秘密結社カラスの調査結果が判明!
宮殿にいるユウリオンの所に、カラスからユウに関する調査報告がようやく入った。
「殿下、遅くなりました。」
「調査の内容を聴こう。」
「はい。詳しいことは文章に書かれていますが、私の方からもご説明させていただきます。」
「頼む」
「ユウリアス、17歳8か月前、王都より南のカシスにて生まれておりました。
父親はユウラス・グランシャル。母親は元子爵の娘でアリス・ハワードです。」
ユウリオンは報告を聞いて驚愕する。ユウは・・・公爵の孫なのか・・・
「母親には、姉が一人います。名前は、エリス・ハワード現在の嫁ぎ先の名前はエリス・ウランドール男爵夫人となられております。
詳細は、書面にて、そして12歳の時にユウリアス一家は、カシスの家を引き払っております。友人たちには、祖父の元へ帰るのだと言って帰られたようです。
事故現場はウランドール領とグランシャル公の領地を挟む渓谷です。
見た者の話では、片方の車輪が外れていたと証言があります。
この見解におきましては、書面にて。
現場近くに、子供が一人いたそうですが、本人に聞いても何も答えなかったようです。
その後は、男爵夫人が引き取り保護していたようです。
男爵家で働いている男性に話を聞く事ができました。
引き取られた娘の名前は、ユウリアスだと、その娘は、2年前に川で洗たくをしているときに川に流されて行方不明になったそうです。遺体は見つかってはおりません。
行方不明になってからの事は、調査が出来ませんでした。」
「ご苦労!その2年は僕が知っている。」
ユウリアスがウランドール男爵に引き取られていた3年間の酷い仕打ちの数々を読むごとに胸が痛みだしいたたまれなくなる。
ユウリオンは、詳細に書かれている文面を読み返していた。
侍女アメリア・・・ユウリアスの事を知っていたのか・・・・アメリアは僕に黙っていた。
そのころ、ジョンソン騎士団長の所にも、部下より報告を受けていた。
「ロン!ご苦労だった。何かわかったか!」
「ハイ!ブラウザの森近辺の村を、虱潰しに聞きました。そうしたらなんとウランドール男爵の屋敷で下働きをしていたんです。美しい娘なのにいつも黄ばんだシャツやシミだらけのエプロンをして農作業まで手伝わされていたようです。それからユウリアスは川におぼれて死んだことになっているのですよ。可笑しいでしょ。その後の2年間の事は誰も知らないらしいのです。」
「その2年の事は、解っている。では・・城で広まった噂は嘘なのだな。」
「村人に聞いても、誰も信じてはいませんよ。いつも真面目に、嫌な顔一つ見せずに働いていたそうですから、」
「男爵の屋敷にいる男に聞いたのですが、婦人と娘と息子たちの虐めや悪戯さえも我慢してたようです。時々、ご飯さえ食べさして貰わなかったそうですよ。」
「・・・・・」
「俺、それ聞いたときは殴り込もうかと思いましたよ。!」
「・・・・ロン!ありがとう。疲れただろう兵舎で休むがいい。」
「では、失礼します。」
両親を失いその上そんな苦労をしていたことを思うとジョンソンの胸が痛みだした。
ジョンソンは、殿下の元へと向かう。
ジョンソンが殿下の執務室へ行き、執事に殿下に謁見を願い出るとユウリオン殿下がお待ちになられていると言われて直ぐに執務室に通された。
ユウリオン殿下は、机の前の椅子に座り書面から目を離さずにいた。
「殿下、少しお耳に入れたいことがございます。」
「ジョンソン、僕もお前に見て貰いたい、この書面について相談したいと思っていたのだ。」
俺は、殿下から書面を受け取り、書かれている内容を読むと驚きの事実が書かれていた。
「殿下!誠で御座いますか!」
「特殊秘密機関が調べた事だ。間違いではないだろう。」
「ユウは・・・ユウリアス様はユウラス・グランシャル様の娘で、公爵さまの孫ですか!」
「ウランドール男爵の家の者たちは、この事実を知っていたのか?知らないで、保護していたのか?」
「ウランドールの領地内の渓谷で事故は起こった。グランシャルの屋敷に戻る前に姉の所に寄ったのかもしれない。」
