105 火蓋
新年あけましておめでとうございます。
本年も駄作を宜しくお願い致します。
105 火蓋
ヌルは船に乗り込んだ。
発進しようとしたそのとき、
船室からレスベラ、クルム、うまーるが現れた。
ヌル「な、なんでココにいるんだ!?」
クルム「思い詰めた顔しちゃって。
見え見えなのよ。
先代勇者の真似しそうだなって。
歯を食いしばりなさい。」
クルムは強烈なボディーブローを、
歯を食いしばるヌルに食らわせる。
ヌル「ぐほっ!」
レスベラ「歯を食いしばれ!」
レスベラの平手打ちが背中に炸裂する。
手加減してくれたようだ。
うまーる「置いてくなんて酷いんだよ!」
うまーるは平手打ちのフリをして、
そっとヌルの頬に手を当てた。
しかし強力な電撃を放たれた。
ヌル「あばっ!!」
クルム「本当に行く気なの?」
ヌル「うん。
どのみち、魔王軍には明後日突入の情報が
漏れてるはず。
今夜の夜襲は効果があると思う。
行こう。みんなには悪いけど。」
レスベラ「しょーがねーな。
一緒に叱られてやるよ。」
うまーる「おしおきも、みんなで分けるんだよ。」
クルム「ほら、行くわよ。
まったく男が考えることは。
置いてかれる女の映像見て、
なんでこういう行動に出るんだか。」
レスベラ「男心わかるわけねーよ。
わかってたら
クルムに彼氏できてるだろー。」
クルム「なんで他人事なのよ!」
クルムとレスベラのケンカを尻目に、
ヌルはヤラナに声をかける。
ヌル「全速前進、目指すは北東だ。」
走り出す船。
ヌルたちの船には細い糸が縛り付けられていた。
糸が切れ、とある宿屋の一室に
鈴の音色が響いた。
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ヌル「陸地が見えてきた。
アレが魔王が統治している大陸に違いない。
みんな、これから俺はゴーレム兵を一掃する
魔法を使う。船の操作をお願いしたい。
よろしく頼む。」
クルム「仕方ないわね。シッカリやりなさいよ?」
レスベラ「どんなスゲーの
ブッパなすのか楽しみだぜ。」
うまーる「頑張るんだよ!」
ヌルは聖杯に溜まった魔力水を飲み干した。
ヌルの体中に魔力が漲る。
ヌル「これは凄い。
みんな……。本当にありがとう。」
ヌルは空に向けて両手を挙げ、魔力を解き放つ。
その頃、海中のヤラナが巨大生物により
捕食されてしまう。
ガクンッ!
船が急激に速度を落とし、停止してしまう。
クルム「ヤラナ! どうしたの?
何かあったの!?」
クルムはヤラナとの通信魔法具を
叩きながら話しかける。
レスベラ「なんかいやがるぜ! 強いな。」
うまーる「来るんだよ! みんな捕まって!
落とされるんだよ!!」
うまーるとレスベラが敵の気配を察知する。
まるで大型車と衝突したかのような
衝撃が船を襲う。
レスベラはヌルを支え、踏ん張る。
うまーるは跳び、空中に留まる。
クルムはマストにしがみつく。
クルムが船に魔力を注ぎ込み、
船は再び走り出す。
船はヤラナを失い、
また左舷が損傷しスピードが出ない。
うまーるが船の外周りを見ると、
巨大な海棲生物が並走していた。
左右から体当たりをかます獣たち。
船が左右に激しく揺れる。
レスベラ「ちくしょう!
降りてブッタ斬ってやろうか!!」
ヌル「ダメだ! ギリギリまで船で走るんだ。
海の中じゃ勝ち目が無い!」
後ろから巨大な獣が激しく船に追突してきた。
またその獣の角により、船は串刺しとなった。
レスベラがミヅハノメを抜き、角に斬りかかる。
しかしツノは硬く刃が通らない。
レスベラ「硬えな! クソッ!」
「グハハハハハハハ!
一方的過ぎてつまらぬな!!」
クルム「なら、陸の上で遊んであげるわよ?」
巨大な海獣が角を振ると
船が激しく揺さぶられる。
ヌル「くそっ!
まだ陸まで1キロくらいあるぞ!!」
うまーる「あわわっ!!
邪魔するから悪いんだからね!!
手加減できないんだよ!!!」
ブチキレた、うまーるが雷切を握りしめる。
雷切は2対の電極となり、
激しく荒れ狂うアーク放電を放つ。
それはまるで、縄跳びの縄のようである。
うまーるが渾身のアーク放電を
海獣の角と額に叩きつける。
レスベラですら斬れなかった角が溶断され、
海獣の額も焼き切り大ダメージを与えた。
「グバアアアアアアアアアアアアア!!」
巨大なマッコウクジラのような怪獣が
仰向けになり、白い腹を海面に向け浮かび上がる。
「リヴァイアサン様アアアアアア!!」
「早くアレを飲ませろ!」
海獣たちが騒いでいる。
海獣が沈んでいき、船は開放され
低速ではあるがまた走り出す。
しかし、船の至る所から浸水が始まった。
ヌル「まずい! 沈む!!」
クルム「アンタ魔法はどうした?
ちゃんと撃てたの?」
ヌル「お陰様でなんとか。
始まるのは8分後だ。
しかし、このままじゃ沈む!
……フライボードで行くしか無いか!?」
沈みゆく船の中に突如、
たくさんの泡が発生した。
ヌル「なんだこの泡は!? 敵襲か!?」
泡が弾けて音声に変わる。
「フネヲステロ ハシレ」
ヌル「ヨーリー様の声!?
