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第四話 セクションセブンの面々

 今日もいつもの様に始業のチャイムを合図に一人を除き、PCと向き合うセクションセブン分室の面々。

 ホクロ田は日課のスポーツ新聞を広げ熟読を始める。

 静かな部屋では、キーボードを叩く音だけが響き渡る。そんな中”ブッ”ホクロ田が大きなオナラをかましたのだ!?

 一平は気づいていないのか、キーボードを叩く手を止めない。

 私とハルカはホクロ田を睨みつけるが、ホクロ田は何も無かった様に、新聞を読んでいる。

 私は沸々と怒りが込み上げて来る。心の中ではツカツカとホクロ田の所に行って、履いているヒールを手に持って力一杯ホクロ田の頭を張り飛ばしてる所である。が、実際そんな事出来るはずもなく、ハルカと目を合わせて二人でやれやれと首を振る。

 何時もの事だが限界超えたら本部長の牧村に言いつけてやろう思っている茜であった。


 気を取り直して仕事に集中していると。

(ガチャリ)扉を開けて、牧村が入ってきた。

 それに気づいたホクロ田は新聞をしまい込んで立ち上がり対応しようとした時、牧村はホクロ田に向かい小さく手を翳しホクロ田の動きを制した。そのまま歩いて一平の後ろまで進んで行った。

 その事にすら気づかない一平は何かに取り付かれた様にキーボードを叩いていた。


「調子はど~お、一平いっぺいちゃ~ん」


 突然の牧村から掛けられた言葉に、少し驚いた仕草を見せ振り返る一平。


「そろそろ行けそうかな~」


 牧村は意味深な言葉を一平にかけている。

 その言葉に小さく頷く一平。


「そう、それは楽しみね・・・」

 牧村は小さく一平の肩を叩くと、足早に部屋から出て行った。





 牧村はセクションセブンのドアを開け部屋の中央に有る巨大なモニターの下まで歩いていって、

「サクラ、現状を報告して頂戴」

「はい、現在『オリオン』は正常に稼働しています。

 防衛省の『オリオン』に対する攻撃浸食率はここの所3%で安定しています。

 又セクションセブンについても2~4%で安定中です」


 オペレーターの町野桜蘭まちのさくら24歳が的確に答える・・・

 牧村はモニターに向かい、何かを待っていた。



 モニターに映し出される数値が一気に跳ね上がる・・・

「現在セクションセブンに向け、何者かが攻撃を行っています」

 サクラが慌てた様子で牧村に報告する。

「おいでなすったわね」

 牧村は腕組みしたまま状況を見守る。

「現在浸食率5%を突破しました」

 サクラの報告が続く。

「7%・10%突破」

「発信元の特定を急いで頂戴」

「了解です」

「発信元、特定出来ました。社内のセクションセブン分室」

 牧村はニヤリとしてモニターを見つめる。

「浸食止まりません。15%突破、16、17、18、19、20%突破しました」

「やるわね・・・。サクラ、ウイルス駆除プログラム起動」

「了解です。プログラム、起動します」

「浸食、止まりません。浸食率20%突破、21、22、23、24、25%突破しました」

 不安そうな表情で牧村を見るサクラ。

 笑顔が少しづつ引きつってくる牧村・・・


「浸食率、26、27・・・・・・浸食止まりました。駆除プログラム正常に稼働中」

 モニターに表示された浸食率の数値が急激に下がって行き、安定領域の2%まで下がった。

 サクラは安堵のため息をついた。

「お疲れ様」

 牧村はサクラの的確な対応に労りの声を掛けた。

「これって、一体・・・」

 怪訝な表情で牧村を見つめるサクラに向かって、

「今回は一平いっぺいちゃんの開発中のウイルスのテストを兼ねた『オリオン』防衛訓練よ」


「あっ、そうなんですか・・・せめて一言教えて欲しかったです」

 そんなサクラに対して牧村は、

「いついかなる時でも冷静に対応出来るのが、セクションセブンよ。国の防衛の一翼を担っている事を、忘れないで頂戴」

「すっ、すみません」

 肩を落とすサクラの肩に軽く手を置き、

「今回は、完璧だったわよ」

 牧村の投げかけた言葉にサクラは元気を取り戻し、

「これからも、がんばります」

 サクラの言葉に、大きく頷いた牧村はツカツカと部屋を出て行った。



(ガシャン!)

