プロローグ
「よし、課題終わり!」
本日GW初日の夕方、連休中の課題がめでたく全て完了した。
「って、全くめでたくなーい!」
そう、全然全くもって微塵もめでたくない。
ここが図書館で、私が課題を終わらせに来た真面目な学生ならめでたしめでたしではあるが。
この場所は図書館では無くて事務所だし、私は真面目な学生ではなく、女子高生探偵なのだ。
探偵だった祖父が他界し、その事務所を(半ば強引に)遺産相続して憧れの探偵活動を始めてから明日で一年になる。今までにやったことと言えば、ペットの猫探しと落とし物探しが数回だけ。町内の掲示板にチラシを貼ったり、公園で探偵営業をしたりしても、事務所は常に閑古鳥が鳴いている。とても良いことだけど、町内は平和そのもので犯罪性のある事件なんて私の記憶にある限り、一度としてない。
要するに暇である。
「どうしようかなー」
GWの残りを一体何をして待っていようか、と事務所をウロウロしながら考えていると、
ピロン
とスマホが鳴った。
見ると、案の定と言うか何というか、風花からのLINEだった。私にLINEを送ってくる奴なんて幼馴染の彼女か家族しかいない。
『依頼がありまーす』
依頼、と言う単語に一瞬心が躍りかけるが、すぐに思い直す。彼女が言う『依頼』とは殆どの場合、遊びの誘いなのだ。
『保田留市の地図を調べてくれませーんか』
『明日と明後日、わたしと一緒に調べに行きましょう』
ほら、このように。
依頼っぽい形は保っているけれど、結局は保田留市に遊びに行こうと言っているだけだ。
保田留市は隣県にある観光地で、連休で遊びに行くには丁度いい距離なのだ。
「まあいいけどね」
どうせ暇である。もし本当の依頼が来たとしてもまた猫探しだろう。
『引き受けた』
風花に返信し、片付けを始める。明日行くと言うなら家に帰って身支度をしないと。
帰り道、風花とLINEで予定を詰めながら呟く。
「何か事件とか起きないかな」
お爺ちゃんはどうやって探偵を続けていたんだろうか、と今更ながら疑問に思った。