夏と抜け殻。
夏の抜け殻が始まる頃、ぼくの友だちは死んで天国へ行った。
たぶん、天国へ行ったんだと思う。
でも、違うかもしれない。天国じゃないかもしれない。ただ単に死んでいなくなっただけかもしれない。残された人間には不都合だから、天国なんかに彼を送り込むんだ。彼が聞いたら、怒ってバスケットボールをぶつけると思う。いつもぼくにぶつけていたみたいにぶつけると思う。
ぼくと彼は、バスケットボールでよく遊んだ。場所は、小学校の体育館。忍び込むのは楽だった。通気口の蓋が、アニメやマンガやゲームや小説みたいに簡単に外せたんだ。
彼は、ぼくの指が気に入らなかった。だから、ぼくの指へ目掛けてボールを強く投げる。とっさにぼくは、「いないいないばあ」ってやる。そうしたら、ほら、もう彼はいない。ぼくは、安心して、大きく息を吸い込んでから吐く。そうすると、ほら、さっき食べたサラダも一緒に吐ける。ぼくのお母さんは、サラダのことをサラダボールって言う。きっと、バスケットボールで遊んでることを知ってるんだ。だから、ぼくは、とても怒りたくなる。
だから、ぼくはバスケットボールを投げつけて、ここからただ単にいなくなったんだ。