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悪役令嬢は男装の麗人  作者: violet
24/70

歩み寄り

「入っていいかな?」

夜になって、シルビアを訪ねてきたのはマーベリックだった。


「どうぞ。

侍女は下げましたので、お茶でいいですか?」

シルビアが、遅い時間なので自ら茶を淹れるという。

「私がお茶を淹れるのは不思議ですか?」


マーベリックはシルビアがお茶を淹れるのを見ている。

「シルビアは驚きでいっぱいだな。

手慣れているな。公爵令嬢で珍しいと思っただけだ」

「私は規格外でしょ?」

ニヤリとシルビアが笑う。


シルビアがテーブルにお茶の入ったカップを置く。

「いい香りだ。

こんな時間にすまないな。

寝ているかと思ったのだが、顔をみたくて」


言われたシルビアの動きが止まる。

「シルビア?」

怪訝そうにマーベリックがシルビアを見る。


「口がうまいのだな」

シルビアがマーベリックの向かいのソファに座る。


「正直に言おうと思っているからな。

シルビアには、私の事をもっと知ってもらいたい。

シルビアの事も知りたい」

「その意見は賛成だ。

多分、私達は結婚するのだろうし」

「多分ではない、絶対に結婚する」

シルビアに反論するように、マーベリックの身体が乗り出してくる。


マーベリックはカップを手に取ると、口元に持っていく。

「シルビアに話しておかないといけない事があるのだ。

まずは、妹の事だ。

気が付いていたろう?」

シルビアが少し頷く。

気が付いていたが、反対に暇つぶしにしようと思っているとは口にしない。


「嫌な思いしたのではないか?

どうも、自分が認めた人間でないと許さない、とか思っているらしい」

「こういう姿ですから、慣れてます」

その言葉でマーベリックは、納得する。

きっと辛い思いをしたのだろうが、くじけなかったのだ。

「貴女が誇らしい」


「だから・・そんな」

「嘘じゃない。好ましいところばかりだ」

それから、とマーベリックが続ける。


「私の婚約者の事は言ったね。

この年だ、付き合った女性もいる。

だが、婚約に至ることはなかった。

彼女達が事故にあったり、屋敷が火事になったり、離れていった」


「ご愁傷様、というべきかな?

女難だというしか、思い浮かばない」

そっとカップをソーサーに置くシルビア。


「シルビアには気を付けてほしい、というしかない。

私はシルビアに巡り合った時に、堂々と結婚を申し込めて良かったとさえ、今は思っている。

結婚を受けてくれて、とても嬉しいのだ」

「受け入れたのは、公爵家で私の意志ではないよ?」

熱く語るマーベリックに、シルビアの冷ややかな言葉。


「シルビアには、私は婚約者としてどうだろうか?」

どうだろうか、と聞かれてもシルビアには答えようがない。

元婚約者との会話は仕事の話ばかりで、彼は可愛い女の子を連れていたし。


「婚約者というのが政略的な相手だったので、今もそういう考えしか思っていない、というのが正直なところです」

「私達の結婚に政略的に価値がある、というのは必要なことだが、シルビアがいいんだ」

マーベリックはシルビアをじっと見つめる。


「私は、シルビアだけだ。他はいらない。

貴女に一人の男として認識してもらえるように、がんばるよ」

マーベリックはユークリッドの事を知っているのだ。

「貴女が好きだ」


「私は女性としての魅力に欠けると思ってますが?」

「魅力的な女性にしか見えない。

これから、私の言葉を信用してもらえるよう、努力は惜しまないから。

遅い時間なのに、会えて嬉しかった。おやすみ」

マーベリックは立ち上がると、シルビアの頬をなでて部屋を出て行った。


扉が閉まるのを確認して、シルビアはソファに深く座り込む。

「なんなの、あれ」

ユークリッドとの長い婚約関係で、女性として扱われなかったシルビアは戸惑うばかりだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] ま、妹が落ちるのは時間の問題だとは思ってますが…(笑) あとシルビアが想定以上に戸惑ってて可愛い(笑)
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