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EP2 駆け出し


 冒険者ギルドにやって来た俺は、集会所内で堂々と行動しても怪しまれぬよう、ひとまず冒険者登録を行うことにした。


「——登録の手続きは以上となりますが、何か質問はございますか?」

「いえ」


 対応してくれたのは、目を見張るほど美しい受付嬢だった。

 長い銀髪を後ろで一つに纏めている、クールで落ち着いた印象の女性。年齢は二十代前半くらいか。名をソルさんと言う。


 是非ともお近づきになりたかったが、これから違法な仕事をする身だ。受付嬢なんてみんな善人(グッドマン)だろうし、会話は最小限に控えておいた。


「ではエンバーグさん。これにて登録完了です」

「どうも」


 エンバーグというのは偽名(ビジネスネーム)だ。違法な活動をするうえで、本名を名乗るのは好ましくないと思ったのだ。


「さっそく何か依頼を請けてみますか?」

「えっと、あれに参加することってできます?」


 目を付けていたのは、掲示板に張り出されている魔獣討伐の大規模募集。大人数が協力して討伐を行う、いわゆるレイドクエストである。


「そちらはランク制限が無いのでFランク(駆け出し)の方も参加可能ですが……初仕事で討伐依頼はお勧めしません。初めは薬草採取など、簡単なものにしてはいかがですか?」


 レイドクエストは色々な冒険者と知り合える絶好の機会だ。大規模な戦闘になるだろうから、回復薬やその他サポート系の薬品を売り込むチャンスもある。加えて、街から出て山に行くので、ギルド職員や衛兵の目を気にする必要もない。裏取引を行う、格好の場なのである。


「大丈夫です。腕には自信があるんで。指先から稲妻だって出せるし」


 もちろん嘘だ。魔法なんかこれっぽちも使えない。


「……そう、ですか」


 訝しむような視線を向けてくるソルさん。


「……まぁ、そこまで言うなら止めませんけど。でも一応、先輩冒険者にサポートしてもらいましょう?」


 彼女は少し体を横に傾け、俺の背後に向かって声をかける。


「ジェシカちゃん、ちょっといいかしら?」


 釣られて振り返ると、すぐ後ろに人がいて思わず声を上げそうになってしまった。


「……」


 マントを羽織った身長140センチくらいの小柄な人間。フードを深く被り口元にスカーフを巻いているため顔は全く見えない。が、名前と細い体躯からして、たぶん女の子だ。


「エンバーグさん、こちらはCランク冒険者のジェシカちゃん。ジェシカちゃん、こちらは新人のエンバーグさん」

「ど、どうも」

「……」


 ジェシカと呼ばれた少女は小さく会釈したのち、少し首を上げて俺の顔を窺ってきた。その際に一瞬だけ、フードの隙間から綺麗な碧眼が覗いた。


「ジェシカちゃんも明日のレイドクエストに参加するのよね?」


 こくり。ジェシカの首が縦に動く。無口な子のようだ。


「エンバーグさんも参加したいらしいのだけど、初仕事で心配だから一緒に行動してあげて?」


 こくりこくり。ジェシカが二度頷く。かなり無口な子のようだ。


「良かった。じゃ、二人は一時的なパートナーね」


 こくりこくりこくり。だいぶ無口な子のようだ。


 ……いや待て。一緒に行動だと? そんな事されたら裏の商売ができないじゃないか。


「別に、お守りしてもらわなくて大丈夫ですよ?」

「まぁそう言わずに。万が一のために側で控えてもらうだけですから」

「でも……」

「あ、もしかしてジェシカちゃんの実力が心配ですか? 大丈夫ですよ。ジェシカちゃんとっても強いし。ね?」


 力強く頷くジェシカは、何のアピールか分からないが、その場でクルリとバク転して見せた。本当に何のアピールだろう。


「いやほんと、大丈夫ですって」


 渋る俺を見て、ソルさんの眉が怪訝そうに顰められる。


「……ジェシカちゃんが一緒だと何か都合の悪いことでも?」

「そ、そういうわけじゃ……」

「じゃあいいですよね?」

「ハイ……」

「良かったです。ジェシカちゃん、しっかり見守っててね? 離れないであげてね?」


 ……もしかして、良からぬことを企んでいると見透かされているのか?

 マントを羽織り、サングラスと中折れ帽で目立たぬよう変装しているので、怪しまれる要素は全く無いと思うのだが……。


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