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アルメイダ帝国創立記念パーティー

侍従達と楽しく話をした数週間後、帝国1000年の創立を祝うパーティーが行われる事になった。

というのは、建前で本当は痺れを切らした父親 つまり国王がこの際に娘の婿を決めよう!という魂胆だった。


もちろん、そんな事を全く知らないシルティアはパーティーに向けてドレスを選び準備を進めていた


「姫様、とってもお綺麗です!」


「薄い青色がよく似合う。」


「そ、そう?」


くるりと回ると同じくフワリと舞うドレスに嬉しくなる

中身はアラサーだけど腐っても女。

やっぱりおしゃれは楽しい!


「これなら世の男達が黙っていませんよ!」


「今日のパーティーでも注目間違いなしですね。

さ、我々がお供致します。」


サーラとセバスが先導し、長い長い廊下を進み大きな扉の前で止まる。


「姫様、楽しんでくださいませ」


「何か御座いましたら、直ぐに駆けつけますので」


「ありがとう、サーラ、セバス」


2人に礼を告げて、警備兵が開けた扉を通る


「シルティア・アルメイダ姫のご入場!」


ざわざわとざわめいていた会場が静かになり、静かに頭をたれる人々


近隣諸国の王侯貴族の値踏みするかのような視線を気にもとめず、優雅に階段を上がる。


「姫様こちらの魔石をお使いください」


近衛兵から拡声器代わりの魔石を受け取り、魔力をこめる


「本日はアルメイダ帝国創立1000年を祝うパーティーにご参加頂き誠に感謝申し上げます。

1000年という長い歴史、平和に過ごせたのはこの国に住う人々や近隣諸国の皆様の力添えがあってこそだと思います。

次期王女として、この国の更なる発展に貢献出来るよう努力いたします。

今宵はごゆっくりと、お楽しみ下さいませ」


優雅に礼をすれば、周りから拍手が沸き起こる

軽く頭を下げると、玉座に座っていた国王が隣に並び立ちシルティアの肩を掴む


「私からも1つ発表がある。

1年後には、最愛の1人娘シルティアが15の年になる。

しかし、まだ娘の理想に叶う男はおらず私は困り果てておる。

よって、1週間後に我が娘の婿候補を決める大会を開くものとする!」


「と、父様?!いきなり何を!」


慌てて声を上げるが、周りからの大きな拍手にかき消されてしまう。


「魔法 剣技 智力 皆の持てるすべてをこの大会で披露してくれ!

大会を勝ち進んだ者は姫との謁見を許可し、15になる迄に心を掴んだ者は婚約者と認めよう!

国内外問わず参加してくれたまえ。」


この発言によって、私の婿選び大会が開催されることになった。


「父様、待って下さい!

私は……!」


「シルティア、お前も年頃の娘だ。

婚約者の1人や2人いてもおかしくない。」


「……そうですが…、私は好きな人と結婚を…!」


「なに、候補者に選ばれるくらいの男ならシルティアも好きになる筈さ。

さ、詳しいことはまた追って知らせるからパーティーを楽しみなさい。」


それ以上は聞かないとばかりに、背中を押されるがギラギラと目を光らせるパーティー客が怖すぎて会場を後にした


「なぁにが!娘の心を掴んでみろ、だ!

私は恋愛がしたいの!

王族に生まれたから無理かもしれないけど、せっかくの2度目の人生なのに!」


長い廊下を歩きながら1人愚痴る


「‥こうなったら、自分の婚約者を自分で見つけないと!」


勝ち進んできたのが、ゴリゴリ系のマッチョとか歳が離れ過ぎたおじさんと結婚なんて絶対嫌!


「‥よし!」


目立つアクセサリーを外し、見つからないように空き部屋からベットシーツを拝借し頭から被りこっそり外へ向かう。


昔よく使っていた秘密の抜け道を走っていると、小さな光が見えた


「こんな人気の無い場所に光…?」


音をたてないようにゆっくりと近づくと、蛍のように小さな光が様々な色を発し庭にたたずむ人の周りを飛び回っていた。


あまり光が差し込まない離れの庭、その上色とりどりの光が幻想的で綺麗だった。


身を隠している事も忘れ、眺めていると自分の周りが急に明るくなった。


「そこで見ているのは誰だ?!」


「ご、ごめんなさい!

あまりにも綺麗だったから、つい見てしまったの。」


草むらから出て、ゆっくりと近づくと私と同じくらいの背丈の男の子が光に囲まれていた


「‥綺麗?」


「ええ、蛍みたいに小さな光に照らされた貴方や花が綺麗。

おとぎ話で読んだセレスの花園みたい。」


母が小さい頃読み聞かせてくれたおとぎ話

大昔にあった大戦でたくさんの種族がなくなった

その死を憂いた女神が心安らげるようにと植えた白い花を植えました

女神の祝福を受けた白い花は一夜にして広がり、死者に安らぎを与えたのです。

その場所は花を植えた女神の名前をいただき、女神セレスの花園と伝えられているが、もう1つの言い伝えがあった


「セレスの花園で新月の日にお互いの瞳の色をした指輪を交換すれば女神から祝福され、永遠に幸せになれる‥か」


「ええ、すごく素敵でしょ?

永遠なんて不確かなもの、だなんて言う人もいるけどこの世界には妖精やドラゴンがいて魔法が使えるのよ。

女神の祝福ぐらいあっても不思議じゃないわ」


セレスの花園があるだろう北の方を見る

すっかり日が落ちてしまい、山の影すら見えない


「·····あんた、変な姫だな。」


「はぁ?!変ってなによ!

ロマンチストと言ってよ!」


男の子を睨みつけるが、静かにこちらを見ていた


「·····あんたみたいな変な姫なら、結婚してもいい」


ぽつり、と呟かれた言葉にかちんときた


「あんたね!結婚は好きな人とするものよ!

人生の大半を一緒に過ごす大事なパートナーであり、お互いを慈しみあう存在よ。

それを適当に決めるのは自分をないがしろにしてるのと同じだわ。」


「自分をないがしろに、ね。

あんたはついさっき国王が出した声明に振り回されているじゃないか。

何人残るかわからないが、数人の中から婚約者を選ぶんだろう?

好きでもないのに。」


「確かにその通りよ。

所詮私は姫で、この国を繁栄させる為にも結婚しなくてはならない。

勝ち残る人達が私を権力を得るための道具だと考えているのか、本当に好きなのかなんてわからない。」


何を考えてるかわからない、アメジストの瞳が私を見据える


「だけど、信じてみたいじゃない?」


その数人が私に恋をして

私もその数人の内の誰かに恋をして

何でもない事でも笑って幸せだと笑える夫婦になる事を


「·····本当に、変な姫だな」


ほんの少しだけ微笑んだ男の子

少しだけ見えたアメジストの瞳が、優しげにこちらを見ていて言い返したかったに、言葉に詰まってしまった。


少し離れた場所で、大人の声が聞こえてきた

おそらく、シルティアの逃亡に気づいたのだろう


同じように声に気づいた筈の男の子は落ち着いていた


「私がなんとか時間を稼ぐから貴方は早く離れた方がいい」


「それもそうだな…。

またな、変わり者の姫」


「ちょっと、私の名前は·····!」


シルティア・アルメイダよ!と伝える前に、光と共に消えてしまった


「·····やっぱり、魔法って凄い。」



数分後、離れの庭にやってきた兵士達に保護され自室へと戻ることに。


その後、直ぐ部屋に駆けつけたサーラとセバスに、山ほど説教されるとは露知らずベッドに座りながら呑気に今日出会った不思議な男の子について考えるシルティアだった。



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