「侍女のアメリアとは面識があったという事になりますが?まさかアメリアが噂を流していたのでしょうか!」
僕のせいだ、ユウに手紙を託した相手が、アメリアなのだから、手紙も渡してはいないだろう。
ユウリオンは、アメリアが池に木彫りの女鹿を投げる所を目にしたのだ。
今はその女鹿は、自分の上着のポケットにある。
「僕は、非道な話だがそう思っている!何故そこまでする理由が分からないのだ。」
「・・・・」
「血の繋がった従妹ではないか!夫人にしても何故?妹の子供を隠し通す魂胆が不明だ。」
「殿下!ユウラス様の馬車が、渓谷に落ちた原因を調べ直しては如何でしょうか?」
「僕も、何か見落としてる様な気がしてならない。ジョンソン調べて貰えないか。」
「分かりました!俺が、必ず、手がかりを見つけてきます。」
「5年前以上の事だが、目撃者がいるかもしれない。詳しく調べてきて欲しい。」
「はい・・・それで公爵様には、ユウリアス様の事をお話になるのですか?」
「・・・分かった以上は、話をしなければならない。公爵は喜ぶだろうがユウリアスは記憶がないので戸惑うだろう。」
「・・・・そうですね・・しかしユウには家族が出来るのです。血の繋がりのある家族がもう孤独ではないのです。」
「そうだな!早速、公爵の屋敷に行く事にする。ジョンソン警護を頼む。」
ユウリオンはジョンソンを伴って、グランシャル公爵の屋敷に出向いた。
ユウリアスと初めて出会ったのが、根雪が溶け始めた春の事だった。
あれから木々も紅葉に染まり、初冬の気配を感じる季節となっている。
ユウリオンは、ユウリアスが公爵の孫であれば、自分の恋人として誰にも横槍などさせはしない。
僕たちは幸せに成れる。僕がきっと国中で一番ユウリアスを幸せにして見せる。
ユウリオンは馬を走らせながら、頭の中で考えていた。
グランシャル公爵の屋敷に到着すると、応接間に通されてユウリオンは公爵を待つことにした。
「ユウリオン殿下!此処へは、来ない約束ではなかったのですが、何用ですかな。」
「公爵!ユウリアスは今何処ですか?」
「殿下!・・・何と言われましたか?ユウリアスとは?あの娘の名前ですか?」
「そうだ!ユウは女神から貰った名前で、本当の名前はユウリアス!ユウラスの娘なのだ。」
「・・・・殿下は何処でお調べになったのですか!」
「公爵も薄々知っておろう。王と王となる継承者だけに仕える秘密結社カラスの事を、そこに調べさせたのだ。この書面を見て欲しい。」
ユウゲルは震える手を差し出して、書面を受け取ると椅子に座り込み読みだした。
「・・・・・・ユウリアス・・私の孫なのですね・・・」
「そうだ!ユウラスとアリスとの間に生まれた娘なのだ。公爵の孫だよ。公爵!ユウリアスが生きていてよかったな。帰って来たのだ・・公爵の元に。」
「・・・殿下・・ありがとうございます。」
ユウゲルの眼はうるんでいた。
「ユウリアスは、今はダンスの稽古をしております。」
「・・・ダンスを?」
「はい、私もユウリアスに息子の面影をみたのです。・・・亡き妻の亜麻色の髪、親近感を覚えました。神が寂しい年寄りに贈り物をくれたのだと思いました。孫でなくても一人前の教養と作法を教えて、誰かに嫁がせたいと思いまして勉強をさせております。」
「ユウリアスは、12歳までの記憶はなくとも礼儀、作法、などは一通りできるそうです。先生も驚かれております。ユウリアスが書いた手紙です。」
公爵は、ユウリアスが書いた手紙を僕に見せてくれた。
そこには、綺麗な文字が綴られていた。やはり、あの手紙は偽物だった。
「私も、息子たちの事故をもう一度調べようと思い、ある男に調査を依頼しております。やはり、ユウラスはウランドール男爵の屋敷を訪問していたようですな。」
「公爵!僕も同じ意見だ。アリスは姉に逢いに行ったと思っている。しかし、ユウリアスの事は姪だと名乗っていない、何故そうしなくてはならないのだ?その理由が分かれば真相も見えてくるはず。」
「・・・・殿下のお言葉通りだと思います。」
「それと、ハリソン伯爵は、ブラウザの森には行ってはおらぬ!誰がそんな噂を流したのか?噂を流したものが何か知っているのかもしれない。もしかしたハリソン伯爵を殺害した犯人かも知れない」
