9,どうにもならないこと
じゃらり、と金属音がする。男の手首、足首には、まるで血の色のような石が埋め込まれた枷がついてある。枷には鎖がついてあり、ちょうど部屋から出られないほどの長さに、ベットから繋がれている。
ーーチュドーーン、ドッカーン
屋敷の至るところから、爆発音などが響いてくる。
今なら逃げる好機なのだが、男は何もかも諦めた瞳で、枷を見つめる。
じゃらり、という音が、部屋にただ響くだけだった。
ホールに立ち込めていた煙が、だんだんと消えていく。屋敷のホールには、今までのことがすべて夢であったかのように、傷や煤のひとつもついてはいなかった。
爆発の中心だった場所にはーーアリーシアがひとり、凛とした姿で立っていた。
「別に殺すつもりはなかったのに……」
アリーシアはぽつりと溢した。初めて人を殺したのだ。手には、べっとりとした真っ赤な血が、付いているように感じた。
しかし、分かってはいたのだった。言ったとしても、こうなることは。
ぐるぐると思考が回る。殺すつもりはない、といっても殺してしまったのだ。いくらあの男が、自爆の魔方陣を展開したとしても、自分が殺したことには変わりがないと、頭に響いた。自分の偽善者のような考えに、嫌気がさす。
どうにもならないことに、肩を落とした。が、大きくかぶりを振って、2階へと続く階段に向かった。アリーシアの後ろには、大きく暗くて重い影がつきまとった。
2階は1階より、少し落ち着いた雰囲気の内装だ。
アリーシアは迷うことなく足を進め、扉の前へと立ち止まった。
「3人とも、いい仕事しているねぇ」
アリーシアは手で頬を押さえた。3人がちゃんと仕事しているおかげだ。
「ごめんください」
元気よく扉を開けた。なかには、この世界では珍しい黒目、黒髪の男が鎖に繋がられていた。




