ユウリオン王子!再びブラウザの森へ
ユウリオンは、誰にも言わずに王家の者しか知らない、秘密の抜け道を通り城の外へ脱出した。
愛用の剣も持たずに、あまり目立たない服を着て、フードを被って、馬を手に入れるために、城下町を後にした。
馬やについて、丈夫そうな馬を買うと、その場を離れようとしたが・・・・・
「ユウリオン!俺を、欺いたつもりなのか!」
「ジョンソン!・・・済まない。どうしても女神に逢わなければならない!頼む親友のお前だけは、理解してほしいのだ。」
「俺は、友としてお前についていくつもりなんだがな!お前が、女神を城に連れ帰るのを阻止しなければ、この国は滅びるかもしれん。愛国心強い俺は、我慢できないから俺の意思でついていく。」
「ジョンソン!友として嬉しいよ。ありがとう、行こうか。」
僕たちはブラウザの森を目指して馬の腹をけり駆け出した。
城からの追っ手に捕まる前に、森に入らなければならないので、宿には泊まらず、馬を休めるために、小川の側で野宿することにした。
ジョンソンは、手回しのいいことに、野宿の用意をしてきてるのだ。
僕は、少しでも早くブラウザに行く事ばかりを考えていたのだ。
この季節は、昼は暖かいけれど、夜には寒さが身に応えるが、ジョンソンは手際よく火を起こして、毛布まで僕に渡してくれる。
「ユウリオン様、携帯食ですが食べて下さい。湯が沸いてきたのでお茶を入れますね。」
「ジョンソン、済まない!いつもお前には、世話になってばかりいるのだな。」
「ユウリオン様!一つお願いがあります。」
「なんだ?」
「ユウリオン様が、女神にお会いになる要件は分かりませんが、お会いして納得されたのなら、ブラウザの森の事はお忘れください。俺の望みはただ一つ、ユウリオン様が国王となられる事なんです。禁忌を侵すような事だけは、しないで頂きたいのです。」
「それを、見届けるためにもついてきたわけか・・・・心に留め置くとしよう!」
二人の夜は炎の灯りに薪のはぜる音と、フクロウの鳴き声だけが聞こえる。静かな夜だった。
ユウリオンは、薪の側で毛布に包まれながら、女神の事を考えていた。
僕は、大事な友にも心配かけてまで、それほどまでに女神に逢いに行くわけは、好奇心で立ち入った事への詫びと、食べるために犠牲になった者への謝罪。ハリソン伯爵の事を確認するため?どれも理由に違いはない。自分の気持ちは、あの時出会った人は女神なのか?違うのか?確かめたいのだ。
では、もしも女神でなかった時は、自分はどうしようと思っているのか。先は何も考えられなかった。僕の心の中は、ただ彼女に逢いたいと思う気持ちだけなのだ。
朝もやの中を、馬に乗りブラウザの森をめざした。
森に着いた僕は、ジョンソンに剣は荷物と一緒に置いていくように頼んだ。
ジョンソンは、何かあっても、僕の事を守れないと言いながらも渋々置いていく。
僕たちは、森の奥に歩き出した。
森の中は、前に来た時には感じていた、重苦しさはなかった。
鳥のさえずりも聞こえてくる。ちらほらとウサギや鹿、リスの小動物の姿も見える。
前来た時の同じ森なのかと思ってしまう。しかし私達の事は警戒をしている様子だ。
キャンプをしていた辺りまで来ると、木々が開かれて道を示しているように私達を誘う。
僕は、女神に拒否されてはいないのだと思い、先に進む。ジョンソンも怪訝そうな顔をして僕の後ろからついてくる。どれくらい歩いたのだろう、少し不安になるが、ここまで来たのだから、話だけでも聞かなければ戻る事は出来ない。
暫く歩くと、目の前の光景に息をのむ、そこは辺り一面に花が咲いている場所に出たのだ。
小川が流れて向こう岸には木々に囲まれた東屋らしき建物も見える。
ジョンソンと僕は、お互いに顔を見て了解を促して、東屋のある所まで行く事にした。