてアタシ今、

    口説かれてるのカナ?」


ソナ「ヨーリー様!!」


 ソナがヨーリーの傍に降り立ち、

治癒の魔法をかける。


ヨーリー「ケガはしてないから大丈夫ヨ。

    魔力がなくなっちゃっただけ。」


 セイレーンの戦士に抱えられた

ぱとかと、ゆいも

ヨーリーに寄り添う鯨の背に降り立つ。

 ぱとかがポーチから魔力水を出し、

ヨーリーに手渡す。

 ゆいは角笛の魔法具を取り出し、

魔力を込め吹奏を始める。


ゆい「みんな行っくよー!!

  私達の修行の成果、見てね!

  さぁ、反撃だよ!!」


 ゆいは角笛をトランペットのように吹き鳴らす。

 セイレーンたちは反重力の力を得て、

戦闘態勢に入る。


 ゆいが持つ角笛は、

魔王空軍の将が使っていた

ギャラルホルンであった。


 反重力の力により

セイレーン族の飛翔速度が増した。

 魚の群れを襲う海鳥たちのように、

空から魔王海軍を急襲するセイレーン族。


 慌てふためく魔王海軍を

海中からシャークアタックのように

急襲する人魚族。

 魔王海軍は大混乱に陥り、戦線は崩壊する。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  ーー魔王領空・魔王城前ーー



イカリング「あひゃ! あひゃ!

     あーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ

     ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ

     ひゃっひゃっひゃっ!

     あがっ…げほっ!

     げっほげっほ! オェッ……。」


職員「イカリング様、落ち着いてください!

   大きく深呼吸して。」


 狂喜乱舞しながら両手に握りしめた

拳銃を乱射するのは、

ドワーフ国冒険者ギルドのマスター、

白エルフのイカリングであった。

 銃が好きすぎて

ドワーフ国に移住したほどの奇人である。


挿絵(By みてみん)


 テンションが高まり過ぎて咽せる、

イカリングをなだめるギルド職員の男。


イカリング「これが落ち着いていられるかい!!

     撃ちまくり放題な上に、

     ついにアタシの悲願であった、

     ペッパーボックスピストルが

     完成したんだよ!


     もう暴発を気にせず

     撃ちまくれるんだよ!!

     相手は魔王軍、

     そして邪な人工生物ときてる。

     いくらぶっ殺してもいいんだよ!!

     あーっひゃっひゃっ!!」


職員「落ち着いてください。あぁ問題発言……。

  これではどちらが悪役なのか……。」


 イカリングがカスミガ砦で自爆した姿を見た

エルは、イカリングのために安全な

ペッパーボックスピストルを設計したのであった。

 外見は普通の形状の拳銃。

 銃身は一つのみで完全に別物であった。

 リボルバー式を採用し、

一度に6発連続で撃てるというものであった。

 大量に生産し、ギルド職員を装填係にすることで

撃ち続けられるという作戦であった。


 他の気球に乗っている、四銃士含むメンバーにも

この銃が支給され使用していた。

 今回は空中戦のため近接戦闘が無い。

 他の四銃士のメンバーも

不満そうに撃ちまくっていた。


イカリング「もう敵将の四天王ナントカはいない!

      弾が枯れるまで

      撃つぜええええええええ!!


      あーっひゃっひゃっひゃっひゃっ

      ひゃっひゃっひゃっひゃっ

      ひゃっひゃっひゃっ

      ひゃっひゃっひゃっ!」


 空の戦いは国連軍が圧倒していた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  ーーイカリング狂喜乱舞の30分前ーー



 ムラ率いる国連空軍と、

火の鳥率いる魔王空軍が対峙していた。


火の鳥「我はマハルポージャ様配下、

   空の四天王筆頭、名を

   【スピリット・オブ・フラム】という。

   最強の炎のチカラ、見せてやろう。」


スプライト「面倒だな。普通に斬れるのか?

     いや、空中では無理か。

     ちま、氷か水の魔法でやっちまえよ。」


ちまき「火以外の魔法は苦手でし。」


 そのとき、気球部隊を率いる

ドワーフの王、ムラに

地上から応援要請の報せが入る。


ムラ「スプライト! ちまき殿!

  地上部隊の応援を頼む!

