表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
めがみ様と精霊と私  作者: 木瓜乃ハナ
15/24

ユウリオン殿下!動き出した結末は?

ユウリオンは、執務室で書類を処理しながら思案していた。

どうしたら、ユウと連絡が取れるのか?僕が直接行くには目立つ場所で働いている。

侍従を使いに出すか?ユウに男が面会をすれば余計に噂が広まり詮索される。・・・・・・


ドアをノックして侍女のアメリアが、ワゴンを押しながら入室してきた。

「殿下、お茶をお入れしますので、少し休憩をなさってくださいませ。」

「アメリア、ありがとう」

僕は、執務机からソファに移動して、アメリアの入れたお茶を飲む・・・・

「アメリアの入れたお茶は、美味しいよ」

「おほめ頂き嬉しゅう御座います。」

「私は、どのような事でもお命じになられても殿下のお役に立ちたいのです」

僕は、アメリアの言葉で道が開けた様に感じた。

「アメリアは、労働者用の食堂は行ったことはあるかい?」

「いいえ、一度も行ったことはございません。」

「場所をメモするから、食堂で働いている者に手紙を届けて欲しいのだ。頼めるか?」

「はい、殿下のお頼みならどこへでも。」

「アメリア!感謝する。今から手紙を書くから、届けてくれ。」

殿下が他の侍女ではなく自分を頼りにされたことが、何よりも嬉しかった。

他の侍女より殿下の側に、近づいた気がして自分が誇らしい、これは自分に与えられたチャンスだと思った。

「アメリア!これが手紙だ。そして食堂の地図だ。厨房の洗い場にいるユウという者に手紙を渡して欲しい。2日後に返事が聴きたいので、また来ると伝えて、決して周りには僕からだと思われないように、アメリアの知り合いだと言って逢うといいだろう。頼んだよ!」

「はい!では行ってまいります。」

アメリアは、手紙をポケットに入れると、退室した。

僕は、たとえ文通という形でもユウと繋がっていたかった。

そのことが、ユウにとって悪い状況になる事まで、この時の僕は思ってもみなかった。



アメリアは殿下の書いた地図を見ながら、労働者用の食堂を目指して歩いていた。

殿下は、このユウという人とはどの様な関係なのだろうか?今は詮索をするのは止めよう

自分には関係ない。私は殿下の信頼を勝ち取るのよ!二人の伯爵令嬢には殿下を渡すものですか。

ユウリオン様の御心を私に向かせるのだから、男爵と言って人の事を見下して、美人でもないくせに馬鹿々々しいわ。


アメリアはようやく食堂に着くと、ユウという人物を訪ねようとしたが、休憩中なのかそれらしき人物は見当たらなかった。

厨房の中から話し声が聞こえてきたので、厨房にいた人にユウという方に合わせて貰えないかと尋ねた。

彼は、周りを見渡してから、ここには今はいないけれど、休憩時間が終われば戻って来るらしい。託なら渡すと言ってくれたが、私は、このまま戻っては殿下に役立たずだと思われたくはなかった。

私は、殿下との約束通りに、逢いたい旨を伝えると、彼は、私を裏口から外へ案内した。

「ユウ!面会だぞ!逢いたい人が来てるぞ!」

「ありがとう」

「・・・・・・・・」

アメリアは、向こうからかけてくる人物を見て驚愕していた。

ユウリアス!・・・どうして!・・此処にいるの!・・川で死んだはず!・・・


ユウは、午後の休憩にはいつも、裏にある小さな秘密の場所で過ごしていた。たまたま、ゴミを捨てに行った帰りに、風の精霊ベルが教えてくれた。ここに来れば、僕らに逢えると、誰にも邪魔されずに、精霊たちに逢う事が出来る所。

今日はシャインが来てくれ、森の仲間の話を聞いていたのだ。

突然、自分の名前で呼ぶ声を聴き、シャインと別れて戻ってきたら・・・・会いたくない人に逢う・・・それも向こうから私に逢いに来るなんてどうしてなの?・・・・・

確かに、アメリアお嬢様はお城で侍女としてお勤めされているのは知っていたが、自分とは接点はないものだと思っていた。ユウリアスも唖然としてその場に立ち尽くしていた。


アメリアはユウリアスの前に来ると、手上げてユウラスの顔を思い切りたたいた。

「疫病神!いつの間に殿下に取り入ったの!あんたなんか、死んでいればよかったのよ!」

アメリアは、吐き捨てるように言うとそのまま戻って行った。

ユウリアスは、打たれた頬より心が痛かった。

自分は、これ程までの仕打ちをされるほどアメリアお嬢様に嫌われているのかが分からなかったのだ。

女神様どうか教えてください!私はどうすれば良いのでしょうか?

