本当の気持ち
「私と、本当に結婚したいですか?」
シルティアからの問い掛けに言葉を詰まらせるアイオリア
「どういう、意味ですか?」
「私の結婚相手は、この国を導く未来の王。
父はあのような場を設けてまで私が望む相手を、と考えてくれてますし私も父のようにいずれは好きな人と結婚したいと思っています。」
「‥」
「ですが、国を守る立場を忘れていません。
どれだけ望んでも、私はこの国の王女。
この国を民を守り、繁栄に導く事が務めです。
国の為ならば、有力な権力者との結婚も覚悟の上です。」
「だから、好きでもない人と結婚するしその事態も受け入れるというのですか?!」
バンッ!と机を叩くアイオリアを真っ直ぐ見つめる
「ええ、ですがこれはあくまでも私の話です。
リアは、違いますよね?」
「‥」
「貴方は私を通して別の誰かを見ていますね」
「‥なぜ、そう思ったのですか?」
「‥わかりますよ。
貴方が目で追うのは、キラキラと輝くブロンドの髪の女性。
気づいてないと思いますが、目元が緩んで幸せそうな顔をしています。」
前世の事もあり、人一倍愛情を求める私だからアイオリアの気持ちに気づいてしまった。
そんな表情をしてしまう位に愛しているとわかって、嫉妬よりもただ羨ましいと思った。
「‥申し訳ございません。
姫様を騙すような真似を、どんな処罰でも甘んじて受けます。」
アイオリアは、深く頭を下げた。
言い訳もせず、罰を求めるアイオリアに怒りなどなく数秒頭を悩ませる
「此度の婚約者探しには、数多くの希望者がおりました。みなそれぞれ思う所があったにせよ、真剣に取り組んでいました。
貴方はその人達全てを蔑ろにしたのです。」
「‥おっしゃる通りです。」
「よって貴方には、2週間後帰国していただきます。期間中は、我が国の力になっていただければ今回の件は不問といたします。
父には私から話を通しておきます」
「寛大な処置、ありがとうございます」
今回の件が公の場でなかったのが、幸いだ。
家臣達や父の耳に入っていたら、国際問題に発展しかねない。
「一国の王女としては、こんな無愛想な言い方しかできませんが私個人としては、嬉しいです」
「嬉しい、ですか?」
「はい、知り合って間もないですが私は貴方を友達のように思っていました。
同じ立場、同じ年頃ですから、同じ様に悩む事もたくさんあると思います。
王族でありながら、好きな人と添い遂げる覚悟を持つリアと出会えて良かった。」
「姫様‥」
「どの国でも、恋愛結婚は難しいもの。
2人が幸せになれるように、願っています」
「本当に、感謝いたします‥!」
この誠実な王子様が、幸せでありますように。
涙ぐむアイオリアにハンカチを渡しながら、もう一度心の中で呟いた。
「姫様、そろそろ城へ戻りましょう。」
「そうですね、日も暮れてきましたね」
「馬車を呼んで参ります、このままお掛けになってお待ち下さい」
「ありがとう」
椅子から立ち上がってゆっくりと体を伸ばす
「帰ったら、お父様に話をしなきゃ。
‥あ、お土産に、ここのケーキを買っていこう!」
最近公務続きの父を休ませて、話をするチャンス!我ながらいい案だ!と、自画自賛しながらカフェの直ぐ近くにあるケーキ屋に向かう
「姫様、御用でしたら私達が‥」
道中購入した物を馬車へ詰めたり、馬車のチェックをしてくれる従者に用事を頼むのは気が引けた。
何より、自分で選びたかった。
「いいのよ、直ぐ近くだしみんな帰りの準備をお願いね。」
不安そうな顔をしたが、場所と直ぐ戻る事を伝えると渋々納得してくれた。
「何かあったら大きな声を出して下さいね!」
「はいはい、わかってる」
ついでに、みんなにもお菓子を買いたいなぁ。どんなお菓子があるんだろう、とわくわくしながら歩いていると突然口元を布で塞がれて路地へと引き摺り込まれる
「ッ!?」
突然の出来事に、なす術もなく体を引っ張られ声を上げようと息を吸い込む
「ッ‥ん、‥?!」
「悪いな、お姫さん。
暫く眠っててもらうぞ。」
薄れる意識の中、男の声だけが響いた。