 勢いよくセクションセブン分室の扉を開けた牧村は、一直線に一平の後ろに立った。

 一人を除いて何が起きてるか解らない分室のみんなは、ポカンとした表情でそれを眺める。

 頭を抱えてPCを見詰めている一平の肩を叩く牧村。


 肩を叩かれた一平は牧村の方へ振り返る。

 牧村は何やら勝ち誇った様に親指を立てて一平を見つめる。

 一平はゆっくり牧村の方を向いて、目が合うと会釈してPCの方に視線を戻す。なにやら元気が無い様である・・・


 意味の解らない儀式の様な行いを終えると、牧村はなんだか嬉しそうに部屋を出て行った。

「な、な、何なの・・・あれ」

 茜の問いかけにハルカも首を傾げる。


 一平に説明してもらおうと、ハルカに目で合図を送る。

 ハルカは察した様で一平の後ろまで行き、

「いっ、一平君?・・・」

「もしも~し」

 返事が無い、只の屍のようだ・・・


 ハルカは首を傾げながら戻って来て私に無理でした。と、首を振りながらサインを送る。

 二人ともモヤモヤしながら仕事をこなしていると、昼休みのチャイムが聞こえて来た。



 ハルカと二人で社内の食堂へ向かう、部屋を出る際も以前一平は放心状態であった。

 食堂で今日の昼飯を選んでハルカと向かい合う席に座る。

 社内の食堂と言っても流石は四つ葉グループ、お洒落なカフェテリアになっており、食事は、和・洋・中のビュッフェスタイルなのだ。

 朝晩コンビニ弁当が多い茜は、この食堂が朝晩やっていれば良いのにと常々思っていたのだった・・・

 それはさておき、二人は食事を楽しみながら、先ほどの事に付いて話し合っていると、二人の横をセクションセブンのオペレータの町野桜蘭まちのさくらが食事を終えて通り過ぎようとしていた・・・


「ちょっ、ちょっ、ちょ」


 茜は後輩のサクラの服を引っ張り、引き留める。


「茜先輩、久しぶりです。・・・なんですか?」


 先ほど起きた牧村と、一平の一件を説明すると帰って来た答えはこうだ。


 牧村さん達の作った自信作『オリオン』に一平の作ったウイルスで戦いを挑んだが、返り討ちにされ牧村さんは完全勝利を一平に報告に行ったとの事。


 ようやく納得がいったのである。

「ありがとう、サクラ」

「いえ、所で仕事進んでいます?」

「う、うん。それがいまいちねなのよね~」

「今度牧村さんに相談してみては?」

「ありがと、考えとくね」

「それでは」

「じゃあね~」

 サクラは二人にお辞儀をして食堂を出て行く。


「一平君、可哀想・・・。

 どうにか励ましてあげる事出来ませんかね? あんなに頑張っていたのに・・・」


 ハルカは心配そうに茜に尋ねる。


「流石の天才も牧村さん相手では歯がたたなかったかー。

 ほっといてもすぐに立ち直るんじゃない?男の子だもん」


「先輩、ひどいですー」

「そうかな・・・」


「所で先輩。一平君の事どう思います?」

「どうって?」


「なんか、弱弱しいけど、守ってあげたいっていうか・・・」

「ハルカ! もしかしてあんなのがタイプな訳?」

「あんなのって言わないでくださいよー」

「先輩は彼氏とうまくいってるんですか?」

「かっ、彼氏・・・」

「だって先輩、そんなに可愛いのに一人なわけないじゃないですかー」

「あっ、ああ彼氏ね・・・」


 いえねー、25年間彼氏いませんなんて言えねー。先輩としての威厳もあったもんじゃない。

 どうする私・・・

 いつも女子会で恋バナになった時、全能力を使って気配を殺し、うまくこの話題をすり抜けて来たのに、今日に限って二人きりとは・・・

 どう切り抜ける!!

 あれ、待てよ。

 今の私には、彼氏いるじゃん。バーチャルだけど・・・

 でも理想の彼氏いるじゃん。


「彼氏とはうまくいってるよ、とっても優しくしてくれるし」

「いいなー、今度紹介してくださいよー」

「うっ、うん。今度ね・・・」


「で。先輩、一平君の事、応援してくれます?」

「もちろんよ、私に出来る事があったら何でも言ってね!」

「ありがとうございますー」


 リアル恋愛経験ゼロの茜はカッコつけて、後輩の頼み事を安請け合いするのであった・・・






















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