おじいちゃんぷる。
「しゅああんあおああぁ」
私を呼ぶ。私を呼ぶ、恐らく、私を呼ぶ声が聞こえた。
「じゃえああおえーああぅううん」
あれ、あれはあれ? 私を呼んでるんだよね。きっと私を。
「ほあぅあいああああえぇあら」
たまに不安になってくる。あの人は私を呼んでいないんじゃないかと。
「あん、あん、あん、あん、あん、あーん」
ああ、あーああ、呼んでないらしい。
私はあの人から離れた。
「ふあー、もお、呼んでるよ、もお。呼んでるんだからへんじしなぉー」
私は振り向いた。
おじいちゃん。私はの名前はアンじゃないよ。
「あー……あー? あ、あー? なんて言ったあー? んあー」
おじいちゃんが歩き始めた。
「き、き、きこぇええん」
こちらへ、近づいてくる。
「あ、も、あ、き、も、きこぇええん、き、こおおおぉ」
足がぷるぷるだ。ズボンは履いてない。パンツも履いてない。履いてないおじいちゃん。セクスィー。
ぷるぷる。ぷるぷる。つま先。ぷるぷる。腰。ぷるぷる。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、ん」
おじいちゃんは、盲目だ。
おじいちゃんは、全裸だ。
おじいちゃんは、ぷるぷるだ。
「どこに、どこに、どこに、いる? あ、くせ。俺の手、湿布くせ」
自分の鼻を触りまくるおじいちゃん。鼻声だ。鼻をつまんでいるのだ。
「あ! ああああああ、息できないいいいういいい!! 助けてえええええええ!!! 息できないいいいいいいいい!!!!」
なにを叫んでいるのだ、うっとおしい。
私はおじいちゃんほ手首を掴んだ。
「私はここだよ。ちゃんと歩こうよ」