学ぶ
倒れる前……私にとってはついさっきまで護る対象だったタクトが私よりもステータスが高くなっている。なんだか変な感じだ。
もやもやとする気持ちを抱える私は、小さい会議室のような部屋の一席に座り水晶で魔力を動かす練習をしながらアノンさんを待っていた。
それにしても魔力を動かすのがこんなに簡単に出来るようになるとは思ってなかったなぁ。
アノンさんの話によると、私が魔法を使えなかったのは始めたばかりの頃にダンジョンへ潜りまくったのがいけなかったらしい。あっという間にレベルが二十まで上がったから、魔力の扱いに慣れる前に成長できる期間を通り過ぎてしまっていた。だから私が魔法の練習をしようと思った時には魔力をどう動かしたらいいのかわからなくなっていて、魔法が使えなくなってしまったというわけだ。
色々と考えつつも、水晶を通して体内で魔力を回転させる。今までのことを後悔してても仕方がないしね。手に入れた称号やアイテムはそのまま残っているから、街周辺の弱いモンスターなら一人でも倒せると思う。
とにかく、この機会にがんばって強くなってイベントをクリアだ!
しばらくしてタクトとアノンさんが部屋に入ってきた。
私の向かい側にタクトが座り、ホワイトボードのような板の前にアノンさんが立つ。今日は座学。タクトは私が寝ている間に一度教わっているけれど、おさらいをするらしい。
「じゃあ、まず魔法について。ハルちゃんはどれくらい知ってる?」
前に一度、魔法の講習会で教わりはした。ずっと前だから詳しくは覚えていないけれど、確か、えっとーーーー。
「自分の魔力を操って魔素に働きかけると魔法になります」
私は講習会の記憶を引っ張り出した。
「火、水、空、地、光、闇、金、音、無の九属性があって、人によって使いやすい魔法が違うということを講習会で習いました」
アノンさんは小さく頷いてタクトの方を見る。
「そうね。じゃあ、魔素についてもう少し詳しく説明しましょうか。」
タクトは「はいっ」と良い返事で説明を始めた。
「魔素は世界に満ちているもので、この世界の全ての物は魔素でできています。生き物は魔素を吸収していて、体の中で魔素が濃くなって魔力に変わります。周りにある魔素はとめも薄いから魔素だけでは魔法は発動できない仕組みです」
自信有りげにタクトが答えると、アノンさんは満足そうに頷いた。
「ちゃんと覚えてたわね。魔力だけで魔法は使えるけれど、変化させる魔素がない分、魔力の消耗が激しくなってしまうの。……ここまで、理解できたかしら?」
「大丈夫です」
アノンさんは「一応ね」とボードに手をかざす。すると、今までの話が図になって表示され、次の話からはボードで説明された。
なによりも解りやすい。前に受けた講習会とは雲泥の差だ。
発動方法の種類や属性についてなども、内容はかなり細かくて知らないことがちょこちょこあった。
「さてと、説明はここまで。ここからは実践でハルちゃんに合った属性と発動方法を探しましょ」
そう言うと、アノンさんは各属性の魔石と色々なアイテムを取り出した。
ちょっと短くなってしまいました。
次回はハルちゃんの属性です。