シルビア・ワイズバーン
ワイズバーン王宮の正面玄関に1台の馬車が止まった。
4頭だてで豪華な装飾が施された馬車の扉が、ワイズバーン王国軍第1部隊長、ヒューマ・アエルマイアの手で開かれる。
馬車を護衛するのは、第1部隊から選ばれた精鋭騎士達。
迎えるのは、ワイズバーン王国軍を率いる王太子マーベリック・セド・ワイズバーン。
軍司令官の正装に身を包み、開いた馬車の扉の前に立ち、右手を差し出す。
その手に白い手袋の手が乗せられる。
豊かなブロンドが陽を浴びて輝き、いくつもの勲章が胸に飾られ、ネイデール王国司令官の正装のシルビアが馬車から降りてくる。
「来てやったぞ」
シルビアはマーベリックの腕に手を回すことなく、肩を並べて歩き出す。
出迎えに並んでいる重鎮達の多くは、シルビアを初めて見る者達である。息を飲みシルビアと王太子を見つめている。
美人だが軍服を着ているぞ、話に聞いていたが雰囲気まで軍人のものだぞ。
小さな声で話していても聞こえてくる。
「声が小さい!」
シルビアが歩みを止めずに大きな声をだす。
「言いたいことがあるなら、はっきり言えばいい」
シルビアの噂話をしていた男は怒っているのであろう、顔を真っ赤にして怒鳴り返す。
「偉そうに、図に乗るな!」
シルビアの歩みが止まり、振り返る。
「偉いんだよ、私は。
3日後には王太子妃だからな」
ニヤリと口元に笑みを浮かべるシルビア。
男の方は言葉に詰まり、恥をかかされたとシルビアを睨んでいるが、気にも留めずにシルビアは通り過ぎる。
「かっこいいな、惚れ直すぞ」
マーベリックが面白そうに、シルビアを見つめる。
「当然だ。それよりあの男、状況がよめていないな。無能はいらない」
「無能なりに使うのが、私の役目だ」
マーベリックが苦笑いする。
「だが、私のシルビアを貶した事は許せないな」
颯爽と歩く二人は、恋人同士というより同志と言うべき雰囲気である。
「シルビア様、カッコいい」
少し離れたところから、ソーニャが目をキラキラさせて見ていた。
その日、王宮から白い鳩が大量に放され、青空に白い翼が舞った。
レーベンズベルク公爵に手を取られ、花嫁が赤い絨毯の上を進む。
その先にいる花婿は、花嫁の美しさに魂を吸い取られるようだった。
真っ白のウェディングドレスの花嫁は、誰よりも美しい。
沢山の人々に祝福され、ワイズバーン王国王太子は妃を迎えた。
父親から王太子に手渡された花嫁は、花婿に囁く。
「幸せにしてあげるよ」
そう言って、微笑む。
お読みくださりありがとうございました。
最後まで、書くことが出来たのも、読みにきてくださる沢山の方のおかげです。
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violet




