其の25 時と場を超えて・・・
其の25 時と場を超えて・・・
嵐のような光の洪水の中にいた冬の女王は さっき迄 春の女王が座っていた石の椅子を見ていました
そこには 一度散ったはずの緑色の光の粒が集まっていきました
そしてそれは 段々と固まっていき しだいに小さな人の形になっていったのでした
やがて 石の椅子の上には 緑色の可愛らしいドレスを来た 5さいぐらいの女の子が座っていました
「ああ・・・この子は・・・あの日の私と同じなんだ・・・・」
たった今 目の前に現れた 幼き春の女王の姿を見た冬の女王は この一瞬で全てを思い出しました
それは 自分がこの世界に来る前のこと・・・・
他の三人の季節の女王達とは違って 自分は始めて『この世界に生まれ出た』のだったということでした
それは 冬の女王が まだ『何者でも無かった世界』に居た時のことです
「私は あの世界に行きたい 私はあの世界の力になって 何か役にたちたい」
それは 冬の女王がこの世界に生まれ出る前 とてもとても長い時間 強く願っていたことでした
遥か遠くから この世界を見つづけているうちに もう ただ見ていることしかできない自分が 辛かったのでした
それから どれ程長く願っていたのか・・・・・
それは 幾百年でしたでしょうか・・・・・それとも幾千年・・・・いや もしかしたら幾万年も経っていたかも知れません・・・・
その間 どれ程多くの命が生まれ・・・・そして・・・・・死んでいったのでしょうか・・・・
しかし・・・・ある時 願いは聞き届けられたのです
「お前を あちらの世界に送り出してやろう」と!
それは 神の使者と名乗るものの 言葉でした
「本当ですか?・・・・本当に私を『あの世界に』行かせてくれるのですか!?」
すると使者は言いました
『この世界』に生まれ出るには 守らなければならない約束と役目があると・・・
それは「一つの星の 一つの島の 一つの季節になり そして 一つの身体に 一つの心を持ち 一千年の時の旅を越え 一つの命を全うすること」でした・・・・
使者が伝えた神様からの言葉を聞いた生まれ出る前の冬の女王・・・・まだ『冬の女王になる前の冬の女王』は
「私は必ず 約束を守ります お役目を果たします ですから どうか私を 『あの世界』へと送り出して下さい」と言ったのでした
すると使者は「お前は 冬と言う冷たく厳しい季節を作り出すことが 役目になる それにあちらの世界では小さな女の子となり これまで覚えている多くのことを忘れて行くことになるが それでも良いか?」と聴きました
冬の女王は「はい それで十分です」と答えました
この時 まだ冬の女王では無かった冬の女王は 『自分という想い』が生まれてから 初めて一つの命として『この世界』に生まれ出ることになったのでしたが
それは この世界に生まれ出る時には この約束さえも忘れそうになる程の幼い姿になって そして時に多くの命を奪う『冬』をもたらさなければならないという 重い使命を背負う覚悟をしたということなのでした
そして 願いは聞き届けられたのです
ああ・・・・あの日 あの時
他の3人の季節の女王達と一緒に 冬の女王は冬の女王として 幼くも小さな体で この世界に降り立ったのです・・・・・
集まった光から生まれ出た女の子は石の椅子に座ったまま 不思議そうに辺りを見回して居ました
すると 目の前に立って居た冬の女王の姿に やっと気がついたのでした
目が合った冬の女王は その小さな女の子の前に片ヒザをついて 挨拶をしました
「はじめまして 春の女王 私は冬の女王です」
春の女王と呼ばれた幼い女の子は小さくうなずいた後 石の椅子からトンと下りて すっくと立ち上がり
「はじめまして・・・美しき冬の女王・・・私は・・・私は春の女王です お互い力を合わせて 季節を巡らせていきましょう」と言ったのでした
そうなのです・・・・この女の子こそ 『こことは別の世界』から『この世界』に降り立った 新しい春の女王なのです
季節の女王達は 遥か遠い遠い昔から あらゆる世界の たくさんの場所に 生まれ 消え そしてまた生まれ・・・
数え切れない季節を巡らせてきたのです
冬の女王に向かって 気丈に振る舞っている春の女王の目には 涙が滲んでいまいした
春の女王は 本当はとても不安で 泣きそうになっていたのです・・・
冬の女王は 今の幼い春の女王の気持ちを知っていました
それは ついさっき迄は忘れていた記憶でしたけれど 今は つい昨日の事の様に思い出されていたからです
春の女王のその姿は 神様の使者から使命を受け その少しの記憶を残しただけで この世界に放り出されるようにして生まれた自分の時と 同じだったからでした
それでも 幼い春の女王は
「後はもう良いですよ 私はここで毎日 春のお祈りを致しますから」と言いました
冬の女王が見るその姿は あまりにも弱々しく それでいて健気なのでした
(そうだ・・・・今こそ・・・・)
冬の女王は思いました
自分がまだ幼い時から 年老いた春の女王が いつも自分との季節の引き継ぎの時にしてくれていたことを 今 目の前で孤独に耐えている この子にしてあげようと・・・・
冬の女王は 幼い春の女王の前に膝をついて その小さな体を抱きしめてあげたのでした・・・
抱きしめられた 幼い春の女王は 驚いた顔をして固まったように動かなくなりました
「ごめんね・・・冷たい体で・・・」
冬の女王は 小さく震えていた春の女王に そっと優しく言いました
すると 春の女王はブルブルと震えだしたので 冬の女王は自分の冷たさで 小さな春の女王が凍えてしまうと思い あわてて体を離そうとしました
その瞬間でした
小さな春の女王は 冬の女王の体を その小さな両腕で力いっぱい抱きしめたのです
「ああ・・・・・」
冬の女王は 胸に溢れた想いを声にしました
冬の女王に抱きしめられた 春の女王は その腕の中で何も言わずに泣きじゃくりました・・・
「そうだね・・・怖いよね・・・解っていても つらいよね・・・」冬の女王は そう言って春の女王の緑に輝く黒髪を 優しく優しく 撫でてあげました・・・
「大丈夫だよ・・・私がついてるよ・・・」
抱きしめられて 髪を撫でられている春の女王は いつ迄も いつ迄も 泣き止みませんでした・・・・
そうです・・・・・・
春の女王は たった今 生まれたばかり・・・・
それは
1000年もの 長い長い使命の始まりなのです
そして 年老いてた春の女王の様に 今の冬の女王がお役目を終えて
次の生まれ変わりの1000年季を迎えるのは
まだずっと後のことになるのです・・・
そう・・・・
それは遥か 750年も先のことなのでした・・・
おしまい
最後まで読んで頂きまして幸いです。
この作品の元を投稿した当時は、フィーチャーフォン(ガラケー)が使えてた頃で、これだけの長文をフィーチャーフォンに読み込ませて表示するとなると、ダウンロードにとても時間が掛り、スクロールの速度もとても遅くなったので、分割して読める様にした作品です。
元版も掲載してます。




