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悪役令嬢は男装の麗人  作者: violet
29/70

刑執行

ヒィイ!

若い女性の悲鳴が庭園に響いている。

王女を助けようとする警護や侍女を、王太子マーベリックが止めている。


「シルビア、そのように育てたのは親である私どもの責任であります」

泣きながら王妃がシルビアに取りすがる。

「全くもってその通りです。

それでも自分で判断が出来ない年ではありません。

善悪も分からないとは王族として失格です」


ソーニャは王宮の庭園で、侍女や警備の前で公開処刑されていた。

王女の悲鳴を聞いて、さらに人が集まってきている。

それでも、王太子と率いる騎士団が人々を押し止めているため、刑は続行されていた。


「殿下、見つけました」

人垣をかき分けてダンディオンが、小さな包みをマーベリックに手渡した。

お茶会に出席する為に王女は侍女や警備を連れてきているので、自室は手薄になっていた。

そこを王太子の指示でダンディオン率いる一軍が、お茶の捜索に乗り込んだのだ。

「早かったな」

「シルビア様がご指摘された所にありました」

侍女姿で王女の部屋に入っていたシルビアは、王女の言動から重要な物の保管場所を探っていたのだ。

シルビアが目星をつけたうちの一か所で見つけたらしい。


「王妃様と話をしていたら、数を忘れたな。

36回だったか」

シルビアが手を止めると、泣きながらソーニャが叫ぶ。

「違う、45回よ!こんなこと私にして覚えておきなさいよ!」


シルビアは、ソーニャ王女を抱き上げ、うつ伏せにして膝に乗せていた。

「100回までに改心できそうにありませんね」

パーン!

大勢の前での、公開尻叩き100回の刑。

「いったーい!」

きゃー、ひいー!王女の叫び声は止まない。


パン!

「47回、手では甘いようだな。ヒューマ、鞭を」

シルビアは、ソーニャを捕まえている手を緩めず、後ろに控えるヒューマに声をかける。

「ごめんなさい!!」

ソーニャの顔は涙や鼻水、もろもろでボロボロになっている。

それを沢山の人の前に、(さら)されているのだ。

「もうしません!」

パン!

「48回、それで、お茶はどうやって手に入れたんだ?」

パン!

「お腹を壊す程度と言ったな?それは誰が言った?

答えられないか?

やはり鞭がいるか。

32回目からだったな」

ニヤリとシルビアが笑う。


「減ってる!!

サンド侯爵令嬢よ!」

その名前が出て、やはりと思うのはシルビアだけではない。マーベリックもだ。

「ソーニャ、間違いないのですか?」

王妃はマーベリックに支えられながら、ソーニャを見ていた。


「ごめんなさい・・

お腹が痛くなるだけだからって、それでこの国に居たくないって逃げだせばいい、って」

「その証拠はあるのか?」

多分、この王女は実行犯にされたのだろうと思いながら、シルビアが確認する。

「証拠?」

「お前は使い捨てにされたのだ」

マーベリックが妹の不甲斐(ふがい)なさに耐えきれず、吐き捨てるように言う。


「私は王女なのよー!」

泣きながらソーニャが叫ぶ。

「では、王女の責務はなんだ?

友好国の王族の姫であり、軍幹部である私に毒を盛る事の意味も分からないのか!」

シルビアの叱咤(しった)に、ソーニャの肩がビクンと跳ねる。

「あ!

ああ!!」


これだけの見物人の前で、シルビアに毒を盛ったことを暴露され、例えシルビアが許してもソーニャはさらに処罰がされるだろう。

ネイデール王国に伏せて処理する事は不可能になった。

そして国内でも、シルビアが寝付いたのが王女に毒を盛られたからと、あっという間に広がるだろう。


ソーニャは、ちょっとお腹崩すだけなら、と軽い気持ちでした事は軽はずみでは済まない事だと気づくのは遅かった。

「ごめんなさい」



シルビアがソーニャに処罰を終えるのを待って、王妃は王女を部屋に監禁するように指示して、侍女に支えられながら部屋に戻って行った。



沢山の見学者も仕事に戻っていくようだ。シルビアはマーベリックに聞く。

「あったか?」

「ああ」

お茶の入った小袋を見せて、マーベリックがシルビアの側に行く。

「証拠がないとはいえ、これだけの見物人の前で名前を出されたサンド侯爵はどうでるかな?

サンド侯爵の情報が欲しい。狙われるのは私だからな」

「シルビア、頼もしいな」

マーベリックが苦笑いする。



「シルビア様!」

いつの間にか、令嬢達が庭園に来ている。

「よくご無事で」

「毒を盛られたとお聞きしました」

話はすでに広まっているらしい。

心配して来たのだろう。


「ご令嬢方、ありがとう。

もう大丈夫ですから」

令嬢達に囲まれてシルビアは愛想笑いをしている。


マーベリックも令嬢達に抵抗できず、シルビアを譲るしかなかった。


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― 新着の感想 ―
[一言] さてさて次はサンド侯爵っすね! どんな手を見せて戴けるのかな?(笑)
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