其の4 王の誕生と季節の準備
其の4 王の誕生と季節の準備
塔から戻った彼の姿と 彼に連れられた季節の女王達を見た島の人達は 彼の言葉と女王達のことを信用しました
彼は貧乏でしたが 村の人達だけではなく島の人達にも 優しくて働き者で正直者であることが よく知られていたからでした
それに 彼は物事をよく知っていて 色々なことを深く考えることができたので 島の人達から一目置おかれていたのでした
だからこそ 彼は皆んなの王様になって欲しいと人々から頼まれてたのです
喜びの声が 島の人達から沸き起こっていきました!
「私達の島にも 王様が生まれる!」
「私達の島は 王国になる!」
「王様なら 立派なお城に住んでなくては!」
「立派なお城を 皆んなで作ろう!」
「私達の王様のために 島の人達の力を一つにしよう!!」
そう言って 島の人達は一致団結したのでした
それは この島に沢山の人が住んでからは 始めてのことなのでした
彼のもとへやって来た四人の季節の女王達は 彼と一緒に彼のボロ屋で暮らし始めました
何も無いような生活でしたが 女王達は不満を言うこともなければ 退屈する様子もなく毎日をすごしていました
この頃に彼は 季節の女王の周りには それぞれの季節の空気が漂っているのを知りました
春の女王の周りには 春の爽やかで暖かな空気が
夏の女王の周りには 夏の暑い少し湿った空気が
秋の女王の周りには 秋のカラリとして涼しい空気が
冬の女王の周りには 冬の冷たいモヤのかかった空気が
それぞれの季節の女王は それぞれの季節の空気に包まれていたのでした
それから3年掛けて 最初の城が この島の真ん中辺りにある大きな川の近くの 小高い丘の上に建てられました
そこからは西には 遠くに見える山々を背にして丘の上に建つ 大きな不思議な塔が 少し霞んではいましたが よく見えました
そうして王様となった彼は 出来上がったお城の中で 季節の女王と一緒に 家臣や家来となった者達を連れて 暮らし始めたのでした
そして王様は 次の仕事を島の人達に言い渡しました
それは 季節の女王からの たのまれ事であった 季節の女王達が暮らせる小さな城を 島の四隅に作ることでした
それから王様は 島の人達に向けて『おふれ』を立てました
そこには 長々と こう書いてありました
『あと7年すると この島は 季節というものが巡るようになります 春は すごしやすい季節で 夏は 今よりも少し熱くなり 秋は 涼しくなって沢山の恵みがあり 冬は 寒くて厳しい季節になり 白い雪というものが振り積り 水桶の水も固く凍ります 雪も凍った物も春になると解け水にもどりますが 今の内に冬に備えて家を建て替え 暖炉を作り 家を暖めるための薪を沢山用意しておきましょう』
常夏の島でずっと暮らしてきた人達は 書いてあることの意味が よく解りませんでした
それでも時間はあったので 解らないことは 城に出向いたり 役人や詳しい者に話を訊いたりして 季節の変化に備えていきました
それから5年掛かって 季節の女王が住むための 可愛らしい小さなお城が 島の四隅に建てられました
季節の女王は それぞれ 島の 東 西 南 北 にある 美しい小さなお城で それぞれ暮らしました
東のお城には 春の女王が
西のお城には 秋の女王が
南のお城には 夏の女王が
北のお城には 冬の女王が
そうして 四季が始まる残りの2年の間 季節の女王達は それぞれのお城で それぞれゆっくりと暮らしました
それに比べて 島の人達はその間もとても忙しく過ごしました
それは 厳しい冬を越すための家を建てたり 暖かな冬服の作り方を習って備えるためでした
常夏の島の人達は 始めは そうしたことを どのようにしたら良いか 全く解らなかったのですが
この島から遙か遠く 北に行ったところの四季のある大陸から
建築家や 大工や 服の職人を呼び寄せて 色々と教えてもらったのです
大陸から来てくれた人達は 常夏の島の暑さと 暖かな海と そして何より あの大きな塔に 大変驚きました
大陸から来た建築家や 大工の中には この塔に入ってみたいと言う者も 何人か居ました
王様は 塔には四季の女王以外は 「誰も決して入ってはならない」 と言っていましたので 誰も 入ることも近づくことさえも できませんでした
王様の命令で 塔の入り口には詰め所が建てれていて いつも5人の番兵が見張って居ましたので 誰も近づくこともありませんでした
しかし ある時 塔の見張りのスキを見て 扉を開けようとした 大陸から来た建築家の若者が居ました
若者は この素晴らしい塔の中を どうしても見たかったのです
若者は こっそりと扉に近づいて 扉の取っ手をグッと引きました しかし 扉は全く動きませんでした
若者は更に ドンと体ごと 扉を押してみました それでも 扉は全く動きませんでした
そうしている内に 彼は 見張りに見つかり 捕まってしまいました
見張りの男達は 言いました
「その扉は 誰にも開けることはできない 神様の作った塔の 神様が作った扉なんだからな」
捕まった若者は「では お前たちは どうして見張っているのだ? 見張りは要らないだろう!」と怒ったように言いました
すると見張りの男達の一人は「まったくそうかも知れない」と言い
別の男は「いや そうでないかも知れない」と言いました
捕まった若者は 見張りの男達が言うことに まったくバカらしくなってしまいました
王様は この捕まった建築家の若者に「二度と こんなことを しないのなら 許してあげよう」と言いました
若者は「申し訳ありません 二度と致しません」とあやまりました
王様は 若者のことを 許しました
ですから若者は 直ぐに自由になりました
それから この若者は 島の人達のための沢山の家々を建てるのに いっぱい働きました
おかげで島の人達は とても助かりました
そして時は流れて
王様が季節の女神と共に塔を下りてから 10年が過ぎようとしていました




