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悪役令嬢は男装の麗人  作者: violet
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シルビア探索

ポタポタ、泥水を吸って重くなった衣服から滴る雫が、シルビアの歩いた跡に水溜まりを作っていく。


川に落ちる一瞬に、シルビアは馬を盾にして衝撃を和らげた。

激流に逆らわず、流れに身を任せ体力を温存したが、多少の傷は避けれなかった。

水中の岩にはぶつからなかったが、流木などですれた傷だ。


なんとか岸にあがる事ができたが、かなり流されてしまったようだ。

すでに暗くなり、ここが何処かさえわからない。

腰にした剣が流されなかったのが、幸運ともいえる。

もし肉食の動物がいても、これで対処が出来る。


「くっそー!

あいつ絶対葬ってやる!

近衛の部隊長なんて、コネでなったに違いないんだ。

待っていろ!」

王太子の婚約破棄という暴言の慰謝料として、王から司令官をごねて取ったシルビアが文句を言いながら歩く。


「寒いな」

服を脱いで乾かす場所などないし、何がいるかわからない場所では衣類は身体を守る。

動物や虫、衣類の役割は大きい。

だが、濡れた衣服は冷たく身体から体温を奪っていく。


捜索されているはずだ。

無暗に動いて体力を減らすより、安全な所で救助を待とうと、シルビアは場所を探していた。

大きな木に(もた)れ、ずるずると座り込む。

河原でなく、林を選んだのは夜風を避ける為だ。

風は体温も体力も奪っていく。


「あいつ、横領の調査に気が付いたな。

どこでバレたんだ。

バラしたヤツも同罪だ」

報復を考えて、シルビアは楽しそうに笑みを浮かべるが、濁流を泳いで、体力は尽きている。





シルビアの捜索は、川が大きく蛇行する地域を中心に行われていた。

河原、隣接する林へと近衛兵が分け入り探している。

そこには、増水した川が運んだたくさんの物が打ち上げられていた。


マーベリックとロイスは川沿いに馬を駆け、その先に向かう。

先行している近衛が、シルビアが落ちた地点から下流に向かって探しているのなら、まだ探していないその先を探索すべきと思ったのだ。

だが、下流に下れば下るほど、生存の望みは低くなる。



馬を降り、それぞれが引き連れている部下達と探索に入っていく。

月明かりが辺りを照らし出し、夜が更けていく。

周りの者も、見つかるまで探索を諦めないだろうとわかっている。



それは偶然だった。

足元の石が濡れている。

目を凝らして見ると、所々濡れた場所がある。

それは、続いているようにしか見えない。

ダンディオンは、手を大きくあげてマーベリックを呼んだ。


マーベリックも意味することに気づき、走るように林に分けいっていく。

何かが通った跡がある!



月に照らされ、大きな木の下に姿が浮かび上がる。

泥に汚れているが、まばゆいブロンドが目にはいる。

「シルビア!」


うっすら目を開けたシルビアは儚く微笑んだように、マーベリックには見えた。


「殿下でしたか」

がっかりしたように、シルビアが言う。

「見つけていただきありがとうございます。

だが、我が隊はどうしました?」



「もう少し川上を探している」

マーベリックが答えながら、脱いだ上着を差し出す。

シルビアは濡れて冷え、重くなった上着を脱ぎ、マーベリックの上着を着る。

「ありがとうございます。

私の副官に連絡をお願い出来ますか?」

「すでに人をやっている、直ぐに来るだろう」

マーベリックが言い切る前に声が聞こえた。

「シルビア」

ロイスが林に入って来たらしい。


マーベリックはロイスに取られる前にと、シルビアを抱き上げた。

お姫様抱っこである。

シルビアがマーベリックを睨むが、それさえも嬉しそうな様子のマーベリックにシルビアは諦める。

「王太子殿下に申し訳ないね。

疲れていて歩けないんだ。ヨロシク」


マーベリックの上着を着て、マーベリックに抱きかかえられているシルビアを見て、悲鳴をあげたのはロイスだ。

「シルビア、何平然としてるんだー!」



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― 新着の感想 ―
[一言] 編み上げのお洒落なブーツかねー? ヴァイオレット・エヴァーガーデンが履いてるみたいな!
[一言] ロイス…シルビア取られちゃった(笑) やるじゃん!マーベリック!
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