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「と言うわけで、こちら遠坂さん。1人で来てるらしいから誘ってみた」

「遠坂玲子だよ。よろしくね」

いえい。と顔の横でピースをする。

対して風花は口を尖らせながら、

「か弱い女の子をお化け屋敷に1人で置いていって、自分はナンパですかー?」

と彼氏持ちみたいなことを言って詰め寄ってくる。

「1人でお化け屋敷を2周するような人間を、か弱いとは言わない」

言いながら、寄ってきた頭にチョップを食らわす。

「あー!あーっ!でぃーぶいだ!でぃーぶい!でぃーぶいでぃーだーっ!」

「今どきBlu-rayが主流なんじゃないか?」

「いやーまだまだDVDも負けてないよ」

なんのこっちゃ。

そんな私たちを眺めていた遠坂さんは楽しそうに、

「ふふ。仲良しだね」

それを聞いた風花は嬉しそうに、

「そうでしょう、そうでしょう!なんと言ったって付き合ってますから!」

「何を言ってるんだお前は」

私は、抱きついてくる風花を引き剥がしながら、遠坂さんに弁明する。

「冗談ですからね。間に受けないで下さい」

見ると、遠坂さんは目を丸くして慌てているところだった。

「えっ、あっ冗談かぁ。てっきり社交辞令を間に受けて、デートの邪魔しちゃったのかと思ったよ〜」

「鈴。面白いね、この人」

風花は遠坂さんの慌てぶりを気に入ったようだ。

「え〜!」

「ふふ。わたし、多々良風花って言います。鈴の幼馴染だよ。仲良くしようね、玲子さん」

「あっ。うん、よろしくね」

思いつきで誘ってみたけど、仲良くやれそうで良かった。

「じゃあ、どこ行きます?」

お互いの紹介も済んだので、次のアトラクションを決めようと声をあげる。

「どこにしよっか」

「ウォータースライダーとかオススメですよ」

「ぷっ。あはははははっ!」

ワイワイと遠坂さんと話していると、横で聞いていた風花が吹き出していた。変なものでも食べたか?

「あはははは。鈴がちゃんと敬語使ってるの気持ち悪いね!あはははは!」

我慢出来ないといった様子で、私の背中を叩いてくる。失礼なやつだな。

「依頼を受ける時とかは敬語だろうが」

チョップ。

「探偵モードの鈴はもっと偉そうな敬語だから、違和感すごいよ」

そもそも最後の依頼はいつだっけー。と風花。う、うるさいな。

「やりづらかったら敬語なんていいよ〜」

ほがらかに遠坂さんは言う。

「遠坂さんってのも固いし、玲子でいいよ。わたしも鈴ちゃんって呼びたいな」

「そうだそうだー」

風花が囃し立てる。お前は少しは敬え。

はあ。私としては敬語で問題ないのだが。

「じゃあ、玲子さん。敬語は慣れたら取ります」

「うん。鈴ちゃん」

「えー。にゃーにゃー」

不満気な風花が鳴いている。猫被りとでも言いたいのか?

ところでー、と玲子さん。

「探偵モード?って?」

「そういえば言ってなかったですね。実は私、探偵をやってるんですよ」

「自称ですけどねー」

自称言うな。一応、真面目にやってるんだぞ。

「玲子さんも何か事件とかあれば依頼して貰えれば、私が解決してみせますよ」

「えー!すごーい!」

玲子さんは興味を示してくれたみたいだ。

「と言っても、事件かぁ。うーん」

首を捻って考えてくれているが、いまいち心当たりがないらしい。

案外、この世は平和なんだろうか。

「やっぱり思いつかないや。ごめんね」

「あはは。別に大丈夫ですよ」

気を取り直して。

「今日は普通に遊びましょう」

「そうだね。どこ行こっか?」

「はいはーい。こことかどうー?」

行く場所の相談に戻った。今日はもう探偵はお休みだ。


「日も暮れてきたね」

3人で数カ所のアトラクションを回ったところで、遠坂さんが言った。

確かに空は暗くなり始めており、園内の街灯も点灯し始めている。見れば時刻は18時になろうかというところだった。

「パンフレットも見にくくなってきましたね。そろそろ帰りましょうか」

今日は一泊して明日も遊ぶ予定なので、そろそろいい時間ではないだろうか。宿もまだ決めてない訳だし。

そう思った私の提案は、風花によってすぐに否定された。

「ちっちっち。まだメインイベントが残ってるよ!鈴!玲子さん!」

子憎たらしく顔の前で指を振ったのち、鞄からパンフレットを取り出してペラペラとめくり、ページを広げて私たちの前に掲げてきた。そこにはこう書いてあった。

「『光と水が織りなす魅惑の世界!イルミネーション&プロジェクションマッピングショー』」

風花が元気に読み上げ、パンフレットを私に押しつけてぴょんぴょんと跳ね回っている。

「ね!ね!すごくない?!凄く綺麗なんだよ!わたし、これが見たくて来たんだよ!」

「まだ見ても無いのに、盛り上がりすぎじゃないか?」

少々呆れつつも渡されたパンフレットに載っている写真を見ると、なるほど確かに大規模なライトアップがされるようで期待するのも無理はない。

「わ〜。綺麗だね。これが見れるの?」

玲子さんの声も浮かれているように聞こえる。

「そうなんですよー!始まるのは19時半からだからもう少し後なんだけど」

どうやら通常の遊園地の営業が終わった後に、目玉イベントとして行う形のようだ。

「じゃあ早くご飯だけ食べちゃわないと!」

玲子さんも気合い十分と言ったところ。

「そうですね」

移動しながらたわいも無い雑談をする。

「何食べよっかなー。玲子さん食べたい物ってありますー?」

「うーん。えび天?」

「それジェットコースターの形がエビだからですか?」

「ふふふ。そうかも」

「じゃあわたしはコンニャクを……」

「遊園地のお化け屋敷にコンニャクはないだろ」

「イメージイメージ」

「ふふふ。イメージイメージ」

「えー。……イメージしたらぞわってした…。罠だ…。やめとけば良かった」

「あっはは!怖がりめー」

「鈴ちゃんお化け苦手なんだ?」

「そ、そんなことないぞ!」

「あはは」

すっかり玲子さんとも仲良くなれた気がする。今日は探偵にはなれなかったけれど、良い日だった。

一日の締めくくりに相応しい物を頼むぞ、イルミネーションショー。








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