其の8 巡る四季と島の暮らし
其の8 巡る四季と島の暮らし
それから島には 四つの季節が順番に巡めぐるようになりました
そしていつの日からか島に住む人達は 季節の女王がそれぞれの季節を支配する塔のことを「四季の塔」と呼ぶようになり この島の外の人達は後に「四季の島の四季の塔」と呼ぶようになりました
島の人達は 変わる季節に合せて年々上手に暮らせるようになっていきました
春には 雪解け水を池に溜めて 夏の雨の少ない時に その水を畑に撒いたり 田んぼに引き込んで 稲を植えてお米を作ったりしました
夏には 夏の木の実や 野菜や果物がたくさん育ち 島の人達も すっかりと日に焼けて元気に過ごしました
子ども達は 暖かな川や海で遊び 大人達も海や川で魚や貝を捕りました
秋には 年々島の草木が変化していって 少しづつ採れるようになった 赤や紫色した野いちごを煮詰めて 甘酸っぱいジャムにしたり
秋の木の実を集めて壺に入れて蓄えて 必要な時に取り出してはパンやクッキーに混ぜて焼いたりして 野菜の採れない冬のための保存食にしました
冬には ウサギやシカの足跡を追って 弓矢で仕留めて 美味しいシチューを作って食べたり
塩漬けした肉を吊るして 冷たく乾いた北風に当てて 干し肉にしたりしました
剥ぎ取った毛皮は 寒い冬を乗り越えるための 暖かな服にしたり 他にも帽子や手袋や靴も作ったりしました
凍った湖では 氷に穴を開けて魚を釣り それも煮込んだり 油であげたりもして食べました
一度にたくさんの魚が捕れた時には これも塩をして干したり 外に吊るして凍らせて 食べたい時に解かして料理しました
そうして島の人達は 春 夏 秋 冬 の それぞれの季節の楽しさと厳しさを知っていったのでした
それは 人間だけではなく 虫や動物達もそうでした
しかし 自分で動くことのできない草や木々達は もっと大変なのでした
島の多くの植物達は いつも暖かな場所でなければ生きていけないからでした
寒さや 雪に耐えられない草や木は、次々に枯れていきました
しかし それと入れ替わって 四季を越こえられる草木が育っていきました
それは 四季の女王達が 風に乗せて運んできた季節の草木の種のおかげでした
そうして この島は新しく生まれ変わっていったのでした
季節が巡る程に 島は段々と有名になっていきました
そして この島の事は 四つの季節が巡る島
「四季の島」と呼ばれるようになりました
それからは この「四季の島」のようすを一目見ようと 多くの人達がやって来るようになりました
それはやはり 常夏の島々に暮らす周りの人達にとってこの島は 年々珍しい物や 珍しい事ばかりになっていったからでした
別の島々から遣って来た人達は この島の事を言いました
「春と呼ばれる季節には 穏やかで暖かな日が多く 周りの島々では見ることの無い 珍しい小さな花々が一斉に咲き広がり それは まるで魔法の国のような美しい景色なのですよ」
「暖かな春の日々は しなければ成ならない事がたくさんあっても 何だが眠くなって草原に寝転んで居るだけで 幸せな気持ちになるんだ」
この頃は ノンビリとしたい人達がこの島にやって来ては 島の至る所で何か好きなことをしていたり 何もしないでボーっとしていたりしました
夏は 常夏であった島の人達にとっては いつもの季節といった感じでしたから 最初の数年は 特別な想いは湧きませんでした
それでも周りの島の人達は 年々と年が過ぎるほどに 周りの島々とは少し違う植物達が生茂り始めたので その少し違った風景を見に来る人達がやって来たりしました
別の島の人達は言いました
「うちの島とは また違う暑さと 植物だね」
遊びに来た 別の島の子ども達は 花咲く丘で言いました
「珍しいムラサキ色のチョウチョが飛んでるよ!」
「本当だ なんてキレイなんだろう!」
遊びに来た別の島の子ども達は 親や友達と一緒に入った 村の近くの林の中で
木の幹に張り付いていたクワガタ虫を捕まえて言いました
「この茶色くて大きい 角の曲がったクワガタ虫も 見たこと無いよ!」
「本当だ 凄いな~」
「僕も探そう!」
こうして別の島の人達は 四季の島の夏も楽しみました
それに 島の人達も 何年も季節を巡る程に 今では短くなった夏が 特別な季節のような気持ちになっていったのでした
それで四季の島の子ども達も 海や川で泳いだりして 短い夏を遊び回りました
秋には 赤や黄色に染まっていく山や丘 それに枯れ草に覆われていく草原も見事でした
四季の島に来た人達は 目を輝かせて言いました
「なんてキレイなんだろう どうして赤や黄色に木々の葉が色を変えるのだろう」
そして この季節は 他の島の人達にとっては特に珍しい食べ物がたくさん取れるので 大勢の人達がそれをお目当てに島にやって来て 宿に止まり お腹いっぱいごちそうを食べて帰るのでした
秋の木の実やキノコは 島の外にも船に載せられて運ばれていき 周りの島の人達を喜ばせました
そしてなにより 島が白銀に染められる冬は ここに訪れる人達にとって 信じられない光景なのでした
それは 空からフワフワと降り注ぐ白い砂粒の様な小さなものが辺りに積もっただけなのに 島全体が1日で白く染まったりしたからでした
それは雪というのだと 島の人達は大陸の寒い所から来た人達に聞いていたので 始めの頃は島に来る人達にも教えてあげていました
そして 大陸から来た人達から教わって作った ソリを使って 丘の斜面を滑って楽しんだり
スノー・シューという木とロープで作った楕円形の道具を革の長靴に縛り付けて 雪原や山を歩き ウサギやシカを追ったり 凍った川や湖へ出掛けては 小さなドリルとノコギリで氷に穴を開けて そこから釣り糸を垂らしたり 網を仕掛けたりしては 魚を獲りしました
それらは どれもみな冬のごちそうでしたし 冬の楽しみでした
やがて 四季の島には ソリやスキーをする為に来る人達が増えていきました
それは 雪のある大陸からも 時折訪れる人がいるほどの人気でした
「この島には 本当に良い雪がたくさん積もる」
大陸からスキーを持って 雪の上を滑りにやって来る人達は 四季の島の人達にそう言いましたが 島の人達は 「良い雪」の意味は解りませんでした
なんでも 雪をよく知っている人達にとっては「魔法のように サラサラとした 最高の雪」なのだそうです
そして 特に寒い日に降る雪を「粉雪 パウダー・スノー」と言って喜んで 丘や山を登っては 雪煙を上げながら弧を描きながら勢良く滑るのでした
雪に覆われた四季の島では 尖った葉を持った数少ない常緑樹と呼ばれる木だけが緑色をしている他は 多くの草は枯れて木々は葉を落としていました
白銀の世界となった雪原では 空から降り注ぐ太陽の光を 雪の白が その透明な光を跳ね返していました
風に舞い上がる粉雪は 時にはキラキラと輝いて 光の柱を空中に現したり 時には激しい雪煙りとなり 辺りを揺らめく白いウ゛ェールで包み込んでしまい 歩くこともできなくなる事もありました
それは とても美しく それでいて厳しく そして何よりも神秘に満ちた光景でした
今っとなっては すっかりと有名になった この四季の島の冬も 始めの頃は この光景を見た人が自分の住んでいる常夏の島に戻って その目で見たこの島の冬の話しても 誰も信じてくれないほどでした
常夏の島々に住む人達にとっては それほどまでに凍てつく厳冬の中にある四季の島は 特別だったのです