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悪役令嬢は男装の麗人  作者: violet
60/70

終演

レフリー・タナーという名前の役者は、姿を消していた。

贔屓筋のご婦人方にも告げず、急に姿が見えなくなったらしい。その夜の公演はレフリーが出ない演目に変えられていた。


シルビアがクララを不敬罪で捕らえ、情報漏洩の件を尋問しようとした矢先の事だった。

だが、ロダン・グレイロードとクララを擁護していた男性達は、王太子の結婚という2国間行事を妨害しようとした、という事で国家反逆罪を被せることが出来た。




「仕方ないな」

シルビアも情報漏洩や諜報の立件が難しいことは分かっている。クララが集めた情報も、役者に流れた情報も確認がとれている。クララが得た情報は機密に属する程でもなかった。

そうなると、自国の情報が流れています、と公にする必要はない。

他の罪で処理する時に情報漏洩の罪状も含むことになる。


「役者は見張らせていたのだが、後手に回ってしまった」

マーベリックは周到な準備をしていたはずだが、優秀な諜報員だったというべきか。



シルビアとマーベリックは、王宮の裏手にある庭園に来ていた。

この場所をシルビアが気に入っているからだ。

少し離れたところから、ヒューマとダンディオンが警護に付いている。


太い幹に(もた)れて、シルビアが枝の葉に手を添える。葉の揺れる音が耳に気持ちいい。

「あれほどの諜報員を使える人物は、そう多くない。例えばロイス殿とか」

そこを王のユークリッドではなく、ロイスと言うところがよく分かっているマーベリックだ。

「結果的に、不穏分子を洗い出し処罰できた。結婚式までには処理しておく」


「明日には帰る」

シルビアが弾いた枝がマーベリックの頬をかすめる。

次に来るのは結婚式だ。


「ソーニャも母上も寂しがる、式より早めに来てくれるとありがたい」

「お前は?」

「私が一番寂しいさ」

よくできました、とばかりにシルビアがキスをする。


「今度はギリギリまで兄上が家を出してくれないと思う。準備もせねばならないし」

クスクスとシルビアが笑うのは、ロイスを思い出しているのだろう。



翌朝、シルビアとヒューマの馬が王宮を駆けだした。向かうは母国。


国ではロイスが待ちわびていた。


早く帰れ、と文をだしても帰ってこない。

来月には結婚式だというのに、シルビアの準備は進んでいないのだ。本人が不在でウェディングドレスも最終調整が出来ない。

他国に嫁ぐというのに、王族の儀式も出来ない。


軍ではシルビアとヒューマの不在は大きな支障であった。何より、シルビアの正式な退官式が出来ない。


ロイスの機嫌が悪く、ユークリッドが八つ当たりされていた。

「お前は、また女を連れ込んだな! この忙しい時に」

机の上に山ほど書類を置かれたユークリッドは、何故バレた、とばかりにロイスを窺う。

まるで浮気が妻にバレた夫のようである。


「本気でもないなら、女の子が可哀そうだ。やめておけ」

ロイスが溜息ついて、ユークリッドを見る。

「シルビアがいなくて寂しいから、なんて言うなよ。自業自得だ」

ユークリッドがロイスから目をそらす。

「もうお前を怒ってくれるシルビアはいない」



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― 新着の感想 ―
[一言] ユークリッド…女に狂う(笑) ロイスにも相手にされなくなったらもう終わるぞ?ww
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