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貧乏探偵 ロボを駆る─テン・コマンド・ノックス!─   作者: 我武者羅
8.探偵は読者に明かしていない手がかりによって事件を解決してはならない
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5.夢のあと

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 山々の恵まれた自然は生命の宝庫だ。山の幸と呼ばれる恵みの数々を求めて、多くの人が山に踏み入る。

 

 このヴィルム家の山々は、その典型。

 山道を騎士が歩いていれば、多くの人とすれ違う。

 猟師の男がいた。山菜採りの親子に、川辺で魚を狙う子供。

 そのような営みが、当たり前のようにここでは行われているのだ。

 普段は都会にいるせいなのだろうか。そんなことも忘れてしまいそうになることに、ユリエルはわずかながらに驚きを感じていた。


「でも、ここはいいですわね」


 森の広場に座り込んだ白の重騎士ゴルフォナイトの頭や肩には、いつのまにやら小鳥がいくつも止まっていた。

 様々な黒やら茶色やら、見覚えのあるものからないのまで、多くの小鳥は争うこともない。

 大きな威容がそばにあるというのに、気にするそぶりすら、見せていない。


 騎士の手のなかに変わらず居たユリエルも、そばに止まった小鳥と戯れていた。

 つぶらな瞳が愛くるしく、そっと撫でてやれば嬉しそうに鳴いている。

 だがふとしたように飛び立ったかと思えば、すぐに別の場所に止まった。

 それは、亜麻色の髪のなか。アルムの頭の上。

 眉をひそめる彼の姿に、思わずユリエルは吹き出してしまった。


「ずいぶんと人気ですのね」

「ちょっとは怖がってくれてもくれないと、威厳もないんだがね」


 騎士を登ってきたアルムは困った顔を見せている。

 それ、と止まった小鳥を手で払うがそのそばから寄ってくる始末。

 遊んでると思っているのだろうか、鳥たちは、チチと高らかに(さえず)っている。

 やがてアルムは諦めたように、その手に止まった一羽を撫で付けた。その手つきの、なんと優しいこと。

 小鳥は心地良さそうに、その手に身を委ねている。


「いいじゃないですか。でも中に巣でも作られないよう気を付けてくださいよ。特に頭のなかには」

「空っぽだと笑われるって言うんだろ? ちゃんと追い払ってるから、いないはずだ」

「さぁて、どうだか」


 その手のなかで夢うつつな小鳥を見ても、説得力はあまりない。

 それもそうだと、アルムも苦笑する。


「とは言っても、僕は専門ほどの技術はないから、重騎士も中身は触れたことがない。指南書(マニュアル)にも載ってなかったしな」

「それは英断でしたよ、ほんとうに。なんですかあの指南は」


 ユリエルのそのため息は、本当に重いもの。

 アルムも、どこか気まずそうに頬を掻く。

 あの整備指南書は手足などの関節部については、非常に素晴らしい仕上がりをしていた。

 だが、中身─心や内蔵機関(ハラワタ)となるとてんでダメ。

 気を付けるべきことがまともに書かれていない。


 言ってしまえば書いてあることは──『手入れはしておけ。奥まで手は突っ込むな』


 先までの繊細さがうそのような大雑把。途中で面倒になって放り出したとしか思えない。



「僕も気にはなったがね。知ったのは騎士を手にしてからだし、その時には領主代行だ。調べる余裕もないさ」

「気を付けてくださいよ。素人がさわって財産が水泡なんてこと、結構あるんですから」


 油を注しておく程度、とアルムが言うのは幸いに違いない。


 いくら頑強な重騎士とはいえ”中身”はわりと繊細なもの。

