其の1 常夏の海に浮かぶ四季のある島
夢幻の雪原 と 幼き冬の女王
これは 一人の少女のタマシイが
遠い遠い 空の向こうの遥かかなた
そのまた向こうの ずっと向こうの
遥か遥か遠い世界から・・・
とある島へと降り立った時のお話です
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其の1 常夏の海に浮かぶ四季のある島
太陽が頭の真上を超えて行く 海に囲まれた小さな島がありました
その小さな島は 四季の島と呼ばれていて 一年の間に 春 夏 秋 冬 と四つの季節が移り変わるのでした
そんな四季の島は 今は春でした
港には この島の 春の美しい景色を見ようと たくさんの人達が 楽しそうに 船に乗ってやって来ます
この人達は 四季の島の周りにある 別の島々の人達がほとんどでしたが 大陸と呼ばれる遠い所から来る人達もいました
そしてそれは 春だけではなく 一年中そうなのでした
それは この島の風景や建物がとても美しく 食べ物も周りの島々とは違っていて とってもおいしいからなのでした
なぜなのでしょうか?
それは 周りの島々には 夏はあっても 春や秋や冬は 無いからなのです
他の島の人達は いつも 夏 を過しているのです
そうです この島の周りは いつも夏
常夏 なのです
この島は 特別な島 不思議な島
常夏の場所にあるのに 四季がある島なのでした
ですから 周りの島々に暮らす人達には この四季の島は とっても 珍しくて 楽しくて
何度来ても あきないのでした
「四季の島の 春は いいですね」島に来る人達は 言いました
「この島の 春は とっても いいですよ」島の人達は 言いました
冬の終わりの春の始め 木の幹の周りから雪が解け
陽だまりや 川辺から 緑が顔を出します
まだ雪が残る春先には 枯れ葉の下や 土の中や 木の皮すき間に隠れて じっとしていた虫や 冬眠していた動物たちが 外に出てきます
ダンゴムシや たくさんの羽虫たち
それに リスや カエルや 野ネズミや ヘビや クマも
長い冬の眠りからさめて お腹を空かせて 出てきます
普段は 水の流れのない沢にも 雪解け水が サラサラと流れていきます
凍っていた川は 氷が解けて ゴウゴウと茶色くにごって流れ出していきます
この頃は 島の人達は気持ちが和らいで ホッとします
それは もう少しで畑や田んぼを耕して 野菜や麦や米を作る事が出来るからです
寒さをしのぐために 暖炉にくべる 薪の心配も少なくなります
「あと少しで おいしい野菜が作れるようになるなあ・・・」
「家の周りの 雪かきも もうしなくても大丈夫だろう・・・」
島の人達は 待ち遠しいかった春に 喜びでいっぱいになります
雪がすっかりと無くなり暖かくなると 春のきれいな花も たくさん咲き始めます
赤色 桃色 むらさき色 水色 青色 白色 黄色 どれも色鮮やかな花々です
地面からも 木の枝にも 沼の水の上にだって たくさんの花々が 島じゅうをおおいます
花の蜜や花粉をもらいに チョウチョやハチ達が 忙しく飛び回ります
とっても気持ちのいい この季節は 本当はいそがしいのに 毎日がのんびりしてしまいます
花々を散りばめたカーペットのような草原の上で寝転んで 青い空を見上げているだけで 幸せな気持ちになります
「この島は 季節が移り変わっていいですね」島に来た人達は言いました
「それも季節の女王様たちのお陰です ありがたいことです」島の人達は言いました
「本当に この島は とくべつな島ですからね・・・」
訪れた人々も そう口々に言いました