  この燃えカスは俺らで消しとく!」


フラム「消すだとぉ? 舐めやがって!!」


 火の鳥が身に纏う炎が勢いを増す。


スプライト「ほう。アレか。強そうだな。

     ヒト型ではないようだし、

     思う存分やれるな。」


 スプライトはエルフ軍と対峙する

8体の巨大な蟻兵の姿を見てイキリ立つ。


ちまき「仕方ないでしね。

   さっき鳥カスたちはだいぶ減らしたから、

   アンタらだけでも大丈夫でしね。」


 スプライトと、ちまきが気球から飛び降りる。


マーボー「元気なネーチャンたちだな。ピュイ♪」


ムラ「マーボー殿、相手は炎。

  アレを使ってみようと思うのだが。」


マーボー「なるほどな。いいんじゃねえか?」


フラム「よく燃えそうな船だな?」


 火の鳥が強烈な炎のブレスを気球に浴びせる。

 しかし気球には影響が無かった。


ムラ「炎耐性付与しといて良かったゼ。

  こんな高さから落ちたら大惨事だわ。

  よし、行くぜ! お前ら!

  発射だあああああ!」


 ムラはホースが繋がった筒を火の鳥に向ける。

 泡立つ液体が火の鳥に照射される。


フラム「あば? あばばばばばばばばばばば!!」


 火の鳥の炎の勢いが急激に弱まり、

折り紙の鶴のような本体が露わになる。


 マーボーが竹槍をストローのように扱い、

火の鳥の本体を吸い寄せ、

ムラの気球に付いたアームが持つ

大きな甕の中に入れ、フタを閉じた。


フラム「なにをした……。我は最強の炎……。」


 火の鳥の炎は完全に消えた。

 ヌルは気球開発の提案と共に、

消火器の開発にも携わっていた。

 火災対策として、パーム油から作られた

界面活性剤を利用した泡消火器を

搭載していたのが功を奏した。


 また、気球に使われる耐火性能を有した

布の開発も進めていた。

 綿飴を作る要領で玄武岩から創り出した糸を紡ぎ

 さらにケイ石から作られたシリコンのようなコーティングを施し

作られたバルーンは高い耐火性能を誇っていた。


マーボー「最強の炎だろうがマッチの火だろうが、   

    火は酸素ってのが無いと

    消えちまうんだとよ。

    しかし消火器ってのはスゲーもんだな。

    燃え盛る炎が一瞬で鎮火したぞ。

    ピュイ♪」


ムラ「魔王って奴はわかってねーな。

  タバコと女をポイ捨てするときはな、

  ちゃんと火を消してから

  ポイしねーと火事になるんだゼ。」


 ムラはタバコの火をクユらせながら、

目を細め遠くを見つめて物想いにふける。

 そして意味不明な台詞を吐き捨てるとともに、

火がついたままのタバコを気球の外に投げ捨てた。


  ゴギンッ!!!


エミー「なに意味のわからないことを

   カッコつけて言ってんだい!!

   しかも火がついたままのタバコを

   投げ捨ててるじゃないのさ!!!


   下に味方がいるんだよ!

   アンタが捨てたタバコを探しやすいように、

   アンタもここから飛んでみるかい!?」


 ムラ王の妃、エミーはハンマーで

ムラ王のヘルメット型の王冠が凹むほどの

一撃をお見舞いする。

 何度も凹まされ、その度に修復してきた

王冠はボコボコである。

 その様は歴戦の戦士の兜のようである。

しかしそれを形成したのは、

全てエミーなのであった。


 マーボーは咄嗟に伸びる1突きを放ち、

ムラが捨てたタバコを粉砕した。

 マーボーはムラの王冠の凹みを見るたびに、

女の強さを実感するのであった。


 ムラ王の胸ぐらを掴み、

気球から落とさんとばかりに詰め寄るエミー。

 マーボーは慌ててエミーの肩を掴み、なだめる。


マーボー「エミー殿、落ち着いて。

    タバコは処理しましたから。

    そんなに身を乗り出したら、

    危ないですよ!」


ムラ「しゅ、しゅいましぇん。」


 魔王空軍最強の将を討ち取ったムラ。

 勝利の余韻に浸る、ムラを打ちのめしたエミー。

 歴史に残る、空の戦いの覇者は誰であったのか。

 それが史実として残ることはなかった。

 真実はマーボーの心奥にのみ、記された。

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