「ハリソンが森に行っておらぬと誰が言いましたか?」
「女神に直接僕が聞いた事だ。ハリソン伯爵は、理を重んじて、村の者にも厳しく森への介入を諫めていたらしい。」
「・・・そうでしたか。ハリソンには娘がいました。聡明で美しい娘でした。私は、殿下の父上にと…王妃に迎えてはと望んでおりました。殿下には申し訳ありません。」
「・・・初耳です。」
「この話は、前王と私だけでの話ですから、しかし、ハリソンが行方不明となりその娘も不慮の事故で亡くなりました。」
「では、その後に僕の母との結婚が決まったのですか?」
「半年後に決まりました。」
「・・・・・」
ユウリオンは、何故だかわからないがとてつもない渦に巻き込まれた感じがした。
公爵が、ユウにお茶を持たせてお客様に出すように侍従長に言い伝える。
ユウリオンは、ユウの名前が出てきただけで、心が騒ぎだしていた。
僕としたことがこれでは、初心な少年ではないか。
暫くすると、ドアがノックされてユウリアスが入ってきた。
萌黄色のドレスに同じ色のレースが襟、袖、裾周りに付けてあり簡素だが、彼女の魅力を一掃に引き立てている。
目の前にいる彼女は、何処から見ても淑女なのだ。
1か月しかたっていないのに、生まれ変わっていた。
お茶を淹れたユウリアスはそれぞれの前にお茶の入ったカップを置いて真っすぐ僕に向って、淑女らしく頭を下げて、挨拶をした。
「ユウリオン殿下、よくおいで下さいました。私を助けて下さりありがとうございました。」
「・・・ユウリアス、別人かと思った。」
「公爵様が、私の為にとてもよくして頂いております。ユウリオン殿下がこちらに預けていただいたお陰だとお聞きしました。お礼を申し上げます。」
「ユウ!・・・ユウリアス!お礼は言わなくてもいいのだ。僕の方こそユウリアスに謝らなくてはならないのだ。済まない!」
「ユウリオン殿下!殿下はこの国の王となられる方です。私に謝ることなど何もないのです。私は殿下と女神様との約束が気になっていましたが、ベルが教えてくれました。女神様は何でもご存じだから心配するなと・・ですからユウリオン殿下も私の事は気になさらないでください。」
「ユウリアス!僕は、貴方の事が好きなのです!気にするのは当たり前の事です。いつも、何をしていても、ユウリアスのことで頭の中は一杯で、気にしないではいられない。僕はユウリアスを忘れることはできないのだ。」
「・・・・」
「ユウリアス!・・リアスと呼んでいいかい?君の名前は王家の血筋が持つ名前なのだ。僕がユウリオン、公爵はユウゲル、君の父上はユウラス、そしてユウリアス。君は本当に公爵の孫なんだよ。」
「・・・・・」
「リアス!・・驚くのも無理はない・・君の母上の名前はアリス。12歳の時ショックで記憶を失った。でも両親から教えられた、礼儀作法、教養は体が覚えているから忘れない。実際のリアスは公爵令嬢なのだよ。」
「・・・・私が・・・公爵様の・・孫・・」
「そうだ!・・私の孫なのだ!ユウリアス!良く帰って来てくれた。」
「その髪の色は、私の妻・・・お前にとっては祖母だな・・同じ髪の色だ。」
公爵はユウリアスの髪を壊れそうなものを扱うように触れていた。
ユウリアスは公爵の眼頭の涙を見て、本当に自分の家族がいたのだと思うと、嬉しさが込み上げてきた。
そして、ユウリアスはそっと公爵の胸に顔をうずめて泣き出した。
公爵とユウリアスは、共に抱き合いながら長い間離れていた時間を取り戻しているかのようにいつまでもお互いの温もりを確かめ会っている。
ユウリアスが席を離れると、3人は今後の事を話し出していた。
ハリソン伯爵の事件。グランシャル夫妻の馬車墜落の事故を徹底的に調べる事にする。
ユウリアスのお披露目は、クリスマスの日に城で開催される舞踏会で紹介する。
舞踏会の夜。ユウリオンとユウリアスの婚約を発表することにする。
ウランドール男爵夫妻を舞踏会に招待する。
それまでは、ユウリアスの身に魔の手が出さぬように秘密にしておかなければならない。
グランシャルの屋敷の者たちにも、固い箝口令が敷かれた。