 今日まで生き残っていた重騎士も、下手にさわると機能が死んで雑騎士にするしかなくなる。

 その点、この白騎士はいまだ快調。アルムの行動はまだ間違っていなかった。

 しかしそれも、関節と同じ当たり障りのない範疇。


 現代に残る重騎士は、貴重だ。内部深くまで調整できる腕前の整備士も、また同じ。


「──ですがそんな貴重な技術は、ここにも一人! 私なら、そこまで混み入った整備も行えますとも!」

「へぇ、そいつは良いな。頼んでしまおうかな」

「えぇ、えぇ。是非とも!」

「それは良いんだが、踏み込むのは依頼が終わってからにしなさいよ。さすがに時間がかかるだろう」

「いやですねぇ、それくらいわかってますって……え?」


 薄い胸を張って答えたユリエルも、戻ってきたロックを見て固まった。


「俺たちの宝探しも残ってるんだからな」

「え、えぇ。わかってましてよ……?」

「どうした」

「いや……その……なんです、それ」

「もらいもの」


 彼女の注目は、ロックの背。

 なにやら妙な、大きな包みが一つあった。




 森を行く、騎士の手のなか。ユリエルの手元には、大きな包みがひとつ。

 先程行き会った老人と話していたロックが、譲られたものという。


 試しにと中を覗いてみれば、菜っぱやら果実、見当もつかない植物がいくらか詰め込まれている。

 下手に包みをほどけばこぼれてしまいそうなほどに、ぎゅう詰めだ。


「これは……山菜ですか?」

『だな。あのじいさんはよく採っていく』

「せっかくだから食っていけ、とよ」

『あれだけ採れば、その程度気にせんだろうからな』


 先程の老人が背負っていた包みは、かなりの大きさであった。

 あれほど採っていいのかは気になるが、アルムが言うに山二つは巡っているから文句も言うに言えないそう。

 あの大荷物でよくも歩けるものだ。


「都会っ子どもには珍しいだろってな。押し付けられたよ」

『せっかくの山の幸だ。ありがたくいただこうじゃないか!』


 アルムも、どこか嬉しそうに言った。


 都会の人が来るのは珍しい。町の住人も皆が言っていたことである。

 この町一帯、ヴィルム家領地というのは、広大で悠然。優雅な自然に溢れている。

 (ちり)(すす)(ほこり)にまみれたどこか薄汚れた都会とはまるで違うもの。


「いいですよねぇ、こういう自然は。空気もいいし、みんなも来ればいいのですけど」

「確かに素晴らしいものだが……」

『みなまで言わなくていいさ。興味がないんだろう。自然以外にもう一つといったところがなくてね』


 ここにあるのは自然だけ。観光業もまた魅力的だが、どうしたものかとアルムはぼやく。

 それを聞いて、ユリエルは首をかしげていた。


「別にいいと思いますけど?」

「へぇ?」

「自然、”それ”だけ。けれども”それ”がいいんだと思いますよ。ここに来てそこらに行ってると、心安らぎます」


 あと、と唇をつり上げた。


「私としては騎士が思う存分動けるだけ、こんな所もいいんですけどね。部品の供給は厳しそうですが」


 都会では作業用の雑騎士がほとんど。

 騎士を歩かせるならともかく、好き勝手動かすとなれば騎士拳闘の闘技場でも行くか、それこそ郊外に行く他ない。

 まあ、どこぞのやからが重騎士を乗り回すなんてこともあったりはしたのだけれど、あれは例外だ。


 興奮を押さえきれずに含み笑いをしてしまえば、ロックは呆れたような眼差しで見つめるだけ。


 積念こもったため息が返ってきて、彼を見上げた。


『良い案ですが、これ以上騎士が来ては山がうるさくてね、動物たちが怖がります。猟師たちも堪えきれなくなるんですよ』

「この騎士は良いの?」

『ここいらの動物たちはもう慣れきったよ』

「ようは押しきってことかい?」

『そうとも言う』

