第三話【本当の家族構成】
友人に提案を受けた俺はまず、自分の幼い頃のアルバムを見ることにした。
もしかすると奇跡的に
兄が写っているかもしれないと思ったからだ。
しかし、期待とは裏腹に兄の写真は一枚もなかった。
そこで第二の方法の市役所に行くことにした。
パスポートを作るためと役所の人間に伝えたが
何故か疑われてしまった。
未成年が一人でパスポートを作ることは出来ないらしい。
「修学旅行で海外に行くので、父親に戸籍謄本を取って来いと言われました」
そう伝えると役所の人は信じてくれて
戸籍謄本を貰うことが出来た。
三十分後に出来上がった戸籍謄本を見て俺は怒りを覚えた。
そこには俺の名前とは別に知らない名前があった。
島村弘人。生年月日は俺の三つ上。
間違いない。俺の兄だ。
俺の幼いころの記憶は正しかったのだ。
その兄は一体、どこに行った?
少なくとも俺が物心ついた頃には居なかった。
俺の親は何を隠している?
真実を知ってもなお、俺の頭は混乱していた。
自分ひとりじゃ整理することが出来なくなった俺は市役所に行くことを
薦めてくれた友人を呼びだすことにした。
「もしもし?お前、これから何か予定ある?」
――いや、何もないけど。
どうした?市役所にでも行ったのか?
「お前は本当に話が早いな。
そうなんだよ、ちょっと心の整理がつかなくて。
暇なら市役所に来てくれないか?」
――お前から電話なんて珍しいからな。
そんなに衝撃だったんだな。すぐ行くから待ってろ。
友人を待っている間、考えることもしんどくなった俺は
ただ、ボーっとすることしか出来なかった。
考えると俺は誰のことも信じられなくなるような気がして怖かった。
しばらくすると友人がやってきた。
物凄く、息を切らしながら。
本当に心配して飛んで来てくれたんだな。
こいつだけは何があっても信じたい。
「よう。来るのが想像以上に早かったな。」
――心の整理がつかないって言ってたからな。
早く行ってやらないとって思って。
おかげでめちゃくちゃ息が上がってるけどな(笑)
「助かるよ。」
――で?どうだったんだ?
心の整理がつかないってことは名前が書いてあったのか?
「知らない名前があった。三つ上で間違いなく兄貴だ。」
――マジかよ。
っていうことは親が嘘をついてるってことか。
でも何のために?
兄弟がいるなら普通に話すだろ?
「親の心理は分からない。
アルバムも見てみたが、兄貴は写っていなかった。
俺のみの写真ばかりで一枚もなかった。
兄貴の存在をよっぽど隠したかったんだろうな。
俺のことを裏切っていた奴の気持ちなんか知りたくもないが。」
――アルバムにも写ってないのかよ。
本当に用意周到だな。
親を問い詰めるのか?
「いや、聞かない。聞きたくもない。
自分で兄貴を探してみるよ。
今、どこで何しているか分からないけど、会ってみたい。」
――もし、ヤンキーになってたら?
お前のことを覚えてないって言われたら?
お前は耐えられるのか?
「それでも今の兄貴を俺は受け入れるつもりだよ。
親に捨てられたんだ。荒れてしまっても仕方ないだろう」
――お前が覚悟を決めて兄を探すって言ってるなら俺は何も言わない。
何かあったらまた相談して来いよ。
役に立てるか分からないけど。相談乗るくらいならタダだろう。
「サンキューな。また頼むわ。」