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new year's party(第二回利き文大会より)

作者: 夜桜 椋

記憶が正しければ、主人公の行動をより丁寧に描写しようと意識して書きました。

「店長、お先に失礼しますね」

 形式的に声をかけて店を出た。いつも死んだように寝ているから返事はないが、タイムカードは押したので問題はない。

 自転車に跨って、ペダルを踏む。途中で一気に楽になって、それから身体に当たる風が痛く感じはじめる。やはりマフラーを買うべきだろうか。そんなことを考えながら誰もいない坂を颯爽と下る。コンビニが目に入る。

 軽くブレーキをかけながらハンドルを曲げ、少し体を傾けると同時に重心を中心に保つ。駐輪スペースに入って一気にブレーキをかけた。キュと小さく音が鳴った。自転車が倒れる前に自転車から下りて、少し後輪を上げて、スタンドを立てた。

 自動ドアが開き、入店音が流れた。独りだけの店員が眠そうにいらっしゃいませと呟いた。私は彼を一瞥して真っすぐとビールコーナーに向かった。適当な数本を見繕ってレジへ向かう。

 「あの、おせちの予約をしていたものですけど」

 「あー、ええーと」

 店員は目をこすりながら奥へと入って行き、安っぽい重箱の入った袋を持ってきた。

 「あのー本当は身分証明的なのがいるんですけど、ここで予約してるの一人なんで、名前だけいいすか」

 「あ、えっと、後藤です」

 「あい、ありがとうございます。ビールと合わせて一万三千円になります」

 高いなぁと思いつつ私は財布を取りだした。そもそもこのためにバイトのシフトを増やしたんだ。いや、正確にはこれとブランドの福袋のために。財布のファスナーを開けてお札を四枚取り出し、カルトンに置く。

 「一万三千円ちょうどお預かりします、こちらレシートです」

 ご来店ありがとうございましたー。

 袋を前のかごに入れて、ハンドルを前に押す。スタンドが外れて一気に重たくなった。ハンドルを引き、ハンドルを曲げる。Uターンしたところで自転車に跨る。

 袋を注意しながらペダルに力を入れる。不安定だったバランスが一気に安定した。

 ハンドルを右に傾けて坂を下る。少しずつ勢いが増して袋が浮きそうになる。それを片手で押さえながら少しブレーキをかける。ヤバい、止まれるかな。少し恐怖を感じる。

 坂が平坦に近づき、勢いが落ち始める。ブレーキを強めてスピードを落とす。少しふらつく。おせちは大丈夫だろうか。

 アパートの駐輪場に自転車を止めた。自転車の鍵をかけ、袋を持って階段を上がった。途中でお隣の大学生とすれ違った。眠たそうだったが今から夜勤だろうか。

 かばんから部屋の鍵を取り出して差し込んだ。手首を捻るとガチャリと音がした。ドアを開いて中へ入った。

 部屋は暖かかった。電気を点けて、袋を冷蔵庫にそのまま突っ込んだ。上着を脱いでベッドに無造作に投げた。それから、自分も飛びこむ。眠たい。お風呂に入ってさっさと寝てしまおう。

 いやそれすらも面倒だ。もう今すぐ寝てしまおう。

 

 次の日、私は着信音で目を醒ました

 「ふぁい」

 『おっはよー、何してる?』

 「今起こされたところ」

 『そっかー、ごめんねー。ところでさ、大晦日って暇?グループライン見てくれたら分かるんだけど、今みんなで年越ししないかってなってて、それで美紗も最近彼氏と別れたじゃん?だから一緒にどうかなって』

 「ごめん、寝起きで全然わからない」

 『よ!う!は!一緒に年越ししようってこと!』

 「いいよ。私も暇だし。あっ小さめだけどお

せち買ったからそれ食べようよ」

 『いいじゃん、じゃあ私たちどん兵衛のそば買っていくね』

 「はーい。じゃあねー。あっ早めに来てくれたらうれしいな。ゆっくり準備したいし」

 『分かったー、朝からごめんね』


 ベッドから起きて、昨日入って無い分のお風呂に入った。ケースから服を取り出して着て、軽く化粧を済ませ携帯を弄る。年末はネタがないのかどうでもいいニュースばかりだ。一通り見終えるとバイトに向かった。

 相変わらず店長は寝ていた。私は制服に着替え、タイムカードを押した。お店に立つと丁度お店のドアが開いた。

 「いらっしゃいませー」

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