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悪役令嬢は男装の麗人  作者: violet
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シルビアの仕返し

シルビアがレーベンズベルク公爵邸に戻ったのは、すでに深夜になろうかという時間だった。


部屋に入ると、ドライフラワーから生花まで花に埋もれていた。

「ワイズバーン王国王太子殿下より、毎日お花が届いてます」

侍女が、花の説明をする。

「使者の方に、シルビア様は遠征に出られているとお伝えしたのですが、お花が止むことはありませんでした。シルビア様に御見せするまではと、古くなった花はドライフラワーにしてあります」


「そうか、ありがとう。もう、下がって寝なさい」

シルビアは侍女を労うと、ソファーに上着を投げ掛けた。


「あいつバカか? 私に花だと? ワイズバーンの情報網で私がガイメル辺境伯領に行っていると知っているだろうに」

シルビアは花を一輪手に取る。

「花か、バカだな」


長い間ユークリッドの婚約者だったが、プレゼントなんてなかった、お互いにだが。まぁ、花ぐらいなら浪費ということもないか。これが宝石とかだったら、マーベリックを殴りに行くとこだった。


 『世話をする侍女の仕事が増えるから、もう花はいらない』

 その夜、シルビアがマーベリックに書いた手紙だ。

 そしてサインを入れる。マーベリックの顔を思い浮かべてクスリと笑みが浮かぶ。

 『花をありがとう、シルビア』





 シルビアが帰っても、王の執務室の灯りは消えない。

 「ロイス、ちょっと寝たい」

 「もうお肌がボロボロですよ。貴方に付き合っているのは私です。貴方を置いて私が帰りましょうか?」

 「ごめん、もう言わないから、書類手伝ってください」

 ユークリッドが泣き言をいいながら、書類にサインをしている。

 王位継承、人事刷新、辺境伯取り潰し、謀反制圧の処刑、軍の遠征、おまけにシルビアがワイズバーンとの情報交換の書類と軍部編制の書類を置いていった。

 メイヤーは本人の同意なく、宰相秘書官になっており、同じ部屋で書類と格闘している。

 ロイスが有能な人員に固執したために、執務室の人数は少ない。




 ここは天国か、いつの間にか机に突っ伏して寝ていたユークリッドが目覚めて思った事である。

窓からは朝日が注している。

 その光の中に、ほとんど白に近い淡いピンクのドレスを着た美しい令嬢がいる。豊かなブロンドには宝石ではなく花が飾られている。あれは、何の花だろう?美しいな、と覚醒しない頭で思う。

 ロイスのようなきつい化粧ではなく、薄っすらと紅だけか? ロイスに聞かれたら殺される、ような事を思いながら令嬢に見とれる。新緑のような緑の瞳に癒されるようだ。

 「おい、ユーク差し入れだ」

 ロイスの言葉に反応しながら、空腹を思い出す。侍女か? あんな美女はいないぞと、記憶をたどる。

 立ち姿も美しい、欠点がないな。名前を聞くぞ、と身体を起こす。


 「家には父上もいないからな。ここに食べに来た」

 それで差し入れ持ってきた、と美女の声に聞き覚えがある。

 まさか、ドレスだぞ? この美しい令嬢がシルビアだと?

たしかにシルビアの顔だ。


 「どうだ?逃がした魚は大きかろう?」

 ネイデール王家は間違いなく面食いなのだ。シルビア自身もユークリッドの顔が気に入っていた。ユークリッドも連れていた女性は、全員見目麗しかった。

 そこをシルビアは突いてきたのだ。


「お前には、2度婚約破棄を言われた。やられたらやり返すのが性分でね」

貸したまままで、この国を出るのは心残りになるからね。

「ドレスや容姿のみで、私を決めつけるなら後悔するがいい。それさえ、分からなかった自分を後悔するがいい。」



眩しい、シルビアの言いたいことは理解できる。いつも、シルビアは正しい。それを羨む自分にはシルビアは眩しすぎる

「ああそうだ。シルビアを見てなかったさ。こんなに綺麗だったのに。徹夜の身体にこれはきつすぎる。自分が情けなさすぎる」

辛いから止めてくれ、とユークリッドは言いたい。


「この花はマーベリックのプレゼントだ。似合うだろう?」

 シルビアが髪に挿している花に手を添える。その姿さえ、麗しい。


 ロイスでさえ、あれほど美しいのだ、妹のシルビアは当然だというのを考えないようにしていた。卑屈な自分が、シルビアを遠ざけた。男装の時だって、綺麗だったのだ。

ユークリッドの瞳にシルビアが映しだされる。

 ああ、後悔しているさ。

 シルビアが司令官に着いた時に、自分も第1部隊司令官として軍を気にかけていたら、シルビアに任せきりになっていなければ、違ったろう。

 自分はシルビアを失ったのだ、自分の行いは自分に返ってくる。婚約破棄を軽い気持ちで口にしていた。周りを巻き込んで、シルビアを傷つけたろう。

 「奇麗だ。ドレス姿で思い知らされた」

 「思い知ったか?」

 したり顔のシルビアに、頷くしかない。



 ドン、シルビアが差し入れを机に置く。

「朝食だ、ありがたく思え。兄上のついでだ」

 シルビアが作ったのか、パンにハムと野菜を大雑把に挟んであるのを見ると笑えてきた。失くしたものは大きすぎた。気づかされないと分からない自分のバカさ加減に笑うしかない。

 



シルビアやりました~。これでスッキリ嫁いでいけるかな。

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― 新着の感想 ―
[一言] やりましたね〜〜〜!!! あぁ、スッキリしたっ\(^ω^)/ シルビア格好いいです。満足っ(^ω^)
[一言] まさに直接的なざまぁっすね(笑) 当分はショックでしょうねww
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