私の持つ運命なの、これは試練なのですか?何度尋ねても女神様の答えはない。

それからの仕事は辛く重くなるばかりだった。

アメリア様の顔が浮かびユウの心は不安となり、仕事でも失敗をして、そんな私を見かねてアンさんが側に来て元気づけてくれた。

ユウは自分のせいで周りの人達に迷惑を掛けてしまう役立たずの自分が嫌になる。

折角、厨房の人達に受け入れて貰えたのに、この場所にいられなくなると、ユウリオン様には女神様との約束が守れないし、ジョンソン様にも迷惑が掛かる。

父上の紹介で働くようになったのに、顔を潰すような事だけはしてはならない。

ユウリアスは、もっと此処で頑張ろうと心の不安を押し込めて、前を向き更に一生懸命に働きだした。



アメリアは、食堂から戻り自室にいた。

今、出会った事が信じたくなかった。

自分が一番に逢いたくないのはユウリアスで、まだ幽霊として遭うのなら許せる。

2年前は、貧相で汚い格好でいて、自分が一番綺麗なのだと優越感でいられた。

今のユウリアスは、健康そうで美しくなっている。

何故、殿下と?どう考えても分からない。ドレスのポケットにある殿下の手紙を思い出す。

殿下がユウリアスに手紙を書く訳はなに?主に頼まれた物を見る事は出来ない。

侍女として、頼まれた役目さえできず、手紙まで読む行為は、罪になる。

しかし、ユウリアスの美しい顔を思い出すと、腹の底から沸々と魔の声が沸き上がる。

あの子が屋敷に来てから私は、自分に劣等感を覚えていた。

何も持たない娘なのに、美しいいのは事実だがそれだけで、どこの馬の骨ともわからない娘を、母は連れてきたのだ。

それ以来、私は絶えずあの子と比較されているような気持ちになり虐めていた。

嫌だ!あの子にだけは、負けたくない。私の望む者には、絶対に合わせては遣らない。

そっと手紙の封を開ける。殿下の字で書かれた文字を読む。



ユウ!元気にしていたか?ユウに今まで連絡をしなかった事を詫びる。

僕は、ユウと関り遭うことを恐れていた。

ユウと、離れて初めて気付いた。

僕は、ユウを忘れられない。

初めて会った時からユウは僕の中で大事な人になっていた。

これからは、僕に困った事などを聞かせて欲しい。

逢うことは暫く出来ないだろうが、待っていてくれないか。

僕の事情を解決したら、ユウを迎えにいくつもりだ。

それまでは、お互いの気持ちを知るためにも、手紙を書こうと思う。

この手紙を、渡した侍女は、アメリア。

僕に忠実に使えてくれる人だから、安心していい。

二日後に、またアメリアがユウのもとに行く。

その時には、ユウの気持ちも聞かせてはくれないか。

ユウ!辛いだろうが、暫くは辛抱してくれるか。体を大事にしてくれ。

   愛しいユウへ   夢でもいいから逢いたい。ユウリオンより。



アメリアは読むと、すぐさま、手紙を破り、暖炉の側に行き、燃やそうと思った。

しかし今の季節は暖炉には火はなく、仕方がないので、灰の中に埋めた。

アメリアの心の中は、ユウリアスに対しての嫉妬の炎で、胸苦しくなる。

アメリアは、ユウリアスを貶めるための手段を考えていた。


それから二日後、アメリアは殿下に呼ばれて、ユウリアスへの手紙を渡された。

アメリアは、食堂への道を逸れて別の建物の中に入って行く。

暫くしてから、殿下の執務室に戻って、ユウからの手紙を殿下にさしだした。

「アメリア!ありがとう、君には面倒な事を頼んで申し訳ない。」

「いいえ、勿体ないです。では失礼します。」

僕は、ユウからの手紙の返事を早く読んでみたい。僕は心躍らせながら手紙を開き中の文字を読みだした。

字を習ってはいないのか?乱雑な文章で字も綴りを間違えて書いてある。

ユウリオンはそのことは、仕方がないと思っていた。

ユウが返事を書いてくれた気持ちが嬉しかったのだが文字を読むうちに、ユウリオンの顔が喜びからかなしみへと変わり、手にある手紙を握りしめていた。

僕は、ユウの美しい姿だけを見ていたのか?・・・・・・・・・



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