「やっぱりねぇ……」


 先程の小鳥たちを見れば、納得もいくというもの。得意気に彼は笑うが、ユリエルは嘆息するしかない。

 地元との関係もあるものだ。”騎士”とてしがらみと現実は避けられそうにない。

 ままならないものだ。


「平地の方がいいのかしらねぇ。ベルディのところ?」


 ユリエルの友人のベルディ・ブロストンも"ちょっとした"土地持ちだ。

 マンチェスターから馬車をしばらく走らせるだけで済む距離を考えれば、そちらのほうが良いように見える。


 だが、とロックは眉をひそめた。


「牧場が隣だろう。こちらと条件は変わらんよ」

「あそこのチーズは美味しいから、断られちゃたまらないわね……」

『それこそ考えすぎても仕方ないでしょう。先程のような草原もそこいらにありますから、是非に』

「良いわね。いいわねぇ……!」


 さりげない宣伝に、ユリエルは歯噛みするしかない。

 その提案はなんとも魅力的なこと。人によっては十分観光の口説き文句にもなるかもしれない。

 しかしユリエルには苦しいもの。

 まったく、とロックは呆れたように息をつく。


「そもそもお前さん、動かせんだろうに」

「動かせないなりに動かしたいし、動かしてほしいのよ! あぁ、現実はままならない……ッ!」


 細い拳を握りしめ力説する彼女の眼には、涙がにじんでいた。


『まったく、その通りですよ』


 アルムもまた、同意を示す。ため息二つが森にむなしく響いた。




『……そんなにそこのチーズが旨いのか。一度取り寄せてみるかなぁ』

「こっちのはどうなんだい」

『当然旨い。なんだったら次の食事で出させよう。だがそれはそれとしてそうも言われちゃ気になるじゃないか』



 ロックが声をあげたのは、かのチーズについて話が弾んでいた、その時であった。


「──止まってくれ」

『はい?』


 アルムは疑問の声をあげながらも、歩みを止めた。辺りはしんと静まり返り、木々のざわめきが戻ってくる。

 ロックは立てられた指先に立ち、辺りを見回した。


「なにか、装甲に光が映った──」

「は?」


 ユリエルの足元では、たしかに白の装甲は鈍くも輝き、覗けばユリエルの姿も写るほど。

 ロックはやがてじっと騎士の背後を見つめて、呟いた。


「あれか。岩……城?」

「え、……あぁ、あれですか」


 ロックの上げた声に、ユリエルは意外なように面をあげた。その方には緑に紛れて、何か岩が見える。

 ただ見れば、むき出しとなった岩肌としか見えないだろう。

 だが双眼鏡で覗いてみれば、岩肌というには形が整っているのがわかる。

 彼が指し示さなければ、見つけるのには難航したことに違いない。


『──あそこに、光……ですか?』


 騎士がしばし歩いて近づけば、ようやくその姿が露になる。

 木々の合間に隠れて、その姿はほとんど隠れている。これでは見えようはずもない。

 なかなか気づかなかったのも、納得がいくもの。


 その隙間から覗く姿から外形を見定めたユリエルには、思い当たるものがあった。


「あれ、戦乱期の砦ですかね。騎士を中に入れられるだけの大きなものじゃないでしょうか」

『その通り。古い砦です。あいにく何時からあるのか定かではありません。……本当に、見たんですか?』


 光った、とロックは言った。そこにあるのは廃れた砦しかないのに、だ。


「なにか、あの辺りで光ったように見えたんだが」

『……では、行ってみますか。道は、まだありますから』


 そういうと、騎士は足を砦の方に向けた。

 その声は、どこか冷たかった。まるで、嫌なものにでも触れたかのようで──



「いやはやなんとも……」


 一目みて、ロックは声を漏らしていた。

 それはユリエルとて同じこと。


 そばに来れば、砦の姿はいっそうはっきりと見える。

 

