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【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第一章 戦う理由
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10 生々流転

10生々流転


ー森林前・草原ー


 蜘蛛やミノタウロスとの激戦を終えた夜。

 野営で焚き火を囲む一行。

 森林の探索は夜間を避けて日中に行う方が良い、ということで草原でキャンプをすることとなった。

 

 焚き火の前で、

マーボーは自慢の竹槍を磨いていた。

 それを見ていたヌルが話かける。


ヌル「その竹槍、すごいピカピカですね!

   長年使ってるんですか?」


マーボー「15年くらいになるかな。

     この槍はな、【かぐや】っていうんだ。

     俺の娘の名前だ。ピュイ♪」


ヌル「マーボーさん子供いたんですね!?


   子供さんは今どこにいるんです?

   一緒には暮らしてないんですか?」


 ヌルとマーボーの会話が気になったのか、

ナナ、ナーガ、オニオも焚き火に寄ってきた。

 5人で焚き火を囲む。


 マーボーは月を指差した。


マーボー「カグヤはな、あそこにいるんだよ。」


ヌル(!?)


マーボー「俺の故郷に伝わる神話にな、

    【かぐや姫】ってのがあるんだ。」


ヌル(俺以外にも、

  日本から転生した奴が

  いっぱいいるんだろうな。)


マーボー「俺は15歳で初陣を飾った。

     聖騎士のスキル。

     大きな体と自慢の腕力で傭兵として

     ガンガン稼いだ。ピュイ♪


     稼いだ金で派手に遊んだよ。

     女にもモテてなぁ。

     俺の槍は乾くヒマが無かったぜ!

     ガハハハ! ピュイ♪」


ヌル(なんかヤベエ話ハジマタ……)


ナナ「槍が乾かない…?」


ヌル(ナナは何の事か、わからないかぁ。

  かわいいな。

  俺が保健体育教えてやらないとな。

  グヘヘへ。)


 ヌルがゲスい顔でニヤける。


マーボー「たくさんのギャル達と

     遊びまくってたらよ、

     ガキができちまってな!

     ガハハハ! ピュイ♪


     女の名は【サヌキ】っていってな。

     イイオンナだった。

     娘のカグヤを産んで死んじまったよ」     


 少し空気が重くなり、

マーボーが真剣な顔つきになる。

 マーボーは咥えていた竹筒をそっと置いた。


マーボー「俺の故郷の竹は質が良くてな。

     ちょうどその頃、世界一の魔法具職人が    

     素材を探しにウチの村に来てたんだ。


     ウチの娘はな、生まれつき

     体が弱くてよぉ。

     メシを上手く食えなくてなぁ。

     よく食っては吐いてたよ。

     それが原因で肺炎になっちまってな。

     3歳になる少しくらい前にな、

     少し遠いところに行っちまった。

     かぐや姫と一緒で月に行ったんだよ。


     俺は信じてる。

     娘は生きてる。

     生きてずっと俺を見てるってな。


     話が逸れたな。

     娘が旅立った日、

     ウチの故郷の竹林がな、

     一斉に花咲いたんだよ。

     だいたい100年に一度くらいの

     周期で起こるんだ。

     一斉に花開いて一斉に枯れる。


     次の日の夜のことだ。

     魔法具職人が枯れた竹林の中で

     一本の光り輝く竹を見つけたんだよ。

     しかも声まで聞こえたってな。


     「わたしを……つかって……」


     らしい。

     魔法具職人が俺のところに来てな、

     その話をしながら

     この槍を渡してくれたんだ。


    「素材の声の通りに作った。

     俺の最高傑作だ。

     世界のために使え。

     金は要らん」


     槍を握ってわかったよ。

     この槍は生きてる。

     職人の、里の竹林の、サヌキの、そして          

     カグヤの魂が籠ってるってな。」


 4人のヒヨッコは泣いている。

 涙でぐしゃぐしゃだ。


マーボー「俺は戦ったよ。

     なんで戦争なんてしてるのかは

     わからねえけどよ、必死に戦った。


     大勢の仲間が死んでいったよ。

     上官、先輩、同期に後輩まで。

     みんな何かを守るのに必死だったよ。


     死んじまった奴の肉体は

     未来には行けないけどよ、

     死んじまった奴の想いは

     未来に連れていけるんだよ。


     俺たちに未来を託して

     死んでいった奴らのぶんまで、

     俺らはそれを背負って行くんだよ。

     例え、どんなにそれが重くても、だ。

     それでも前に進むんだよ。

     それが生き残った奴の役目だ。


     食い物もそうなんだよ。

     食材だってみんな命だ。

     植物だって生きてる。

     食われて死んだ奴らだって

     無駄に死んだわけじゃないんだよ。

     俺たちが生きて世の中に貢献する。

     そうすれば食材になった奴らも

     報われるんだ。


     俺たちが出したウンコは、

     小さな動物や植物たちの糧になる。

     植物は自分達が繁栄するために、

     果実に種を入れて動物に食べてもらう。

     受粉をするために花に蜜を仕込む。


     植物が栄えれば動物も栄える。

     動物が栄えれば、一方的に食われる側の   

     植物も栄えるんだ。


     小さな動物が増えすぎると

     バランスが取れないから、

     大きな動物が食べる。

     大きな動物は増えすぎないよう、

     多くの子供が生まれないように、

     また成長が遅いようにできてる。


     大きな動物が死ねば、それがたくさんの

     小さな生き物の糧になる。

     俺は頭が悪いからな、説明が下手で

     上手く言えねえけどよ。


     命は巡るんだ。

     形を変えながら。


     だから食い物に感謝しろよ!

     たくさん食ってデカくなって強くなれ。

     たくさん食えるのだって才能なんだぞ。

     しっかり食って自分の使命を果たせ。

     食ってきた食材達の想いも、

     未来に連れて行くんだよ。


     魔王が何を考えてるか知らねえが、

     もし間違った事をやろうとしてる

     のなら、俺たちで全力で止めるぞ!!」



4人組「はい!」


マーボー「なんか、槍の話が食い物の話に

     なっちまったな!

     ガハハハ!」


 マーボーは置いていた竹筒を咥えた。

 そしてまた、嬉しそうに竹槍を磨き始めた。


 ヌルたちには、竹槍を磨くマーボーの姿が、

子供の頭を撫でる父親の姿に見えるようになった。


挿絵(By みてみん)


「ちゃんとメシ食ってんのか?」

「いっぱい食えよ!」

「野菜もちゃんと食え!

残すな! 食い物を粗末にするんじゃねえ!!」


 普段からマーボーが、

自分たちにかけてくれる言葉の意味が、

わかった気がした4人だった。




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