第一話【夢か、現実か。】
俺は島村孝弘。高校生だ。
最近、よく昔のことを思い出す。
俺が小さかった頃、よく遊んでいた男の子がいた。
俺より三つほど上の人で
毎日遊んで、寝て、ご飯も一緒に食べていた。
恐らく、俺の兄だろう。
なぜ曖昧かというと俺は物心ついた時から一人っ子として育てられた。
自分も一人っ子だと思って生きてきた。
だが、ある晩のこと。
昔の夢を見た。
俺が誰かと家で遊んでいる夢。
夢は起きた時には基本的に忘れているものだが、その夢は覚めてからも
しっかり覚えていた。
最初は変な夢だなと思っていたくらいだったが
その日は何故か、ずっとその夢が頭から離れなかった。
気になって仕方がなかった俺は、晩御飯の時に親に聞いてみた。
「変なことを聞くけど、俺には兄がいなかったか?
小さい頃によく遊んでいたはず…。」
――何を言ってる。
お前はずっと一人っ子だぞ。
小さい子は目に見えないものが視えると良く言うだろう。
お前の言う兄もそういうやつだろう。
「でも、ご飯も一緒に食べてたよ?」
――いや、いつも三人分しかなかった。
もう訳が分からなかった。
確かに親父の言う通り、幼かった俺はそういうたぐいの人を視て
兄だと思い込んだのかもしれない。
しかし、夢をきっかけに昔の記憶を鮮明に思い出してきていた俺には
納得のいかないことだらけだった。
ご飯は確実に四人分あり、皆でご飯を食べていた。
喧嘩をした時には母に怒られている姿も見ている。
あの怒り方は、他所様には出来ない怒り方だ。
小さい子は見えないものが視えると親父は言っていたが
ならば、母もその存在が視えていたということか?
母が不倫していて、そいつとの間にできた子供が家に来ていた?
いや、それはないか。
お腹が大きくなるから親父にもバレるだろう。
この家族は何かがおかしい。