ユウリオン殿下のイライラの訳は?
ユウリオンは、自分が落ち着かないのだ。イライラしたり、そわそわしたり、何故かじっとしていられない、政務が少しも捗らない。
最近は剣の修練を遣らないせいかもしれないと思い立ち、騎士団の練習場に向かっていた。
騎士たちが談話をしているのが聞こえてきた。
ジョンソンはいないのだろうかと思いながら、ドアを開けようとしたら意外な話を聞いてしまい、そのまま騎士たちの話を聞いていた。
「最近、厨房に凄い美人が、来たのを知っているか!」
「俺、ちらと見たよ!洗い場にいるみたいだから、遠くてハッキリとは見えないけど、遠くからでも美人だとわかるよ!」
「食堂の知り合いがいて、その子の名前を教えてもらったよ。ユウなんだって!可愛いいユウ!彼女になってくれないか。そうしたら、毎晩でも愛してあげるのに。」
「美人の彼女が、お前にか!夢見てるのか。」
「しかしだよ、美人なのに何故下働きなんかしてるのかな?嫁の貰い手ならいくらでもいるだろう。」
「彼女は17歳だ。」
「お前、いつの間に年まで情報入れたのだ」
「性格が悪いのか、美人はお高くなるらしいからな。」
「いや!情報によると、性格は、すこぶるいいそうだ。人が嫌がる仕事も真面目にやっているらしい、素直、優しく美人でその上働き者。独身男が見逃すわけがない。唯、一つ難を上げればユウには身内がいない。素性が分からない。」
「俺は、三男だから、両親も期待をしていないから、ユウを嫁に迎えるに支障はない。彼女に結婚を申し込む、誰かの者になる前にだ。」
「俺も、彼女の素性も気になどしないし関係ない。ユウに結婚を申し込む、お前とはライバルだ!」
僕は、雷に打たれた様な衝撃を受けていた。
僕は、この数週間の間彼女の事を気にしていたけれど、ジョンソンに尋ねることもしなかった。
後ろからジョンソンが来ていることさえ気が付かないでいた。
「殿下!私に何か御用がおありですか?」
部屋の中の声がピタリと止まったのが分かる。
「ああ・・・体が少しなまって来たようなので、剣の相手をしてもらおうと尋ねた。」
「では、至急用意をしますので、暫くお待ちください。」
部屋のドアを開けて、ジョンソンは中に入る。
僕も部屋に入ると3人の騎士が敬礼して迎える。
ユウに結婚を申し込もうとしてる者の顔を見る。
流石、騎士になっている連中、三人とも体格はいい、それなりに男前なのだ。
ユウはどんな男が好きなのだろうか。
ユウは17歳、ユウに結婚を申し込んだ相手がユウの好みなら、ユウはその男を好きになり嫁に行くかも知れない。
今更気づくなんて、僕は迂闊だった。
ジョンソンと修練所に行き、ジョンソンを相手に剣を打ち出した。
暫く、お互いに打ち合うと、僕の剣がジョンソンの剣で打ち払われてた。
子供の頃より剣術では、僕はいつもやられてばかりいる。
ドリーム国で年に一度行われる、武道試合でジョンソンの右に出るものはいない。
ジョンソンは、騎士になるためにこの世に生を授かったのだと思っている。
そして友として僕の側にいてくれることが誇らしく思っている。
「殿下!剣に魂が入っていませんでした。何を考えておられました。」
そうなんだ、お互いに剣を向けて打ち合いをすると、必ずジョンソンは見抜いてしまう。
「ジョンソン、ユウは厨房に居るのか?」
「どうしてそれを!」
「先ほど、騎士たちの話が聞こえたのだ。美人の女性が厨房にいる・・名前はユウ。」
「それで殿下の心が乱れておいででしたか。」
そうだ!僕の頭の中は、ユウの事で一杯になり他の事を考える余地はないのだ。
この数週間の自分の気持ちが解った。僕は、ユウに逢う事すらできない自分の立場に、心を乱していた。
僕の我が儘だろうが、逢いたい気持ちを抑える事はもう出来ない。
僕が、最初に見つけて、森の女神から託された。僕だけの女神なのだ。
他の者に譲る事などできない!他の誰かにユウを取られてしまうのは、耐えられない!
僕の気持ちを、ジョンソンに打ち明けても、友は・・いや!臣下としては僕の気持ちは理解できないだろう。
ジョンソンは人一倍に国の事を思う忠誠心に厚い男。だからこそ、自分本位な僕の我が儘を友としても頼む事は出来ない。
「私も、数日前に騎士の話を聞き、確かめに厨房に赴き、ユウの所在を確かめました。父からも何も知らされてはいなかったのです。お許しください。」
「お前が、何を謝るのだ。元気にやっているなら安心した。執務に戻る。」
ジョンソンは、殿下を見送り、殿下の態度を思い出していた。
俺は、剣筋をみて相手が何を考えているのか、次はどう動くのかが分かる、殿下の心も手に取るように分かっていた。
ユウに対する気持ちが募っているのが分かった。ユウは、駄目です。殿下諦めて下さい。
俺は友としては、応援して力になって差し上げたい。
父と同様に臣下としては、ユウの事は忘れて欲しいのです。
殿下には、誰にも横やりが出来ない高貴な人と結ばれて、このドリーム国を統治していただきたいと思っている。
俺は、国を盤石にするためには必要不可欠なのだと考えている。
国の王となるのは、自分を犠牲にしなければならない。国にとって有益なら好きでもない女を王妃として迎えなければならない。
他国では、側室制度がある、我が国にも側室を持てれば、ユウに側室という立場で側に置くこともできるが、それは無理、我が国は一夫一婦制なのだ。
俺は、なんていうことを思っているのだ、ユウを側室!自分の余りの無責任な考えに、嫌気がさしてきた。
ユウだけは、好きな相手と結ばれて欲しい!・・ユウの過酷な運命を思うと願わずにはいられない。
俺は、殿下が戻られる時の言葉が気になる。あんなに心を乱されていたのに、変わり身が早すぎるのではないかと?殿下、何をしようとしてるのですか。
殿下が、ユウに近づけば、ユウに困難が降りかかるのですよ!全く目が離せん殿下には!