12,新たな依頼
「……えっ……」
アリーシアは目の前の男を見て、放心している。
「はい、これ。食べて」
男はアリーシアに、丸薬を差し出す。アリーシアは無意識に受け取って、丸薬を飲んだ。
「ミア、いつの間に来たの?」
「アリィが、黒の塔に向かってすぐです」
アリーシアは、男を一瞥する。目が合うと、男に微笑まれた。
「どこ行ってたの? レイン」
「丸薬買いに」
「あっ、ありがとう」
男ーーレインの回答に、アリーシアは呆気にとられた。
「逃げたのかと思ったよ。じゃあ、今すぐついて来て」
アリーシアは、また黒の塔へと向かった。今度は、レインを連れて。
「連れてきたよ、魔術師長」
帰れると思うと、アリーシアは元気よく扉を開けた。
「おっ、早かったな」
魔術師長は、意外そうに目を見開いた。
アリーシアは魔術師長に詰め寄り、口角を上げる。
「さぁ、これで森に帰っていいよね?」
「こんなのが来たぞ」
魔術師長は、アリーシアの前に2つの手紙を差し出す。ひとつは国家魔術師としての依頼、もうひとつはクラーシェ公爵家からだ。
「最近クラーシェ公爵に会ったが、公爵とても会いたがっていたぞ」
「……王都に来たとき、家に寄るのが約束なので。家に行ってきます」
アリーシアは肩を落としながら、魔術師長室を退出した。
「……魔術師長、呪ってやる」
不穏な言葉を残して。