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第十五話 戦慄

 カーテンの隙間から朝日がこぼれ、部屋に明かりが差し込んでくる。外でさえずる小鳥の声に朝が来たことに気づいた茜。


(朝か・・・)


 ベットの上で膝を抱え一睡もしていない茜はベットを降りて立ち上がり、カーテンを開けると、強い朝日が部屋全体を明るく照らし出す。その光の強さに茜は額に手を翳し、朝日に背を向ける。その後フラフラとダイニングに向かい水道から水を飲み椅子に座りため息をつく。


 朝食の支度でトースターにパンを入れて調理開始のボタンを押すが何の反応も無い。


(そっか・・・)


 昨日の出来事で部屋の全ての電源を落とした事を思い出し、仕方なく冷蔵庫にあったヨーグルトで朝食を済ませ出かける準備を終えて部屋を出る。


 エレベータに乗り込み一階のボタンを押す。

 動き出したエレベータはすぐに止まった。次の階の手前で。

 慌てて茜は開くボタンを押すが反応が無い。いろんなボタンを試すが何も起こらない。

 そうこうしていると、エレベータ内の照明が点いたり消えたりを繰り返す。


「ヒロヤでしょ? なんでこんな事するの・・・」


 茜の声が空しくエレベータ内に響き渡る。

 エレベータの隅にもたれかかり、凍えるように自分の体を抱く茜。


「もうやめてよ、こんな事・・・」


 暫く時間が過ぎた頃、茜はボタンの並ぶパネルの最上段に非常用ボタンを見つけ、なかば祈るように押してみる。


「どうされましたか? 事故ですか? 故障ですか?」


 エレベータの管理会社の人であろう男性の声が帰って来た。


「あの。エレベータ内に閉じ込められています。早く助け・・・」


 茜の話が終わる前に、エレベータは動き出し、一階で扉が開いた。


「どうされましたか? 大丈夫ですか?」


 エレベータ内では管理会社の人の声がしているが、茜は答える事無く逃げる様に開いた扉から外に走り出た。


 暫く走って疲れた茜はその場で息を整えながら周囲を見渡す。

 道行く人々はそんな茜を不思議そうに見ながら通り過ぎて行く。


 駅に向かう途中の商店街に差し掛かる茜。

 通勤時間帯で多くの人の中を縫うように歩いていると商店街のとある店のショウウィンドウが目に入った。

 ここに飾っているワンピースが可愛くて、いつか買おうと思っていたのだ。


 足を止めて商品に見入っていると、ショウウィンドウ内のデイスプレイモニターに見慣れた人影が写し出されていた。ヒロヤである。


 モニター内から茜を見つめるヒロヤに気づいた茜はその場を足早に後にした。

 商店街に設置してある宣伝用のスピーカーからは茜を呼ぶヒロヤの声が響き渡る・・・

 耳を塞ぎ暫く進むと、商業施設の壁に設置されている大型モニターにもヒロヤの姿が映し出されている。


 耳を塞ぎ、何も見ない様に駅に向かい走る茜。途中何度も人にぶつかりながら駅にたどり着いた茜は逃げ込む様に、人の列を割ってバスに乗り込む。


 順番を飛ばされた人々は不機嫌そうに茜を睨みつける。茜は無言で何度もその人たちに頭を下げてつり革につかまった。


 バスは何事も無く茜の勤務する会社の前に付いた。

 バスから降りた茜は全速力で会社を目指して走った。

 すれ違う会社の人への挨拶もそこそこに自分の部署にたどり着いた茜は自分の席に座り息を整えていた。


 茜以外まだ誰も来ていない部屋はとても静かだった。

 茜は恐る恐る自分のPCを立ち上げてみる・・・・・・



 PCは何事も無く立ち上がりいつも通りの画面であった。

 そっと胸を撫でおろす茜。その時。


(ガチャ)


 扉を開けてハルカが入って来た。


「先輩!おはようございますー、今日は早いんですね!」

「おはよう。ハルカちゃん!」


 何時もの日常が始まろうとしていた。

 しかし事態は急速に動いて行くのだった・・・・・・






















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