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悪役令嬢は男装の麗人  作者: violet
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番外 華麗なる王太子妃4

マーベリックは、届いた書類を握りつぶしそうになった。

それは王都警備隊に新しく配属される人員の詳細である。

王都警備隊は、騎士学校の卒業生だけでなく、市民が剣技と学力の試験で合格すれば受け入れる常駐軍である。

デルタや多くの兵士がこの試験を受けて入隊している。


前職、ネイデール王国最高司令官。第1部隊、第2部隊を兼任した司令官である。

そんな男が、今回の試験を受けて王都警備隊配属を希望してきたのだ。

ヒューマ・アエルマイア。


ガツッ、椅子を蹴るマーベリックに、ダンディオンが仕方ないとばかりに蹴り倒された椅子を立てる。

「マーベリック殿下、嫉妬しても無駄ですよ。

シルビア様は浮気されるような方では、ありません」

分かっている、とマーベリックはダンディオンを睨む。

「だがな、俺とは違う絆があるんだ」


「僕には羨ましいぐらいです。

僕とマーベリック殿下に同じ絆があるでしょうか」

「分かっている」

あれは、命を預け合った者の繋がりだ。

「僕とマーベリック殿下に恋愛が成り立たないのと同じです」

マーベリックはダンディオンを(あき)れたように見る。

「分かっている、呼んでくれ。

それにしても、試験官は驚いたろうな。他とはレベルが違いすぎる」

はい、とダンディオンは答えてヒューマを呼ぶべく部屋を出て行った。





王都警備隊の隊長室でシルビアは、隊の再構成を組んでいた。

外の訓練場では、内番の兵士達が訓練をしており、今は怠けてカードをするような者はいない。

警備隊のデルタはともかく、第3部隊長のミッシェル・ドリトルが常にシルビアに付き従うようになっていた。


「そこにいる者、何用だ!」

ミッシェルが剣の柄に手をかける。


扉を開けて現れた人物に、シルビアがハハと笑う。

「遅かったな」


「ロイス様が離してくれませんでした。

さすがは兄妹、先読みされてました」

苦笑いしながらヒューマは、初めて会うデルタに自己紹介する。

「この度、入隊試験に合格して、王都警備隊に配属予定のヒューマ・アエルマイアです。

新兵ですので、よろしくお願いします」


挨拶されたデルタは、ヒューマを観察してため息をついた。

「どこが新兵だ。それだけの身体でよく言うよ」


「よく見ているなデルタ。アエルマイア殿はマーベリック殿下でさえ勝負は厳しいネイデール王国の軍人だ」

ミッシェルが言うのをシルビアが補足する。

「ネイデールでは1番だろう。司令官をしていたはずだ」

どうしてそんな人が入隊試験など、デルタだけでなくミッシェルでさえ思う。


「司令官を拝命してましたが、俺の一番はシルビア様の補佐官ですから」

言いながら、ヒューマはシルビアの後ろに立つ。


シルビアは楽しそうに口元を押さえた。

「それで、兄上とどんな取引をして自由の身になったのだ」

王のユークリッドではなく、宰相のロイスを言い切るシルビア。


「残念ながら1年間だけです。

戻れば総司令官になるようです。

先ほど王太子殿下には拝謁し、許可を得て来ました」

「兄上にこき使われるのか、大変だな。

では行くぞ」

シルビアが立ち上がると、その後ろにヒューマが続く。

「ミッシェル・ドリトル、軍総本部に先導してくれ」


ミッシェルの先導でシルビア、ヒューマ、デルタと続く一群は、皆の目を引く。

すれ違った侍女達は頬を染め、すぐに噂となるだろう。



どこの軍でも癒着はある。

国内からではなく、ネイデールから王太子妃を迎えたことに反感を持つ軍高官の存在。

女に指導権を渡したくない軍幹部。

マーベリックのように盗賊征伐に出る王族ばかりではない。

シルビアはマーベリックの即位までに一掃しようとしていた。

それは反感を産み、シルビアの危険が増すことになる。


ゾフィがいなくなったことで、側室として娘をマーベリックにあてがおうという貴族は少なくない。

どちらも許すシルビアではない。




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