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悪役令嬢は男装の麗人  作者: violet
40/70

辺境伯

残酷な表現があるので、お気を付けください。

シルビア自身の手で復讐の第2弾は過激になっています。

 第3部隊長の言葉通り、第3部隊の活躍は目を見張るものであった。

 第1部隊が精鋭であることは間違いないが、第3部隊も引けを取っていなかった。第3部隊から第1部隊に昇格するには貴族が有利であった。平民であるが為に第1部隊に昇格できない精鋭が数多くいるのだ。


 メイヤーは頭の中に入れた城の地図を頼りに、辺境伯の居場所を確認していく。戦闘準備に入っているからには、ゆっくり寝室にいるとは考えにくい。

 まさか、こちらがこれ程早く反撃体制になっているとは、思っていなかったろう。


 あちらこちらで討ち合いの音が聞こえる。

 辺境伯の私設軍も国境の緊張が無くなって等しく、盗賊退治にも参加しなかった。 実践がないように思えたが傭兵が多く、国軍も苦戦せざるをえなかった。


「シルビア様」

 呼ばれた方を見ると、廊下の扉を確認していた兵士達が一つの扉を包囲している。その兵をかきわけてシルビアが部屋の中に入って行くと、男を取り囲むように数人の騎士がいる。

 小さな灯りの薄暗い部屋には、見慣れた顔があった。 元第2部隊長トニー・ガイメル、探し求めていた人物である。

「久しいな。髪は少し伸びたか」

 剃髪され、街の柱に全裸で縛り付けられたことを、シルビアは思い出させるように言う。


 暗闇の中から飛び掛かって来たのは第1部隊の兵士なのだろう。シルビアと同行していた第1部隊の兵士が顔をゆがめながら剣を討ち止める。

「私はシルビア・レーベンズベルク第2司令官だ。貴君達に命令した王は幽閉となった。王太子殿下が即位され、我々が正規軍となった。投降せよ!」

 シルビアが声をあげる。


「嘘だ! そいつの言葉を信じるな!」

元とはいえ、部隊長でありながら兵士の後ろに隠れるようにして叫ぶトニー・ガイメル。

近衛隊長の美しい顔は、暗い欲望で醜く歪んでいる。


「投降しないものは、賊軍として討ち取る」

 シルビアが片手を挙げると、背後から数人の兵士が前に出る。

 その顔を見て、投降する騎士が剣を降ろす。同じ第1部隊の騎士を見て、シルビアの言葉を真実と悟ったのだろう。

 王の命令を受け、国の為に辺境伯領に来た騎士達だ。シルビアとて忠義の騎士を失くしたくはない。


 それでも抵抗する騎士と、シルビア側の騎士との討ち合いが始まる。

 そしてシルビアが目指すのは、トニー・ガイメル。シルビアの細い剣がトニー・ガイメルの頬をかすめる。

「逃がすわけないだろう?」

 ニヤリと笑うシルビアは、残酷な笑みを浮かべる。

「辺境伯はどこだ?」

 シルビアの剣は、深くない傷を腕につける。足に腰に顔に、傷が増えていく。まるでネズミを甚振(いたぶ)る猫のように。



「2階の正面玄関の上の部屋だ」

 身体中が傷だらけになって、元第2部隊長ははいた。


「一番高い塔から逆さに吊り下げろ」

 シルビアが部下に、連れていけと命じる。引きずられていく男に最終宣告をする。

「生きていなくとも、3日後には引き上げてあげるよ」




 正面玄関の上の部屋で辺境伯が待っていた。それは覚悟を決めた者の顔をしており、息子のトニー・ガイメルと比べようもない風格があった。

 このような人物でも、家名を守る為に息子の罪を隠蔽するような過ちを犯すのだ。

 第3部隊長イーサン・ナダルがシルビアの前に進み出る。

「どうか、ここは俺に指示を」

 シルビアは頷くと、第3部隊長は剣を振り上げ、突進した。


 シルビアは先攻で突入し、トニー・ガイメルの一戦で疲労していると第3部隊長は確信していたのだ。 辺境伯は老齢とはいえ、剣技で名を馳せた人物である。

 老いたとはいえ、辺境伯の腕を見くびってはならない。




 ヒューマがシルビアの元に戻った時には、全てが終わっていた。


 シルビアは新王に急使を送る。

『ガイメル辺境伯、討ち取る』

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 第3部隊長に関しては文字すら勿体なかったですねww
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