表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【台本版】魔王の缶詰()の作り方  作者: ジータ
第一章 戦う理由
1/138

1 ワンマンライブ



挿絵(By みてみん)


 





 1人の女性が書斎のような場所で何かを執筆している。

 髪の色は若草色。

 服装は貝紫色のキトンのような衣装だ。


 女がこちらを見て語り出す。


   これは地球と、異世界【フォーチュンランド】

   で“魔王の手先”と呼ばれた男が、

   異世界の魔王に挑む戦記。


   これから1人の男が地球で

   自殺をしようとしています。


   しかし、人生を悲観して

   身を投げるわけではありません。


   男は異世界への転生が約束されていました。

   2度目の転生でもあります。


   過去、未来、現在、出会い、別れ。

   複雑に絡み合い紡ぎ出す物語。


   まだ誰も知らない。


ー魔王の缶詰の作り方ー



挿絵(By みてみん)





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ー2023年 地球 アメリカー


1人の男がニューヨークの高層ビルから

飛び降りようとしている。

 主人公である【ぬるゆ】である。


ぬるゆ(この40年、やれるだけの事はやった。

   勉強の合間に剣道、空手、柔道など。

   きっと今のまま、

   この世界で過ごすのが、

   間違いなく1番幸せだ。


   だけど俺はもう一度、

   あの世界に行かなきゃいけない。

   今の俺があるのは、

   あの世界のおかげだからだ。


   あの日ナナが繋いでくれた、俺の命。

   みんなの意志を引き継ぎ、

   今度こそ、皆の悲願である魔王を倒す!!

   アイツラの仇をとる!!!


   そして必ず、ナナを救う方法を

   見つけ出す!!


   思い残すことは…?


   疲れた時に【アンリさん】の歌声を、

   もう聴けないこととかかな……。


   ええいっ!!


   時間だ!

   覚悟を決めろっ!!)


ぬるゆ は覚悟を決めて飛び降りた。


 ぬるゆ は目を瞑っているはずなのに、

なぜかとても眩しい光を感じていた。



ぬるゆ 落ちていく中、

不思議な浮遊感を感じた。

 胸の奥あたりから、まるで 【魂】が、

すうっと光に吸い込まれていくような、

自分の体が二つに分かれるような、

不思議な感覚に包まれた。


  ードオオン!!ー


地上では通行人たちが騒ぎ出す。



「人だ! 人が飛び降りたぞ!!」

「キャアアアア!!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ー2010年 地球 日本ー


挿絵(By みてみん)


ぬるゆ「イエエェェイ! 

    アリーナのみんなああぁ!!

    今日も全力でぇー、

    アガッて帰ってくれぇー!

    イクゼ! 次の曲ぅー!」


 ファー♪ パフォー♪ ファブッ♪


 頭装備は猫耳のカチューシャ、白髪ロングヘア。

 胸元を強調したチューブトップの上着。

 ブルマのようなホットパンツからは

猫のような尻尾が垂れ下がる。

 足装備は網タイツ+ミュールのような

靴を履いている。


 しぐさ【ゆかいな踊り】をしつつ、

大きな笛を吹き、

ライブパフォーマンスをする者がいた。


 中身はオッサンだが、アバターはセクシーな

コスチュームをしたギャル風であった。

 もちろん、声はオッサンである。


 戦場に似つかわしく無い装備のギャル、騎士、

銃士、軽業師のような双剣の剣士の4人が、

巨大な火竜と戦っていた。


「ギャアアアアアアアアアアアアス!!」


 火竜はホバリングをしながら、

けたたましい咆哮の後、

大剣を担いだ重鎧の騎士に向けて

火球ブレスを発射する。


 騎士は大剣を盾のように使い、火球を防ぐ。


 タタタタタタタタタ!


 銃士は少し離れた所から、

銃でドラゴンを狙撃する。


 身軽な動きの双剣の剣士が、

ポーチから取り出した閃光弾を投げる。


 閃光弾が炸裂すると、

まばゆい光が辺りを照らす。


 ホバリングしていたドラゴンが墜落し、

地面でもがく。


 銃士よりも離れて後ろにいた、

ぬるゆ が前線に躍り出て、

ここぞとばかりに大きな笛を振り回す。

 

ぬるゆ「シャアアア!

