タンポポ。
待って待って……と追いかける。
ケサランパサラン追いかける。
けれど、ふわふわは……。
「あ……」
春の上昇気流に乗って、高く高く舞い上がった。
空は雲ひとつない、春日和。
真っ白に輝く春の日差しは、意外に暑くて、汗ばむほどだ。
……どうしよう?
瑠奈さんは、途方に暮れる。
ケサランパサランは行ってしまった。
周りはただの住宅街。
紫子さんの気配は、何もない。
もしかして、間違った……?
ケサランパサランについてきたのは、
間違っていたのかも……。
「……」
瑠奈さんは思わずその場に座り込む。
どうしたらいいか、分からなくなった。
──サラサラ……。
「!」
小川のせせらぎの音が、瑠奈さんの耳に届いた。
瑠奈さんは、ハッとする。
ゆっくり立ち上がると、川の側へと足を向けた。
そうだ!
そうだった。
紫子さんは、川に落ちているかもしれない!
ギュッとカバンを握りしめた。
バスタオルと着替えの入った、若葉色のカバン。
きっと、きっとあの川に……!
瑠奈さんは急ぐ。
水浸しの紫子さんが、
震えながら待ってるに違いないって思って、
心が焦る。
早く会いたくなって、
瑠奈さんは駆け出した。
道端に咲いた、タンポポの綿毛が、
風に煽られて、
ふわりと舞った。
こちらも、『小春日和』を
『春日和』に変換しております(*^^*)