 険しい斜面に寄り添うようにして作られた石造りの砦は、巨大の一言に尽きる。

 だが、こうして近づかなければ砦などと思えないほど、その身を緑に覆われていた。

 辺りを蔦や苔が這い、足元の石畳は緑に蝕まれている。

 威厳あったであろう姿は、(むな)しくも森に埋まっていた。


 風雨というものも、あるのだろう。

 だが騎士とともにあるはずの頑強な砦とて、この有り様。

 時の流れとは、自然の脅威とは、こと残酷か。


『こんなものでも、中は広いんだぞ。なにせ山肌を削っているんだからな』

「へぇ……! 話には聞いていたのですが、本物は初めて見ました!」


 興奮するように周囲を見渡すユリエルに、騎士のなかでアルムは笑う。

 はしゃぐ彼女の姿もよそに、ロックは砦に近づいていった。




 ロックが覗き込んだのは、脇の一角。

 瓦礫の積み上がるその場所は駐騎場だったのか、とても大きな空間があった。

 だが、天井も崩れて空が見え、たくましくも石畳の隙間に根を張る草花が風に揺れるばかり。

 木漏れ日が差し込むなか、小分けの─騎士にとっては─居所が左右から挟むように、連なっている。

 そして、その奥にあるのは騎士用と思わしき巨大な椅子のようなもの。

 石を積まれて作られたそれは、まるで玉座だ。


 差し込む光と相まって、まるでこの空間すべてが祭壇であるかのよう。

 その荘厳な気配、この砦が健在であれば、それはどれほどのものであったのだろうか。


 ユリエルを呼びつけてみれば、呆然としていたのも一瞬。周囲に眼を凝らして歩き回っている。

 その眼の色の変わり様は、相も変わらずのもので、微笑(ほほえ)ましい。


『……彼女、ほんとうに騎士がお好きなんですね』


 けれどもやはり、他人にしてみれば奇異なものに写るらしい。

 彼女の姿を眺めて、意外そうに騎士は─アルムは言ったのだ。


「別に女性が騎士を好んでも、おかしくなかろうて。でなきゃわざわざ騎士の見学なんてするかい?」

『それも依頼の一環……』


 はたと、昨日のことを思い出してか押し黙る。


『……いや、明らかにそれは”ついで”でしたかね』

「”ついで”でもやってくれるから、俺としてはありがたいがね」


 彼女の騎士を見る眼は確かなもの。ロックは何度も助けられている。

 感謝はしても、しきれないものだ。


『だから、ね。ずいぶんと仲睦まじいことで』

「茶化さないでくれ」


 喉の奥で、堪えきれないようにアルムは笑う。

 ロックが苦い顔をするのもまた合わさってのことだろう。

 彼がぼやけば、また笑うのだから。 


「──そこらに燃えかすのようなものがあるんだが、ここで火事でもあったのかい」


 ゆえに、その疑問を口に出したときは少しだけ申し訳なかったのが、ロックの胸中であった。

 先程までの笑いはすっと収まり、彼は暫し沈黙したのだから。

 それでも聞かねばならないのが、探偵の(さが)である。


 この駐騎場跡を見ていると、草葉の陰やら瓦礫の間に、小石のように炭があるのだ。

 それは周囲の草葉でもまた同じ。そこら中に大小様々な炭が転がっていた。

 入り込んだ誰かが焚き火ををした、というだけではないのだろう。あまりに大きな炭も転がっている

 それこそ、建物の(はり)のような大きなものだ。


 問いに暫しの沈黙をもってから、アルムは淡々と答えた。


『ええ。昔はここもよく使ったりはしたのですが、全部焼けてしまいましてね』

「あぁ、町の誰かが言ってたな。二年ほど前、山で火事があったとか」

『ええ。それは見事に焼けましたとも。パーティだからか、浮かれていたのでしょうね』


 かつてこの守りの要とされていたこの砦は、飾られて森に隠された別宅として使われていた。

 だが、全てが燃えた。アルムの父も、巻き込んで。そしてこの砦そのものしか残らなかった。

 だから、このあたりは木々もなく、草が生い茂るだけ。