    俺のソロパートイクゼエエェェェ!」


  ドンッ! パブッ♪

  ゴスッ! ファー♪

  ガンッ! ボェェ♪


 ぬるゆ は巨大な笛を鈍器として使い、

倒れたドラゴンを殴打する。

 笛はドラゴンを殴った衝撃で音色を奏でる。


 剣士と騎士、銃士も続く。


 騎士の大剣を振り上げ、タメの姿勢に入る。

 タメからの、渾身の振り下ろし。

 強烈な斬撃がドラゴンの尾の先を切断する。

 

 剣士は地面に罠を設置している。

 それを見た銃士が麻酔弾を装填する。


 火竜がスタンから起き上がる。


 「ガアアアアアアアアア!!」


 火竜が怒りの咆哮を放つ。

 口からは炎が漏れ出ている。


 ザシュッ! カッ! ザシュッ!


 ぬるゆ は、切断された尾の先から

素材を剥ぎ取っていた。


 火竜が左右に首を振り、炎を撒き散らしながら

走り出した。

 突進の先には罠が、罠の手前には

切断された尾と、ぬるゆがいる。


 火竜の突進を受け、

ぬるゆ は吹っ飛び力尽きる。


[キャンプに戻ります]


 ぬるゆ の目の前にウインドウが現れ、

ぬるゆ はリスポーン地点に強制送還される。

 ぬるゆ は絶叫する。


ぬるゆ「あああああ!

    まだ尻尾から素材取ってねえのに!!!」


 

 ー火竜と3人が戦う戦場ー


 火竜がトラバサミのような罠にかかり、

激昂し暴れている。

 

 剣士と騎士は麻酔薬が入った袋を

ドラゴンへ投げつける。

 銃士が麻酔弾を撃ち込む。


[クエスト達成です! 10秒後に帰還します]


 またも、ぬるゆ の眼前に現れるウインドウ。


ぬるゆ「ああああああ!

    早く! 早く! 間に合わねえよ!」


 戦場を目指し走り出す、ぬるゆ。

 しかし、キャンプからドラゴンの尾がある

エリアまでは遠かった。

 どうやっても10秒では間に合わない。

 しかし、ぬるゆ は走る。


ぬるゆ「ダウンロード長えよ! チクショウ!!」


 ぬるゆは焦っていた。

エリアチェンジで待たされる時間が

いつもより長く感じる。


 時間切れとなり、

強制的に街の酒場へと帰還する4人。


[パーティから外れました]


 ぬるゆ がパーティから追放されたことを

通知するウインドウ。


ぬるゆ「まじかよ! “また”キックされたよ!

