迷惑な来訪者
朝日が昇るころ、ユウはウサギのロンに、起こされていた。
「ユウ!起きてよ!」
「ロン!無事なのね。良かった。心配していたのよ。家族や仲間は無事なの?」
「仲間の一人が、矢に打たれて連れていかれたよ!」
「えっ!そんな事!他の人は大丈夫なの!」
「それが、分からないんだ。村の連中は、追い出したけれど、武器を持った兵士もいる、あいつらは、俺らを殺す事なんて、なんとも思ってはいないのだから!」
「やめさせなくては!人間のいる場所を教えて!私が止めさせるわ!」
「ユウ!駄目だよ!武器を持っているのだから、ユウも危険だよ。」
「こうしているときも、仲間が殺されそうなのよ!ここでのんびりしている場合ではないのよ!ロン!勇気を出して私を案内して。」
私は、ロンの後についていった。森の出口に向かう・・・・・
私は、向かう途中で樫の木に話しかけた。
「武器を持った人間はどこにいるの?教えてください、仲間の命が危険なの。」
「ここより、西へ行けば、奴らがキャンプしている。ユウ!気をつけるのだ。」
「ありがとう!樫の木さん。」
私は、樫の木に、教えられた方向に向かう。
話声が聞こえる、この声は人が話している声。
私は、そっと近づいて様子を見る事にした。
「殿下。これくらいで、王都に帰りましょう。魔物などいませんよ。気味が悪いくらい静かすぎて、大きな動物もいない。これでは、狩りもできません!」
「ジョンソン!この森は広大だよ。まだまだ未開の森なのだ。ここは入り口から、一日入ったところだ。奥には、本当に魔物が住み着いてるかもしれない。魔物を退治すれば、森も開墾して、領土だって広がれば、それは民に貢献できるとは思わないのか?」
「殿下は、侍女のアメリアの話を本気になさっているのですか?」
「アメリアの話に興味をもったが、信じてはいないよ。今時、魔物が?でも、それを信じている者がいる、現に村人はだれも森の中には、入らないだろ?」
私は、彼らの話していた中で、知った人物の名前があった事に、驚いていた。
まさか?アメリア様の事なのだろうかと・・・・・
「では、殿下は、村人に証明するために、行かれるのですか!」
「そうだ!僕が森の中を探索して、無事に帰れば、村人も安心して、そんな噂はなくなるよ」
「殿下、ウサギの肉入りシチューができました。召し上がりください。」
「僕はいいから、ほかの者に食べさせてやれ。」
「しかし、この森に来てからは、真面な物を召し上がってはおられないでしょう?兵隊用の携帯食ばかりでは、少し召し上がってください。」
「では、少しいただくとするか。」
私は、仲間は、殺されてしまったのだと思った。
でも、食べられてしまうのは、もっと嫌だった。
私は、女神様の約束を破ってしまい、その場から立ち上がり、その男が食べようとしているところへ出て行って叫んでいた。
「お願い!その子を食べたりしないで!」
「貴方が、食べようとしてるのは、私たちの仲間なの、殺されてしまったのは、とても、辛く悲しいわ、だからその子を食べないで!返して!」
僕は、彼女が余りにも美しすぎて、女神が来たのかと思った。
亜麻色の髪を腰まで伸ばして、華奢な体は、しなやかで、宮殿には、綺麗な女性はいるが、何と表現したらいいのか、美しすぎてミステリアスな娘だった。
「貴方は、どうしてこの森に?」
余りの衝撃に自分から飛び出してしまい、女神様との約束さえ忘れていた。
助けることもできず、このまま私が捕まえられたら、いけない!これ以上にみんなの迷惑になることだけは、避けなければならないと思いこの場を逃げ出そうとした。
逃げ去る前にこれだけは言わなければならない。
「この森は神聖な場所です。昔からの言い伝えには、それなりの理由があるのです。この森をそっとしておいて下さい。私の願いを聞いて下されば、貴方が犯した罪は消えないでしょうが、無事に森から出られるようにしましょう。」
私はそれだけ話すと、来た道を逃げた。
「待って!お嬢さん待ってください!貴方の名前を教えて!」
「僕は、ユウリオンだ!」
遠くから聞こえてきた。ユウリオンだけが、ユウの耳に残った。
「シチューを食べる事は許さない!このシチューの肉と、さばいたものを一緒に埋めてやれ」
「殿下!あの女性は誰ですか?美しい人でした。私は女神かと思いました。」
「僕も、女神が現れたのかと思った・・・もういい!帰るぞ!」
「えっつ!殿下、お帰りになるのですか?」
「何を、驚いている。」
「もう、宜しいのですか?」
「何が、言いたいのだ」
「女神をこのまま置いて行っても宜しいのですか?」
「僕には、責任がある。お前たちを無事に城に返す責任がな。それだけだ」
「あり難きお言葉をありがとうございます!森の探索は終わりだ。戻るぞ!」
ユウリオンは、森には一人で、もう一度彼女に逢いに、来るつもりでいる。
私は、ツリーハウスに戻って来た。
そこには、女神様が私を待っていらした。
「ユウ!あの人に合ったのですね。」
「女神様、ごめんなさい。私は、どうしても仲間を助けてあげたかったのです。私は、女神様との約束を破ってしまいました。もうここには、いられないのでしょうか?」
「ユウ!そのような事を心配していたのですか?」
「はい」
「ユウは、仲間の事を思ってしたことです。私は、ユウを咎めはしません。しかし、あの人は、ユウの事を忘れないでしょう!きっとユウを迎えに来るはずです。」
「女神様!私は、自分の名前は教えてはいません。」
「そうですね、ユウも、ここから離れなければいけない時期になったのかも知れません。」
「私は、此処にいます。私は、家族と仲間たちと離れたくはありません!女神様!お願いです。私を森から出さないでください。」
「今、直ぐではないでしょう。ユウ、よく聞くのです。人は、人と関りを持って生きていかなければなりません。苦しい事、辛い事、楽しい事、悲しみ、喜び、自分で体験して、人は成長していくのです。ユウ!此処にいれば、穏やかにいられるでしょう。でも、人としては成長しないのです。生き物たちには、試練を乗り越えてこそ、未来につながるのですよ。」
「ユウ!あの人が、迎えに来た時私は、ユウを送り出します。それは、ユウにとっては必要なことなのです。」
「女神様、迎えに来ない時は、私は、ここにいてもいいですか?」
「他の者は、いて欲しそうですね。いいでしょう。」
「ありがとうございます。女神様!これからは、約束したことは絶対に守ります。」
「犠牲者は少なからず、出ました。皆で、弔いましょう!」
私は、ロンの仲間や他の生き物たちの冥福を祈った。
そして、ユウリオンと名乗った人が自分を探しに来ないように、祈っていた。
自分は女神様の言われた、成長よりも今はここを離れたくはなかった。
自分にとって2年間暮らした、ブラウザの森は、やさしさに包まれた穏やかな日々だった。孤独から解放された場所なのだ。




