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悪役令嬢は男装の麗人  作者: violet
66/70

番外 華麗なる王太子妃1

100万PV突破!

ありがとうございます!

完結後も読みに来てくださり、感謝、感激です。

ささやかなお礼として、番外編を追加しました。

シルビアを堪能してください。

violet


ワイズバーンに嫁いだシルビアが最初に動たことは、結婚祝いに軍司令官の地位を手に入れることだった。

シルビアがネイデール王国の司令官であったことは有名だが、嫁いできたばかりの他国の王族に軍の重要ポストを与えるのは多くの反対があった。


そして、考えられたのが王都を警備する部隊の大隊長だ。

名誉職として与えるにはちょうどいい、とされた。

司令官になると軍の機密を知ることが出来る、それは避けたい。

大隊長なら司令官に劣らない地位で、荒くれの王都警備隊をまとめるのは女には出来ないだろうから、実務は副官になるだろう、ちょうどいいではないか。

ワイズバーンの大臣達の中には、シルビアは王族としてお飾りの司令官に就いていたと認識があるのも多かった。


「最初から司令官を与えておけばよかった、と後悔することになるぞ。

俺は近衛の司令官辺りで城にいてくれる方が安心する」

反対する大臣達に、王太子は言い放った。

マーベリックにはシルビアを止めるという選択肢はない。

ガタンと席を立つと、シルビアに伝えるべく会議室を後にした。




「私は司令官をお強請(ねだ)りしたはずだぞ」

ソファに座り足を組んでいるシルビアは、お強請りをする人間の態度とは遠い。

「この国ではお前の実績はないんだ。仕方なかろう」

マーベリックは、シルビアを観察しながら説明する。

どちらかというと、シルビアは楽しそうだ。決して地位にこだわっていなかったのだろう。


「マーベリック、私の上官になる武官には良い胃薬を知っているぞ。父上が飲んでた。

お前から差し入れしておいた方がいいぞ」

言葉も言い終わらないうちに、シルビアは剣を持って立ち上がる。

「今日から、それは有効なんだろ?」

部屋から出ようとしたシルビアが戻って来て、マーベリックにキスをしてから出て行く。


ソファにもたれたマーベリックは口元を押さえた。

「俺、一生シルビアに勝てる気がしない、参った」




軍部に着くと、シルビアは王都警備隊の場所を確認する。

王太子妃が男装なのは知られているが、シルビアの顔を知っている者は少ない。本部では男装の見慣れない美人に注目が集まる。

男装しているとはいえ、こんな場所に王太子妃が一人で来るとは誰も思っていない。


「よう綺麗なねぇちゃん、こんなとこに用かい?」

王都警備隊本部の扉を開けると、振り返った男達がはやしたてる。王都警備隊の多くは下位貴族の次男、三男や平民である。

シルビアも、近衛のような統制や、盗賊退治で共闘した部隊のような規律を期待してはいなかった。

「まだ、勤務時間内だろ、訓練すべきじゃないか」

男達はカードゲームに興じていたのだ。

シルビアに返事もせずに男達はカードの続きをしようとして、シルビアの怒りをかった。

ダン!

シルビアがテーブルを蹴った。

「表に出ろ、稽古をつけてやる」


蹴られて机からカードが弾き飛んだ。

男達が立ち上がり、臨戦態勢になる。

「生意気な女だ! 俺たちが遊んでやるよ!」

シルビアが剣を抜くと、男達も手に剣を持つ。


練習場は騒乱となった。

カードをしていた5人とシルビア一人が対戦しているのだ。そこに人が集まって傍観しだした。

「すげぇな、あの女、速い」

シルビアは剣の鞘で男達を叩き、打ちのめしていた。

2人が倒れた所で、男が近づいて来た。

「お前らじゃ無理だ、やめろ」


「お前は?」

シルビアは剣を鞘にしまいながら男を見た。

「この隊の隊長のデルタ・ブエノスだ。

初めて見る顔だな、って男装の美人を初めてみるんだが。

女一人に男が5人って、恥さらしもいいところだ。悪かったな。

それにしてもいい腕だ、女にしておくには惜しい」

デルタと名乗った男はまだ20代前半だろうか、隊長の中では若いだろう。

「隊長なら部下の管理をしろ。

勤務時間内にゲームだと、知っててさせてたのか?」

「ああ、細かく言うほどのもんじゃないだろ」

シルビアの表情が嫌悪で変わるのを見て、デルタは笑いだす。

途端にシルビアが一歩駆け出した。

ガン!

デルタがシルビアの剣を避けながら、抜いた剣で受け止める。


「ほぉ、少しは出来るみたいだな」

シルビアが剣を構え直すのを、周りからヤジが飛ぶ。

「隊長は誰より強いんだ!

平民だからってバカにしやがって!」

騒ぎを聞きつけて、人がどんどん集まって来る。それは王都警備隊だけでなく、他軍からも来ている。


「面白いな」

ヤジを飛ばしていた男達は、横で(つぶや)いた人物に声も出せないほど驚いた。

その男は口元に人差し指を立てると、静かにするように(うなが)す。

そこにいたのは、マーベリック・ワイズバーン。この国の王太子でシルビアの夫だ。



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