第四話【手掛かり】
市役所に行ったその日の夜。
親父に
「学校が終わってからどこに行っていた?!」
と問い詰められたが、俺は真実を答えなかった。
「友達とゲーセンに行ってたんだよ。
頻繁に行ってる訳じゃないんだから、たまには良いだろう?」
――本当か?ならば証拠を見せろ。
予想通り。
そんなに疑ってまであの真実を隠したいのかよ。
俺は疑われるだろうと踏んでいたので
あらかじめゲーセンに行って人形を取っていたのだ。
「ほら、証拠。」
――帰りが遅くなる時は連絡を入れなさい。
「人を疑っておいて謝罪はないのかよ」
――疑って悪かったな。
その日は晩御飯も食べずに部屋で兄の手掛かりを探していた。
知ってる情報は兄の名前だけ。
SNSで探してみたが、見つからない。
それもそうだ。
アルバムには俺の写真しかないし、俺の中にある昔の記憶は小さい頃の
兄の顔だ。
時が経てば、顔も変わる。
この人か?と思っても確証がないからコンタクトが取れない。
探偵を雇いたいが、高校生の俺にそんなお金があるはずがない。
そこで俺はSNSに投稿することにした。
幸いなことに親には俺のSNSの存在は知られていなかった。
~俺は幼い頃に生き別れた兄を探しています。
親は俺を一人っ子だと言い張っています。
しかし、俺は市役所に行って戸籍謄本を見たので
真実を知っています。
名前は弘人。苗字はSNSなので控えさせていただきます。
兄は三つ上なので恐らく、成人したばかりでしょう。
俺の名前は孝弘です。
心当たりのある弘人さんは連絡を下さい。
※悪戯で名前を偽り、連絡してくるのはやめて下さいね。~
と書いて連絡を待つことにした。
待っている間、親に真実を知っていることをバレないために
必死に今まで通りを装った。
幸いにも親は鈍感で変わらずに俺を一人っ子として育てている。
しかし、世の中そんな上手くいくわけもなく。
弘人を名乗る人から連絡が来たが、返信すると決まって
「嘘でーす」と返ってきた。
注意書きも書いたのに。
SNSにはやはり最低な奴もいるんだなと痛感していた。
何の進展もないまま一ヶ月が過ぎた。
俺は頭を抱えていた。
連絡が来るのは決まって悪戯の奴ら。
本物の兄から連絡が来ても信じることが出来ない気がしてきた。
そんな時、また友人が声を掛けてきた。
――何か悩み事ですか?孝弘様~。
「気持ち悪いよ(笑)いや、まぁちょっとな。」
――この俺に言ってごらんなさ~い。
「お前、ずっとそのキャラで行く気?
友達を辞めてもいいですか?」
――ごめんって(笑)
良いから話してみろよ。
「俺、あれからSNSに投稿してみたんだよ。
心当たりのある弘人さんは連絡をくれって。
注意書きも書いたんだよ。悪戯はしないで下さいって。
でもこの一ヶ月、連絡は来るけど
悪戯で送ってくる奴ばっかりなんだよ。
もし、本物の兄貴から連絡をもらっても信じられるか不安で…」
――SNSが出来てからそういう悪い奴の話、絶えないよな。
人の気持ちをなんだと思ってるんだよ。
確かにそんな奴ばかりから連絡来てたら本物かなんて分からないよな。
もし、あれなら苗字を聞いてみたら良いんじゃないか?
お前の苗字は公表してないんだろう?
同じ苗字なら本物で確定なんじゃないか?
「そうか。その方法があった。」
こいつには助けられてばかりだ。
兄貴が見つかった折には、何か奢ってやろう。