 それでも残る構造が、砦の頑強さを改めて教えてくれる。


『正直、あまり来たくないのですよね。足が、すくみます』


 だから、顔を出さないのだろうか。この”散歩”で、どこかに止まる度にアルムは顔を見せていた。

 だがこの砦では、一度もその顔を見せていないのだ。まるで閉じ籠るかのように騎士から動かない。


「この砦は調べたのかい」

『まあ、頑張りました。結果はそこそこ、何もなし』

「そこそこ、か」

『ぼくが情けないのもありますが……あとはまあご覧の通り。そう簡単にあちこち行けないんですよね……』

「だろうな」


 漏れるため息は、重いもの。

 崩れかかった石積の城壁を見ながら、ロックも惜しむように頷いた。


『こんな有り様じゃあ、いつ崩れるかわかったものじゃありません。近づいてほしくないんですけどねぇ』

「子供でも来るのか?」

『意外とね。町からちょいと行けばある廃屋なんて、色々都合が良いでしょう。禁止すれば、なおさらです』


 隠れ家に、遊び場。子供たちの足の軽いこと、忘れてしまうことも多いがそれは脅威の一言だ。

 そして、勇気も─とはいえ蛮勇の方がほとんどだろうが。

 どのようなところだろうと、子供らは誰かしら興味を示す。何か、どうにかと探そうとするものだ。

 この”廃屋”も、その例には漏れなかったらしい。


「廃屋というには豪華過ぎると思うがね。いっそ取り壊すとかはできないのかい?」

『山肌を削ってるのは、さっき言った通り。下手にいじるとどこまで影響が出るか、わかったものじゃない』

「あら。それならいっそ別に壊さなくてもいいのではなくて?」


 ひょっこりと戻ってきたユリエルが、口を挟む。


「おや、もういいのかい」

「あの駐騎場は堪能させてもらいました。こんな素晴らしい場所、ちゃんと補修して残すべきです!」

『そうも言ってくれるのはいいがね……』


 薄い胸を張って、彼女は言う。

 痛んではいるものの貴重な史料として価値は十分。もったいないにもほどがある。

 それに、と語る彼女の目はいまだに輝きを失わない。


「それに奥もまだ見てませんし」

「結局それかい」

「いいじゃないですか、こんなに面白そうな場所! それにもう一度調べませんとわかりませんし!」

「今は時間がないからダメだ。それにもっと準備を整えないと危険でしかない」

「ならさっさと終わらせましょう!」


 さあ、とユリエルは意気込んで、さっさと騎士の手元に乗り移る。

ほらはやく、と騎士を叩いてロックに手を伸ばす彼女の、期待にはち切れんばかりの笑顔ときたら。

 ため息混じりに肩を落としたロックへと、アルムが声をかけた。


『仲が良いのは()いことです』

「そうじゃなければ一緒にいないさ」


 まあ、とロックは一考する。


「できれば、もう少し落ち着いて欲しいんだがねぇ……」

『そこいらは、お二方で話し合ってくださいな』


 からかうような声に、ロックは顎をかいた。


『調査は必要なのは確かです。準備に必要なものがあったら言ってください』


 そう言う彼の声は、なんとも軽やかなもの。


『しかし子供の姿は見当たりませんでしたが、気のせいでしたかな?』

「さあて、どうだかな……」


 ロックは首をかしげて、騎士の手に乗った。


 遠ざかる砦の姿を見ながら、思う。


 ─この砦に来たのは、当然大人もいるだろう。危険があれど、ひどい嵐を避けるのには十分だ。


 ロックとて、懸念はある。

 炭を踏んだ靴の跡は、見えるだけでもいくつかあった。子供から大人まで大きさは様々。

 焚き火をしたらしい跡もそこにはある。


 昨日今日できたかのような真新しい煤には、誰のものでもない大きな靴跡が確かにあった。


 


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