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悪役令嬢は男装の麗人  作者: violet
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新たな道

馬を駆りながら、シルビアは喪失感を感じていた。

ユークリッドに恋愛感情があるかとなれば、自分でもよくわからない。

だが、幼いころから王妃になるのだと教育され、それはユークリッドとセットである。

国の為、それが基本だった。


司令官として国に尽くせばいいかと思うが、そのままでは済まないだろうとも分かっている。

フリーの公爵令嬢って騒動の元だよなぁ。

公爵家となれば、どこかで王家筋と繋がっており、王位継承権があったりする。

ましてやレーベンズベルク公爵は王の弟。

父親が継承権2位で兄が3位、その家の娘。

それが自分の事だと思うと面倒くさい。

いっそ、次の婚約者は剣の腕で決めようか、とさえ思うとマーベリックを思い出した。




「司令官、こちらの家です」

前を駆けるメイヤーの馬が、1軒の家の前で止まった。

廃墟という程ではないが、放置されてから時間が経っているのだろう。

壁は蔦がはい、扉は朽ちているが、雨露をしのげる屋根も壁もある。


シルビアが中に入っていくと、ヒューマの表情が緩むのが見えた。

「心配かけたね」

そう言いながら、シルビアの目は、縛られている部隊長を見続ける。


「残念だったね、私は生きているよ」

ニッコリと微笑んで、シルビアは部隊長の前の椅子に座る。

「たくさん聞きたいことがあるんだ。

協力してくれるよね?

無駄に痛くなりたくないだろう?

私は死にかけたけどね」

部隊長が横領していたのは、かなりの金額になる。

シルビアが赴任するまでは、部隊長が第2部隊の責任者だったのだから。

それを目こぼしていた人物に流れていた可能性もある。


ガン!!

椅子を蹴ったのはヒューマだ。

「そろそろ始めます」

立ち上がったヒューマに、シルビアは頷く。

片手を置いた頬には傷の治療でガーゼが張られ、腕には包帯が巻かれている。

軍服ではないが、白いレースの襟のブラウスに黒い細身のパンツにブーツ。

足を組み椅子の背もたれに身体を預け、シルビアは問う。

「今回の事は一人で計画したのかな?」





「シルビアは大丈夫なのか?」

一晩中起きていたのか、ユークリッドがロイスを見るなり詰め寄って来た。

「無事に保護出来たと、連絡を入れたはずです。

ケガはしてますが」

ロイスは、昨日入れましたよね?と確認して言う。

ユークリッドは椅子に座ると、安心したように息を吐く。

「シルビアは従妹だ。

それに、婚約は簡単に解消に出来ないと分かっている」


ロイスの笑い声が部屋に響き、事務官達が驚く。

「ああ、君達は少し下がっていて。

殿下と二人で話がしたいから。ほんの少しでいいから」

事務官や護衛騎士が部屋から出ると、ユークリッドとロイスの二人になった。


「ユークリッド、お前が婚約破棄したかったんだろ?」

ありえない、とロイスが名前で呼んでくる。子供の時のように。


そうだが、と言葉を出してからユークリッドが俯く。

「あの時は、彼女達と結婚したいと思っていたさ。

だが、冷静になると、シルビアが彼女達に忠告したことはもっともだとわかる。

彼女達は王太子妃になるには、いろいろ問題がありすぎる。教育も足りない」

それこそ今更だが、彼女達に夢中になっていた時は、彼女をシルビアから守らねばと思っていた。

シルビアが自分の側からいなくなるなどと、思いもしなかった。


「お前は、シルビアを意識し過ぎなんだ。だから、シルビアと反対のタイプを連れようとする」

「何言ってるんだ、そんなことないだろう」

首を振ってユークリッドが否定する。


「今回の件で、シルビアが居なくなるということの現実に気が付いたのかもしれないが、お前が婚約破棄を口にした時に終わったんだよ。

妹を大事にしない男に嫁がす気はない。

父も陛下も、許可は取っている。

今まで有耶無耶(うやむや)にしてきたのは、婚約解消出来ないからではなく様子を見ていたのだ」

ロイスには、ユークリッドがシルビアにかまって欲しいようにしか見えなかったからだ。

「言いたいことはそれだけだ。

もうお前がシルビアの心配をする必要はない。

婚約者ではないのだからな」


「従妹だ、身内なんだぞ!」

「ユーク、分からないのか?

シルビアは公爵令嬢だ。

次の婚約者はすぐにでも決めねばならない。お前より大事な男が出来る」

すぐに決まるとは思ってないが、ロイスもユークリッドの態度には思うところがある。


「え?」

ユークリッドは王太子に婚約破棄されたシルビアは不利だと思っていたのだ。


「バカか。婚約破棄の原因は誰が見てもお前だ。

シルビアを庇う者ばかりだったろう」

ロイスがユークリッドに畳みかける。

「シルビアは生まれた時から、次代の王妃として教育を受けた。

それと同じだけの教養を持つ女性は滅多にいない。

お前がろくでもない妃を迎えるようなら、我らが見限るぞ」

これから、ユークリッドが迎える妃は常にシルビアと比べられるのだ。

可愛い妹を苦しめた罰を受けるがいい、ロイスは自覚のないユークリッドに笑いをこらえるのでいっぱいだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] ユークリッドの頭が何気にお花畑な件(笑)
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