門が開くとき
『地獄の果てまで追ってやる……』
夏休みの一週間前のある晩のこと、高校三年生のサスケは自分の発したこの言葉によって、はっと目覚めた。
背後に違和感と寒気と少しの痛みを感じる。
背中にはだらりと大汗をかいているため、Tシャツが気持ち悪く張り付いていた。
サスケは着替えて寝直そうと、着ていたものを脱いでトランクス一枚になった。
ん……?
急に背中に重みを感じたサスケはふと、鏡の方を振り返った。
え、?
次の瞬間、サスケは鏡の前に立ち尽くした。
鏡に写る彼の背中には、何かが刻み込まれていた。
よく見ると、そこにはかつて上野の美術館で見た『地獄の門』という彫刻の絵と、真ん中に大きくemperorという文字が刻み込まれていた。
何、これ。
emperorって。
背中に刻み込まれたそれらはまるで、サスケの体の一部であるかのごとく張り巡らされ、ただならぬ雰囲気の醸し出していた。
背中を掻きむしってみたが背中のそれは剥がれない。
サスケはただ立ち尽くし、事態を把握できずにいた。最もこの状況に置かれれば誰もがそうなるだろうが。
彼の額からはゆっくりと脂汗がこめかみを伝って流れている。さっきまでの寝苦しさはもう忘れていた。
そしてそれは、突然起こった。
急に背中が熱くなったかと思うと、サスケの背中の地獄の門の真ん中、黒光りしていた南京錠がチリチリと蠢き出し、emperorの文字が次第に赤く燃えるような色になった。
南京錠は激しく震えて、門が徐々に開こうとしている。
数秒後、錠はとうとう砕け散った。
そして重々しい地獄の門が開いたその刹那。
っア、、、
サスケの悲鳴が聞こえるか聞こえないかのうちに彼は何か底知れぬ強い力で後ろに引っ張られ、深い漆黒の闇へと堕ちていった。




