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第十三話 三匹の狼

 数日が過ぎ茜の職場にはPCに向かい仕事をしている一平の姿があった。


 事故を起こした一平だったが検査の結果骨に異常は無く、軽い打撲と言う事だが、大事を取って医者からは3日の入院を言い渡されていたのだが、本人の強い希望で松葉杖を使用して職場復帰を果たしていたのだった。


 何時もと変わらない日常の風景。茜はプログラム入力に行き詰まるとペンを唇の上に乗っけてタコ口になって考え事をするのだが、本人は気づいていないが目線は一平の仕事をしている横顔を見つめていた。


 そんな茜に気づいて茜の視線の先を確認し不機嫌に茜を見つめるハルカ。


 なんだか良く解らない雰囲気に気づいたホクロ田は大きく咳払いをした。

 その咳払いに我に帰り仕事を再開する茜とハルカ。

 ホクロ田はそのまま立ち上がり素手でゴルフスイングの練習を始めていた。

 暫くしてホクロ田はおもむろに一平の方に歩いて行った。


 一平の後ろに立ったホクロ田は、一平の机に立てかけてあった松葉杖の二本のうちの一本を手に取りパターゴルフの練習をしながら、


「水沢君に続いて野村君まで。一体この先どうなるんだ? 次は木下君かもしれんな。気を付けてくれたまえよ」


 心無いホクロ田の発言に、


(次はお前だ。ホクロ田、いや、お前であってくれ)


 三人の心の中は大体一致していた。


 一平の後ろでゴルフの練習をしているホクロ田。茜は席を立ち、スタスタとホクロ田の前まで歩み寄ると、


「やめてもらえませんか! 不謹慎です!!」


 そう言ってホクロ田の手から一平の松葉杖を取り上げた。

 突然の出来事にホクロ田は、


「何のつもりだ? 上司に対してその態度はなんだ! 私は課長だぞ」

「課長だったら課長らしくなさってください!」

「水沢~貴様~!!」


 小さなプライドを傷つけられたホクロ田は大きな声で茜を怒鳴りつけるが茜は一歩も引かない。

 そんな中、ハルカが席を立ち、


「水沢さんの言う通りだと思います!!」


 二人に挟まれオロオロし出すホクロ田。


「どいつもこいつも何のつもりだ~!!」


 苦し紛れのホクロ田の叫びに、


(ドン!)


 一平が両手で席を叩き、腕で体重を支えながら立ち上がり振り向きざまに恐ろしい形相でホクロ田を睨みつけた。


(ガルルルルルル)


 ホクロ田は一平の静かな怒りに恐怖を感じた。

(狼だ!)

 今にも飛び掛かって来そうな勢いの一平と殺気立つ茜とハルカ。


 ホクロ田は悟った。

(俺は今、狼の檻の中にいる。これ以上挑発してはダメだ、ここは大人の余裕で乗り切るんだ)


「あっ、お腹の調子が・・・木下君ちょっと通してくれたまえ」


 お腹を押さえながらそそくさと部屋を出て行くホクロ田を、冷めた目で見送る三人。

 ホクロ田が出て行った室内の三人はお互いを見合って、


「「「あははははは」」」


 日頃からホクロ田に対して不満の溜まっていた三人は清々しい気分になっていた。


「先輩、カッコ良かったですー」

「ありがとうハルカ」

「一平君もすごい迫力でしたー」


 照れくさそうに頭をかく一平。


 こうしてお互いの信頼関係を深めたセクションセブン分室の三人であった・・・




















職場では嫌いな上司、同僚などが存在します。

自分が我慢すれば円滑に事が運ぶ事も多々ありますが、理不尽な扱いに対しては例えいざこざが起きても自分を主張する事で、より良い人間関係が築ける事が多い気がします^^

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