最終決戦
扉の前にはHが立っていた。
「H、これは……お前が」
「ああ、僕だ」
Hは頬を吊り上げてにやにやと笑った。
「一体何を……」
「ふふっ、はははははっ!」
奴は高笑いし、僕を正面から見据えて言った。「復讐だ」
「復讐?」
「そうだ。一週間前、お前が感づいていた通り、僕は今、世界を裏から操っている。そして全世界に暗号を送り、打たせた。それも……、高校生にね」
「どうして高校生に……」
僕はHの言ってることが信じられなかった。でも、信じるしかなかった。やはり僕の予想は的中していたんだ。
「高校……、ああ、地獄の場所だ。僕の青春の舞台となるはずだった。Nと、僕の」
Hは拳を握りしめて続けた。
「だが、実際はどうだ。僕に春なんぞ訪れなかった。Sに邪魔され、Ⅲに邪魔され、挙句、僕は異常者の烙印を押された。完璧だった僕の人生は、高校に壊されたんだ。高校が……、僕を殺したんだ」
「だから高校生を……。そんなの逆恨みだ!」
「いや違うね。僕が正しい。僕のような被害者を増やさないためにも、皆を救ってやったんだ。高校から解放することでね」
駄目だ。もう手遅れだ。
「どうして……、暗号を打たせたんだ?」
「ああ……。高校時代、僕は暗号をステメに載せていただろう? Nはあれをたいそう気に入ってくれてね。彼女が暗号好きだというのがわかったんだ……。そこで僕の想いを暗号にし、全世界の高校生に打たせた。完成したら一斉に彼女に送るつもりだよ……。まだあと四十年ぐらいはかかるがね。世界を大不況に陥れたのも、その下準備さ……」
「くっ……くっそ……! 全部お前のせいで!」
「言っとくが、お前らにはこの機械作業を続けてもらう。一生僕の社畜となるんだよおっ……!」
Hはじりじりとこちらににじり寄ってきた。僕は後ずさることしかできない。捕まったら終わる。でも、こんな奴の下で働くのなんてごめんだ!
僕は壁に駆け寄り、窓を全開にした。ここは二階だ。飛び降りても死ぬことはない。一か八かっ……。
足をかけて、勢いよく飛び出した。
「はっはははははは! 無駄なことを!」
「……なっ!?」
降り立つとそこは現実ではなかった。一面に白い空間が広がり、まるで電脳世界のように暗号がぎっしりと羅列している。Hはいつの間にか目の前にいた。
「お前は逃げられない。ここは僕の世界だ。今の僕にはなんだってできる。あの苦境を乗り越えた僕は、究極の生物へと生まれ変わったんだ……!」
「何を訳のわからないことを……。お前はただの自己中だ!」
「そう言っていられるのも今のうちだ。僕に逆らったことを後悔させてやろう……! さあ、業務を放棄したお前にペナルティを与える! くらえっ!」
なんだ!? 何をされるんだ!? 減給か!?
「ネクストストップエンカウントッ! 一生僕の奴隷となれッ!」
うっ、あああああああっ!
ああ……、ああああ……。
視界が、歪む。