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悪役令嬢は男装の麗人  作者: violet
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シルビアとマーベリック

こいつの頭の中を見たい。

蹴られても、平気そうなマーベリックに、シルビアは苛立つ。

「お前の頭は大丈夫か?」


「大丈夫なはずないだろう? シルビアに出会ってから気になって仕方ない」

一気に距離を詰めて、肩が寄せられる。

「近い!」

シルビアがマーベリックの肩を押しやるが、びくともしない。

「お前、仕事残ってるんだろう!」

夕闇に浮かぶシルエットは、男女のカップルに見えない。シルビアが男装だからだ。


「ごめん、焦ってしまった。好きになった女性を妻に出来るのは、王太子の身分で恵まれていると思っている。

でも心配なんだ。シルビアは綺麗だから」

そっと距離をとって、大事そうにシルビアの頬に手を添える。


「バカだな。私はお前の顔が好きなんだ。ちゃんと嫁いでくるから」

面食い王族の一員のシルビアである。

こんなに好き好き、と来ると情が湧くのは仕方ない。誰だって、自分を好きな人には好感を持つ。

「ワイズバーンの王太子といえば、文武に秀でて、国民を大事にする優秀な王太子と聞いていた」

シルビアも近隣諸国の情報には気を付けている。

軍人であるシルビアにとって、争いが起こった時に少しでも優位に立つために、情報は最も大切な物だ。


「私も、そうだと思っていたよ。これからも、周りの期待に応える王族であり続ける。

だが、君の事だけは別なんだ。自分でも驚いているよ」

緩やかな風に木の葉が揺れ、その音さえ心地いい。マーベリックの言葉は、シルビアの中に浸透していく。


「いつもプレゼントありがとう。レーベンズベルクの自室が花に埋もれたけど、嬉しかった」

少し照れた表情でシルビアが言うのを、マーベリックは眩しく見る。

前の婚約者のユークリッドは、シルビアにプレゼントもエスコートもしなかった。

他の令嬢を連れて歩く姿を何度も見た。


「喜んでもらえてよかった。私がシルビアにプレセントしたかったのだよ」

そろそろ執務にもどるよ、とマーベリックが立ち上がる。

「今は護衛が離れているようだな。一緒に室内に戻ろう」

マーベリックが差し出す腕にシルビアが腕を回す。


「シルビアが綺麗だと言ったのは、姿形だけではない。剣技を見た時は舞姫かと思った。少し頑固な事も知っている。不正が嫌いな事も知っている。

だから、私はシルビアの前だけは誠実であることを誓うよ。

けれど、王太子の仕事の時は許してほしい」

マーベリックの言葉をじっと聞いていたシルビアは、腕をほどき、マーベリックの首に手を回す。


そっと重ねた唇が、許す、と動く。





ヒューマとダンディオンは馬を駆って、王都の中心部になる酒場に来ていた。

ダンディオンは王宮を出る前に、ヒューマとした会話を思い出していた。


劇場で手渡された、そう言ってヒューマが見せた紙には、時間と場所が書かれていた。

『後で会いましょう』


「ずいぶん、場慣れした令嬢のようです。本当に伯爵令嬢ですか?」

「間違いなく。ただ、複数の男性と付き合いがある」

ダンディオンが皆を言わなくとも、ヒューマには分かったようだ。

「王太子自らが収集に乗り出す程の、情報が集まるということですか?」

ヒューマの問いかけに、ダンディオンは答えなかったが、ヒューマ自身が答えを必要としていなかったろう。



まだ夕方というのに、酒場の喧噪は大きかった。昼から飲んでいるであろう男達が騒いでいるからだ。

こんな所に貴族令嬢が来るのか、と思ったが、贔屓の役者がいるんだった、と思い直すヒューマ。


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― 新着の感想 ―
[一言] どうこう言っても満更じゃないんだねー(笑) タフなマーベリックに調子が狂いつつも好意は寄せるわなー。 面食いだしww
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