    俺、みんなの支援を

    頑張ったじゃねえかよ!」


 現実世界で机を叩くぬるゆ。



 一流の笛使いは、

ドラゴンの攻撃を紙一重で躱しながら、

打撃をカウンターで決めつつ演奏して、

味方の強化や回復を行うものであった。


 それに対して、ぬるゆ は岩陰や、

少し高めの高台などの安全地帯から、

味方の強化や回復などをしているだけであった。


 セクシーな衣装とダンスで皆を鼓舞する。

 ぬるゆ は、それを自分の確固たる

プレイスタイルとしていた。

 しかし、仲間達の視界は常に敵を捉えている。

 よそ見などをしている余裕はなかった。

 受け入れられるはずもなかった。


 ぬるゆ が攻撃をするのは、

ドラゴンが倒れた時などの安全な時だけであった。

 また、戦闘中の素材剥ぎ取り行為は、

マナーとしてよろしくない行為でもあった。

 知らぬ間に、パーティメンバーからのヘイトを集めていた ぬるゆ。

 パーティ追放は日常茶飯事であった。


 これは、当時大人気だったゲーム

【ドラゴンハンター】の話である。


 大人から子供まで幅広い年齢層のプレイヤーが

マルチプレイを楽しんでいた。

 そのため、ゲームガチ勢とライトプレイヤーとの軋轢は強く、下手くそなプレイヤーは、

【ゆうた】【ふんたー】などの蔑称で呼ばれ、

忌避されていた。


 また、下手くそだけでなく、

【ハチミツください】などの

乞食行為も忌避されていた。

 そうしたものを総じて

【ザコは来るな】と言われていた。



温湯(ぬるゆ)保男(やすお)は30歳になる

日本人の男、独身だ。

地方のブラック企業で働いている。

職種は飲食サービス業だ。

お店は年中無休。


年々上がり続ける食材費と人件費。

不景気で売り上げは落ちても、変わらない賃料。

高齢化の影響をモロに受けて人手不足に加えて

 バイトの時給は年々上がっていく。

 もちろん、彼の給料はたいして上がらない。

 もう、賢い大学生は時給800円で

キツいバイトなんてやらないのであろう。

 若者だけでなく労働人口が減っているのも影響しているのであろう。


 彼の休みは不定期。基本的に平日。

 土日が休みで、家庭をもっている友人達とは

疎遠になるばかりである。

 ネトゲをやるのと、ラーメン屋巡りが趣味だ。

 あとは、唐揚などの簡単なツマミを肴に、

家で独り呑みなどである。


 彼はゲーム好きであるが、

絶望的なまでにヘタクソだった。

 それでも、ネトゲは楽しいようである。


 ぬるゆ は【ザコは来るな!】

のマルチプレイでは乙らないことを徹底していた。

 4人合計で3乙(落ち、死亡)でゲームオーバー。

 一人で3乙とか、3回目の乙とかを引くと、

乙るまでにどれだけ貢献していても、

それだけで戦犯になるからである。

 周りの視線に耐えられないのである。


 素材剥ぎ取りに夢中で乙ってるって?

 それは彼にとって事故なんだ。仕方ないさ。


 彼も本当は、皆みたく剣を振り回したいようだ。

 でもヒーラーやサポート役を率先して

やっている。

 ヒーラーやサポート系は人気が無く、

人口が少ない。


 アタッカーは花形だから人口が多い。

しかし、求められる技術や装備のハードルが高い。

 アタッカーは、

スペックが低いとパーティ難民になるのだ。

 ぬるゆ にとって、

とにかくパーティを組む事。それが第一優先だ。

 次点でパーティから追放されないこと。

 楽しさは二の次というのが、彼の矜持だ。


 対人コンテンツにおいては、

ぬるゆ は、ほとんど負けている。


 それでも満足なんだろう。

 【参加賞】にあたるアイテムがもらえれば。

たとえ、自分の死体の上で

【シャゲダン〈煽りのダンス〉】されたって。


 今日は ぬるゆ が

他にもうひとつやってる、ネトゲのアプデ日だ。

 今日の有給をとるために、

ここ1週間、かなり無理をして

仕事を片付けたようだ。


 ネトゲ【勇者と魔王x】の

新しいタワーディフェンスコンテンツ。

 【王都防衛隊】である。

 かなり楽しみにしているようである。


 本来ならば、新しいコンテンツに

遅れて参加する場合、

攻略サイトとか配信者の動画で

予習をしてから行くべき。

 というのが、

ネトゲのマルチプレイのマナーである。

 しかし地雷プレイヤーに多い【ネタバレ忌避奴】は、とりあえず何も知らない状態で早くやりたいという衝動を抑えられない。

 やらかしてしまった、ぬるゆ。


 ぬるゆ は、

はやる気持ちを抑え切れずにPCを起動した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ぬるゆ「とんでもない数の雑魚敵が

   押し寄せてくる!

   某・無双ゲームみたいだな」


 王都の外からモンスターの大群が、

城下町の入り口の門をめがけて進軍してくる。


ぬるゆ「城門が破られたらゲームオーバーか。

   他のプレイヤーは、魔王軍の隊長らしき

   ボスを囲んで殴ってるな。

   門を放置は危ないだろ?

   俺が行くしかないか」


 城門の守りが手薄だと感じた、ぬるゆ は

ひたすら門に向かうザコを叩いた。


 ぬるゆ が、ふと気がつくと、

彼のアバターの目の前で踊る不審な奴がいた。


 マッチョな種族で短髪の男キャラ。

 身に纏うのは女性向けのフリフリが付いた

ドレスのような装備であった。

 両手にジュリアナ扇子のような扇の二刀流。

 そしてチャット画面に異様な文字列が並ぶ。


踊る奴「ガイガイガガイ♪ ガイガガイ♪」





はじめましてジータと申します。酷い文章力です。

随時改稿していきます。

駄文を回避したい、けど興味あるよ。

という方用に、あらすじの他にも各章ごとの短縮版用意しました。100話以降です。

よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