走れ!!?
そうか! みんな、船を捨てて飛び込め!」
レスベラ「海の上走れるけどな!」
クルム「信じるしかないわね!」
うまーる「信じるんだよ!!」
ヌルたち4人が海に飛び込もうとした
そのとき海が割れた。
アッチ「敵は我々に任せて走れえええええ!!」
ヌル「助かりました!!」
4人は海底を走り出す。
凸凹な岩に加えて海藻のヌメリに四苦八苦する。
10秒ほどすると、割れた海が戻り始める。
ヌル「え、ええええええ!? 海が戻るぞ!
たしかにこんな規模の魔法、
長く維持できるわけがない!
どうする、泳ぐしかないのか!」
(((大丈夫だよ。僕たちを信じて。仲間にも伝えて。
陸まで乗せて行くよ。身を委ねて。)))
ヌル「誰だ!? この感じは、ヒトじゃない。
今は信じるしか無い!
みんな、俺たちを乗せてくれるという
仲間がいるんだ。身を任せよう!!)
割れた海が閉じ、4人は波に飲み込まれる。
そのとき、大小さまざまなクジラやイルカが
ヌルたち4人を掬い上げた。
背に乗せ、そのまま泳ぎ出す。
ヌル「ありがとう助かった!
人魚族のお友達かな?」
鯨(((ずいぶん大きくなったから、わからないよね。
昔、砂浜で動けなくなっていたところを
助けてもらった者ですよ。)))
ヌル「砂浜? もしかして、アズマ火山に
行く途中に皆で助けた、
あの時のイルカか!!
鯨だったのか! デカくなりすぎだよ!」
鯨(((思い出してくれたんですね。そうです。
あのとき、皆さんに助けてもらった
イルカです。
ヌルさんが僕の声を聞いてくれたおかげで、
命が助かりました。
恩返しができて良かったです。
砂浜に着きました。
僕たちは人魚族を助けに行きます。
ご武運を。)))
ヌル達を砂浜に降ろし、
鯨たちは沖へ向けて泳いでいく。
レスベラ「ヌルはあんな友達までいたのか?
あれ、1人で海に向かって
話しかけてたわけじゃないんだろ?」
クルム「もっと早く呼びなさいよ!!」
うまーる「すごいんだよ!
イルカさん速かったんだよ!」
ヌル「3年前、旅の途中で死にかけてたイルカを
見つけて皆で助けたんだよ。
まさか、あんな大きな鯨になってるとは。
行こう!」
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ヌルたちの船が沈んだ地点。
「ボバアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
額に大きな火傷の痕が残り、
角が折れたリヴァイアサンが激昂している。
禁薬を使い傷を癒したようだ。
全身の筋肉は肥大し、血管が浮き上がる。
ヨーリー「中折れどこじゃないわネ♪
挿れる前に折れちゃうなんて。
ガッカリだわぁ〜。
遊べるの楽しみにしてたんだケド♪
血管浮き出てビクンビクンしてるの
ヤラシ〜♪
私と遊びたい気持ちはあるんでしょ?
遊んであげようかしら?」
激昂するリヴァイアサンを挑発するヨーリー。
リヴァイ「おのれ!
おのれおのれおのれえええええええ!!
あの小娘!!
代わりにお前らを
食いちぎってやろうぞ!!」
ヨーリー「ねえ、私と2人きりで遊びましょうよ。
それでね、勝った方は負けた方の部下を
好きにできるってのはどう?」
リヴァイ「なぜそんな提案にのる必要がある!!
どのみち、お前ら全員ぶち殺すのだ。
結果は同じであろうが!」
ヨーリー「あらやだ。怖いの?
こんな[か弱い]人魚ちゃん1人、
お友達と一緒じゃないと
恥ずかしいのカナ?」
ヨーリーは強気で挑発する。
リヴァイ「フザケおって。いいだろう。
先ずはお前を挽肉にしたあと、
お前の仲間も食らってやろう。」
ヨーリー「そうこなくちゃ。
という事で皆、この勝負が終わるまで
勝手にナンパしちゃダメヨ♪」
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砂浜を走るヌルたち4人。
地鳴りのような音が鳴り響く。
目を光らせた数万体のゴーレム兵が
ヌルたちを取り囲む。
レスベラ「出やがったな。」
レスベラがミヅハノメと七星流転を抜き構える。
クルム「ちょっと!
一掃する魔法はどうしたのよ?」
うまーる「タカキタのより小さいんだよ。
だから今日は負けないんだよ。」
うまーるは雷切を構える。
ヌル「問題ない。時間だ。」
突如、空が赤く燃え上がる。
それは赤いオーロラであった
ヌルは魔法で太陽の黒点に魔力を集中し大爆発を起こしていた。
太陽フレアは強力な電磁パルスを放ち、
それはリバアースの電子と衝突し、
オーロラを作り出す。
リバアースに降り注いだ電磁パルスが
ゴーレムの中の雷の真石核をショートさせ
ゴーレム軍を次々と機能停止させる。
次々とゴーレム兵が倒れる。
まるで糸が切れたマリオネットのように。
レスベラ「え? え? どうなってんの?」
クルム「この赤い光が攻撃なの?
私たちは大丈夫なんでしょうね?」
うまーる「きれい……。
すごい!
全部やっつけちゃったんだよ!」
ヌル「天属性魔法【太陽フレア】
この赤いオーロラが戦いの火蓋だ。
俺たち人類の反撃の狼煙だ!!
見てるか? ギリー! マハルポージャ!!
お前達に奪われた全ての物を今、
取り返しに行く!!」