8,戦闘開始
戦闘シーンに入ります。
題名の通りです。
屋敷のなかに入ると、すぐにホールにでる。やはり妖精が作ったものと言うべきか、その技術は見事なものだった。
後ろまで透けた、宝石のようなものが色とりどりに散りばめられている、まるで氷のようなの柱。生きてるような躍動感のある、天井や壁の彫刻。どれひとつをとっても、価値の付けようのない一級品ばかりだ。
「侵入者だ!」
「妖精だ、魔法に注意しろ!」
三人が侵入した方から、敵の大声が聞こえる。それと一緒に、魔法の発動音も聞こえてきた。
ーーかなり、暴れているようだ。
アリーシアは、深く息を吐いた。
「火を司るものよ、火の柱で貫き燃えろ!」
瞬間、アリーシアの背後に魔方陣が展開される。
赤い魔方陣ーー火炎系の魔法だ。
魔方陣から火柱が、一気にアリーシアへと襲いかかる。
ホールは一気に火の海と化した中、二階から茶髪の人相が悪い男が1人、手に持っている杖をくるくると回しながら下りてくる。
「……ったく、手間どらせやがって」
男は唾を吐くように、言い捨てる。
「まぁ1人は始末できてし、こいつは妖精じゃなかったから、簡単だったな」
男は火の海の方へと手をかざし、火の海の真上に青の魔方陣を展開する。魔方陣から、嵐でも来たような水量が溢れだした。
魔方陣が消滅する頃、火を消した影響からか煙が一寸先も見えないほど立ち込めていた。
煙がだんだんと、薄くなっていくと……
「なっ……」
男はあり得ないもの見るような目で、煙のなかを凝視する。
「その目、ひどくない?」
煙の中からは、アリーシアが傷や火傷のひとつもつけることなく、そこに平然と立っていた。
「ちょっとばかりの仕返しだよ」
アリーシアがいい放つと、男の周りに幾つもの赤い魔方陣が展開される。
魔方陣からは無数の火の矢が、男に向かって放たれる。
「はあっ!? 中級魔法を詠唱破棄!」
男は火傷の負った腕を庇いながら、アリーシアを凄む。
「この程度、私なら杖なしの詠唱破棄で十分発動出来るよ」
「そんな芸当……俺は1人しか思い付かねぇ……お前、王都嫌いの“フェンリンの変人”だな」
「……よく分かったね」
フェンリンの変人ことアリーシアは、普通の人間には出来ない、中級魔法の詠唱破棄ができた。
中級魔法以上の詠唱破棄は、妖精にしか出来ないことである。さらり、人間は杖を媒介にして魔法を使うことができるのに、アリーシアは杖を使わずにして魔法を使ったのだ。かなり規格外な能力である。
「何でこんなところにいんだ。森から滅多にでないことで有名なのに……」
「私も嫌々だ。王命だから、仕方なく来ただけ」
男は、悔しそうに顔を歪める。しかし、うってかわって、男はいびつな笑みを浮かべた。
「ふんっ……どうせ敵わないんだ、だったら……」
男の周りに、ホールの端から端まで行くほどの赤い魔方陣が展開された。
「ちょっ……、この魔方陣、死ぬつもり!?」
アリーシアは、赤く大きな魔方陣に慌てふためく。
「道連れだ!」
屋敷を揺らがすほどの、魔法が放たれた。