19,王立図書館
「奇遇だな、アリーシア」
「なっ……何で貴方がいるの?」
目の前の男、レインにアリーシアは震える手で指を指した。
ーー今から数分前のこと
ラエルの言葉に従って、ミアとカーラインを伴って、王立図書館に向かった。
今日はいつもより暖かく、王都も活気に溢れている。そんな空気に感化されたのか、アリーシアは浮き足たっていた。そして感化されたアリーシアを、ミアが鋭い目で睨み、カーラインは同じように浮き足たっていた。
そんな三人の前に現れたのが、ラエル。顔を会わせると、どこか疲れた顔をしているのが分かった。
そしてラエルの後ろを見ればーーレインが。
瞬間にレインが疲れている原因が分かった三人に、レインは挨拶した。
ここで冒頭に戻る。
「王立図書館に行くと、ラエルに聞いたんだ」
「……聞いたというより、聞き出しただろ」
「…………何か言った?」
レインの黒い笑顔に、ラエルは怯んだ。
妖精三人の中でも、特に曲者と言えるラエルをもう手なづけているレインに、アリーシアは感心の眼差しを向ける。
「それより、さっさと行こう……」
レインの疲れきった一言に、アリーシア達は気の毒に……の言葉しか頭に浮かばなかった。
王立図書館は、エレトシア王国で一番の所蔵数を誇る図書館だ。所蔵されている物のなかには、ここにしかない専門書も数多くあり、王国中の研究者や為政者、魔術師などが集まる場所だ。
重厚な木の扉を両手で開けると、そこには思わずため息がでるほどの、本棚の数が広がっていた。
円形の建物である王立図書館は、一階にはカウンターや本棚に椅子、中にはテーブルもあったりといろいろな物が置いてあった。
壁にはぐるりと床を囲むように、上から下まで本で埋め尽くされている。そんな壁が、一階から五階まであり、四階からはある一定の人間ーー国家資格などのそこに入れるほどの資格や特権を持った人だけが入ることができる。そういった理由で、目立った階段で繋がっていない。
アリーシアは馴れた手つきで、カウンターに国家魔術師の紋章を見せ、四階へ行ける隠し階段を上っていく。
四階に着いたところで、アリーシアは皆に声をかけた。
「じゃあこれから過去に、今回の依頼と同じことが起こっていないかを調べるよ」
その一声に、妖精三人は各々本を探し読み出した。
「事件を調べるなら、一階とかでも出来るんじゃないか?」
「前にも依頼関係で、調べたことがあるけれど、今回の依頼のようなことは一回も出会わなかったの」
「それで、ここの表沙汰にしてない事件を調べ始めたということか」
「察しがよくて、よろしい」
アリーシアは本から顔を離さずに、レインに親指を立てる。
「確か今回の依頼は、社交界の事件だよな」
ぱたりと、静かにアリーシアは本を閉じて、レインの顔を窺う。
「レイン、貴方どこまで知っているの」