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悪役令嬢は男装の麗人  作者: violet
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二人の王太子

シルビアからの連絡を受け、町の入り口にはロイスが出迎えに来ていた。

ユークリッドの泊まっている宿で、打ち合わせのできる部屋を押さえたようだ。



誰もがロイスを初めて見た時は驚く。

女性と思い込む者が大半だが、男性と知っている者もいる。


マーベリックは情報で知っていたのだろう。

「王太子が女性同伴で視察に来たと思われても仕方ないな。

それほど美しいご婦人だ」

ロイスも誉められて、カーテシーで出迎える。

既に間違っているロイスである。

「王太子殿下には、初めてお目にかかります。

ロイス・レーベンズベルクであります」


「兄上、私は警備に戻ります」

「ご苦労であった」

確かに兄上と言った、と確認しながらマーベリックは自身の側近ダンディオンを見る。

戸惑っている、というのが正しいのだろう。

シルビアの剣技を側で見た時は、素晴らしいとさえ言っていたダンディオンが、ロイスには言葉を失っていた。


シルビアは、ユークリッドの警備を指揮した第2部隊長を連れて離れていく。

その後ろ姿を目で追うマーベリックは、わざとである。


「妹が気になられますか?」

ロイスのこの問いは2つの意味を持つ。

男装の女性が珍しいのか、女性として気になるのか?


マーベリックは、それには答えず。

「近いうちに、レーベンズベルク公爵家に正式な使者をたてるだろう」

その言葉には、ダンディオンも驚くが態度に出したりはしない。


クスクスとロイスは扇で口元を隠しながら笑う。

「過去にもそういう方がいらっしゃいましたが、早々に諦められましたの」

ユークリッドが婚約破棄を口にする度に、縁談の話がくるが、シルビアが知る前に潰される。


姉の間違いだろう、とダンディオンは思いたい。

ロイスに案内されて宿の廊下を進む。

結いあげた髪は、ドレスの共布で飾られている。

この兄妹はどうなっているのだ、何故にマーベリック殿下は受けいれているのだ。

自分が普通だと思うのに、この兄は美人過ぎて嫌悪感がないと思うことに罪悪感を感じる。


「殿下、お連れ致しました」

コンコンと部屋をノックして、ロイスが声をかけると、直ぐに扉は中から開かれた。

マーベリックが中に入ると、レーベンズベルク兄妹と同じブロンドの髪のユークリッドが立っていた。


「お越しいただき恐縮です。

私はユークリッド・ネイデール、ネイデール王国の王太子です」

ユークリッドが出した手に、マーベリックは手を重ねて握手する。

「マーベリック・セド・ワイズバーンだ。

この度の協力に感謝する」


ユークリッドがマーベリックを革張りの応接ソファーに案内する間に、ロイスが資料を揃えて持ってくる。

ロイスが侍従や事務官に指示をだす様を見て、ダンディオンは認識を新たにする。

この姿に騙されてはいけない。

ダンディオンは、盗賊捕獲で急遽作った資料をマーベリックに手渡す。


ロイスが片眉をあげ、その資料に注視する。

「先ほどの捕縛を既に資料にしているとは、さすがですわ」

ニッコリ笑って資料を受け取ると、ロイスは確認してユークリッドに渡す。


「それで生存している盗賊団の連行先のことだ」

ユークリッドもマーベリックも、駆け引きをしながら有利な条件を取り込もうとする。

それを補助するのが、側近達である。



中々侮れない王太子である、というのがマーベリックの感想だが、この男からシルビアを奪い取らねばならない。

この男は、自分の婚約者が盗賊退治という危険な場から帰還しても、(ねぎら)いの言葉さえないのだ。

たとえ婚約者でなくとも、国の為に戦った騎士に言葉もないという事に怒りを感じる。

隣国の王太子である自分を迎えに、側近を派遣しただけで、自分では何もしない。

こんな男を守る為に、シルビアは戦っているのか。

この男は、あの美しさを知らないのだ。

シルビアを認めようとしないから、見る事がないのだ。

この男が大事にしないなら、私が大事にして問題ないだろう。

マーベリックに自然と浮かぶ笑みに気づいて、ダンディオンに冷や汗がでる。



マーベリックとユークリッド、それぞれ王太子として教育をうけている二人。

マーベリックがシルビアを気に入っている、とユークリッドはいつ気づくのでしょう。


感想や誤字修正、いつもありがとうございます。


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[一言] シルビアの縁談はユークリッドが潰してるでOK?(笑)
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